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03-04



だんだんと高飛車口調になる鈴理先輩に俺は引き攣り笑いを作った。


出たよ、あたし様っ、そんなこと急にできるわけないじゃないっすかっ。
此処は学内っすよ、中庭だとはいえ、人目があったりなかったりなんすっから。

意地の悪い期待を含む眼が飛んでくる。受信拒否したいけど、後々怖いから取り敢えず受信はする。受信は。
 
「それとも」あんたは玲の方がいいのかなぁ、わざとらしい溜息に俺は追い詰められた。
 

数日前、俺はプリンセスと呼ぶに相応しい先輩に告白された。

  
本気も本気の告白でお付き合いどころか、婚約しろとまで迫ってきたもんだから、その日、俺は地獄も地獄を見たわけなんだけど(主に鈴理先輩が生み出す地獄は恐怖も恐怖ですた)。

んでもって仕置きをされそうになったりうんぬんかんぬんだったわけだけど(実際仕置きされますた)。

 
御堂先輩が正門前で大告白大会をしてくれたおかげで、俺は財閥界、学校、二世界でめでたく噂の人になっちまった。


それが鈴理先輩の怒りを買ったんだけどさ…、この音読も仕置きの延長線上だったりするわけだけど。
 
でもでも俺の気持ち、どっちに傾いてるか知ってるくせに意地悪いっすよ先輩。
受け身男は伊達じゃないっすよっ、自分から動くって超勇気がいるんっすからね! ねっ! …ねっ!!
 

ニタリニタリしている性悪攻め女に唸って、俺は赤面しながらそっぽ向いた。
 
だけど体は勇気を振り絞ってみせる。
寝転がったまま座っている彼女の体に擦り寄った。いや、膝に乗り上げた。

柔らかな膝に頭を預け、そっと彼女を見上げる。
そして異議申し立て、「先輩は忘れていますっす」不貞腐れ気味に物申した。キョトン顔を作る彼女の右頬に触れる。
 

「先輩、俺に言ったじゃないっすか。俺のものになる、返品不可だって。言ったからには、あれ…、あれっす。先輩だって俺の所有物っす。だから俺の気持ち、疑わないで下さい。それに俺が男ポジションを譲るのは貴方だけっすよ。何度も言ってるっす」
 

あーあ、傷付いたなぁ。慰めて欲しいなぁ。悪いと思うならキスして欲しいなぁ。

超わざとらしく呟いてみた。不貞腐れてもみた。甘えた素振りも取ってみた。

残念な事に草食受け身で定着している俺には、よっぽの心の準備ができていない限り、いきなり飛びついてキスをするなんて大それたことはできない。これが俺なりの精一杯の甘えだ。

一変して頬を崩す先輩は「そうだな」今のはあたしが悪いよな、優しく髪を撫ぜてくる。「お詫びしてくれないんっすか?」俺の甘えに、「ふふっ」彼女は笑声を漏らした。


「やはりリアルの方がいいな。どのように妄想しても、現物には敵わない。小さな行動でさえ可愛らしく思える」

「んー、可愛いはあんま嬉しくないっす。思われるほどの男でもないですし」
 
「あたしがそう思うのだから仕方がない。甘受しろ。空を可愛いと思うのはあたしだけで十分だしな」


その愛しむような、女性特有の可愛らしい表情に心が脈打った。大抵俺が見る笑みって攻めモードだからな。
 
笑みに心の準備ができたのかもしれない。
俺は上体を浮かして、触れていた右頬に口付けした。

「なっ」驚くあたし様に、「これでいいっすか?」してやったりと口角をつり上げて微笑を向ける。

 
珍しく頬を紅潮させる鈴理先輩は、ちょっぴり悔しそうに、だけど物足りないと言わんばかりの表情で俺を見下ろす。
 
きっとこの後、大人なキスを仕掛けられるんだろうなぁっと思って身構えていた俺。
 
勿論鈴理先輩もそのつもりで行動を起こそうとした。俺の頭部に手が回ってきたんだから、起こすつもりだったんだろう。
 
 

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あきゅろす。
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