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03-07



呼び出した理由はそこにあるんだよ、そこに。
 

ニッコリと柳先輩が握り拳を作る。薄っすらと浮き出ている血管が怒りの度合いを示していた。

「遠慮するっす」やんわりお気持ちをお返しするんだけど、出入り口は塞がれているから逃げられない。
 
 
さあ、どうする俺。

人数的にも向こうの方が多い。見積もって10人くらい。対して俺は1人か。
 
ちっくしょう、相変わらず卑怯な親衛隊!
道徳指導と言いつつ、結局リンチまがいなことするんじゃないかよ!


袋叩きなんて絶対にごめっ、うわっち!
 

指を鳴らした柳先輩の合図で、背後にいた親衛隊のひとりが俺を羽交い絞めにしてきた。柳先輩に気を取られていた俺はあっという間に捕まってしまう。

「ぼ、暴力は駄目っすよ!」

暴力は何も生まない、ここは平和を尊重してお話し合いで解決しましょう! あたふた向こうに訴えてみるけど、指導するだけだぞっと微笑まれるだけ。

うわぁああ、なに、その鬼畜じみた微笑! あんた等M族でしょーよ!
 
もしかして男にSっすか?! それもタチが悪いっすよ!
 

力で地面に捻じ伏せられる。

  
「アイデッ!」


呻くうつ伏せ状態の俺に、コノヤロウ、羨ましいことされてるんじゃないぞと数人からバシバシと叩かれた。足蹴りも少々。
 
アイテッ、アイテッ!
痛いっすからっ…、そんな卑怯な手で暴力行為とか最低っすよ! 陰湿陰険暴力禁止っ、無防備な相手にそんなことしてもいいと思ってるんっすか!

タンマを掛ける俺に、「これも君のためだと」柳先輩。自分のベルトをズボンから引き抜くと、まるで鞭のように振舞って地面にそれを叩きつける。


ゾッとした。

ま、まさかそれで俺を引っ叩くなんて非道なこと、しませんよね?
 
鞭で叩く、確かにそれは典型的なSMプレイではありますけど、いやでも、俺は男にされようが女にされようが彼女にされようが、鞭はごめんっすよ。

鈴理先輩が仮にしたいって言っても、受け入れられない自信があります!
 

「よし、指導と並行して我々が君を『M』に仕立ててやろう。君がMになれば此方も、同士が鈴理くんとお付き合いしているな、と幾分現実を受け入れられそうだしな」

「そ…、そうだ…。豊福空、お前、Mになれ!」
 
 
復活した高間先輩が起き上がって、鼻柱を擦りながら立派なMにしてやるとシニカルに笑う。

む、無茶苦茶なことを仰るんっすね!

俺、嫌っすよ! 痛いの超嫌いっすよっ、Nを貫き通したいイタイケボーイっすよ! 死んでもMになんてなりたくないっす! んでもって『Mにする』は口実で、日頃の恨みつらみ鬱憤嫉妬を晴らす気でしょ! 目が物語ってるっすよ!

 
「嫌ですからぁあ!」


勘弁してくれと俺は嘆き、喚き、大暴れした。

バチンとベルトが地面で唸り声を上げる。つい動きを止めて顔を強張らせる俺に、「Mの鉄則」まずはこれからする行為に対してありがとうございますと言うだぞ、柳先輩がご指導してくれる。

なるほどなるほど、じゃあ俺はMになれませんね。ゼンッゼン有り難いなんて思ってませんもん!

「罵声も痛みも快感だと思い、甘受するべし。そうすることで君はスバラシイMの一歩を踏み出す」

「じゃあ俺は全力で後ずさるっす! イヤっすよ、こんなご指導いりませんっ! アイテテテッ、ちょ、そこ、手を緩めて下さいよ。痛いっす」
 
俺を押さえ込む手に異議申し立てするけど、「痛みはありがとうございますだって」と指摘される。
 

だーかーら、俺はMじゃないっすから有り難いなんて思いませんよ! はーなーせーっす!
 

「あまり暴れるようだと、高所に連れて行くぞ。豊福空」

 
高間先輩が暴れる俺に脅しを掛けてきた。
 
うぐっと言葉を詰まらせる。俺の一番の弱点を…っ、卑怯も卑怯っすよ。

高所に連れて行かれるなんて真っ平ごめんだし、ああもう俺の選択肢は一つしかないじゃないっすか。

本気で高所に連れて行かれそうだったから、俺は大人しくした。


一人対大勢なんて高が知れてる。
 
 

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あきゅろす。
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