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なんていうのは嘘です



引き摺り下ろされたせいで、俺は床に尻餅。
鞄は中身をぶちまけて向こうに転がるし、借りた携帯も衝撃で落としてしまった。
 
呻き声を上げる間もなく、鈴理先輩に押し倒される。

ははっ、この展開、お馴染になってきたっ! マジ毎度のことながらどうしましょうな展開だよな!


……だけど、今日は俺がお誘いしたわけだから、気を引き締めていかないとっ。
 
言われる前に片手でネクタイを解き、ボタンを外し、「先輩」場所を変えてもいいっす、分かりきった台詞を啄ばむ。
 

「却下、スリリングを味わいたい」
 

シニカルに笑う某令嬢は、解いた俺のネクタイを掴んで、そのまま獲物の両手首を一まとめにするために使う。獲物は一切抵抗をしなかった。
 
その間にも獲物を捕らえた肉食獣は軽くキスを交わしてくる。
嗚呼、徐々に激しくなるキスはもう手馴れたもの。それこそ度胸がないから舌を入れることはできないものの、彼女の舌を受け入れることは俺の日常の中で“当たり前”として確立している。


「鍵は掛けていないからな。声を出せば、すぐに生徒が来るぞ。見られたくないなら、せいぜいしっかりと声を抑えろよ。あまり時間を掛けても、教師や警備員が巡回がするからな」
 

今更ノーとは言わせない、今日はあんたから誘ったんだから。 
 
耳元で囁かれた。分かってる、今日は俺が誘った。認めるっす。
 

「早く先輩」誰かが来る前に…、急かしてみると、それなりのお誘いがあるだろうと注意を促される。

「相変わらず意地悪っすね」そんなところも好きっすけど…、微苦笑を零して俺は相手の瞳を見つめた。


ねえ、先輩。

俺を抱い―…、……、エッホン、あー、仕切りなおして…。

先輩、俺を抱い…て…、だ…いっ…、だ…ダァアアアアアアアアア―――! 

 
 

「―――…こんなの言えるわけないっすぅうううう! もう勘弁して下さいっ、俺が悪かったんですぅううう!」
 
   
読みかけの小説を投げ放りたくなったけど、これは彼女の大切な代物。

どうにか踏み止まり、俺はノートを閉じて「ごめんなさいぃいい!」オイオイと地面に伏した。

耳まで真っ赤に染め上げる俺に「あ、こら!」今からが本番じゃないか、なんでやめるんだとバンバン背中を叩き、鈴理先輩は続きを急かしてくる。

だけど、いや、ホンット無理っす。勘弁して下さい。ごめんなさい。
 
 
もう駄目だと俺はギブアップした。

あ、すみません。ノッケから取り乱しました。

長ったらしい前置きはすべてフィクションです。
今の出来事は本人達とは一切関係ございませんので、ご理解のほどを宜しくお願いしますっす。 

 
じゃあ何をされていたか。
   
答え、学内の中庭の木陰で先輩の愛すべき攻め女本(別名:俺と彼女の二次創作小説)音読させられていました。
 
なんで音読させられているかっていうと、彼女が音読しろと脅してきたから…、としかいいようが。

音読しないと早退して、ラブホに無理やり連れて行くとか言ってきたんだ。


そりゃあ、音読を選ぶだろ。なあ?
 

だけどっ…、此処までシンドイとは思わなかった。

 

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あきゅろす。
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