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01-12



「僕を知らないお嬢さんもいることだ。改めまして、お初にお目に掛かります。僕の名前は御堂玲。鈴理や百合子、そして大雅の幼馴染み、と言ったところかな。以後、お見知り置きを。どうぞ玲と呼んで下さい」


ぺこっとお辞儀してくる御堂先輩の自己紹介は完全に川島先輩限定だろう。
 
俺なんてアウトオブ眼中、視線すら向けられない。

……いや、いいんだけど、それはそれでなんだかもの寂しい気もする。

それとも気付かれていない?


…っ、や、やっぱ挨拶ぐらいしておこうかなっ。
 

ちょっとくらいの辛辣は親衛隊で慣れてるしっ、なんだか存在自体スルーってのが一番堪えるかも!
 
挨拶をしようかどうしましょうか、と心が揺らいでいる余所で、「何故あんたが此処に?」鈴理先輩が首を傾げた。
 
その様子だと会場に向かっている途中だろう? 彼女はそう御堂先輩に指摘した。

曰く、御堂先輩は走行中、見覚えのある高級車を見つけ、こりゃ絶対鈴理先輩の車だと判断。
高級車がスーパーなんぞといった庶民の空間に突入したもんだから、こうして追跡し、今に至るというわけだ。

「君達も行くのだろう?」

どうせなら皆で行きたくてな、爽やかな笑みを浮かべる御堂先輩だけど、これは女子限定なのであしからず。野郎なんて一抹も視線にくれちゃない。
 
 
「それに、あれだ。噂を確かめたくてな。本当ならばじっくり話を聞きたい。会場ではゆっくりと話すことは不可だろうからな」


ちょいと意地の悪い顔を作る御堂先輩は、意味深に鈴理先輩を見据えた。
 
噂、と言いますとあれですか。あれですよね。あれだったりしちゃいますよね。その、鈴理先輩の「彼氏ができたそうだな?」嗚呼、やっぱり。
 
物凄い興味があるらしく、今日は連れて来ているのか? どのような男なんだ? だったら紹介しろ、矢継ぎ早に質問質問質問。

雨霰のように質問を飛ばしてくる。あの表情からして良い意味で紹介しろ、と言っているわけではないだろう。
 

鈴理先輩が何かを答える前に大雅先輩が口を開いた。「此処にはいねぇよ」と。
 

彼の目が訴えていた。こいつに此処で暴露したら、公の場でも鈴理先輩の彼氏を弄ってくる可能性がある。

せめてパーティーが終わるまでは彼氏の正体を伏せておけ、終わってから紹介しろ、じゃねえとメンドクサイことになりかねない。

そう許婚に視線で主張。


アイコンタクトを受け取った鈴理先輩も、「後日紹介してやる」と腰に手を当てた。

途端に御堂先輩は残念そうな顔を作る。
 
 
「なんだ、連れて来ていないのか? 鈴理が一般の男にベタ惚れというものだから、どういう男か僕が見極めてやろうと思ったというのに。
まあ、鈴理のことだから、きっと物凄い童顔で愛くるしい顔つき。女のような可憐さを放っていて、体躯はとても小さく、抱き心地が良い…、まさしく守ってやりたい癒し草食系男子だろうな。ぽにゃほわ系だろ?」
 
  
なるほど、初対面であろう俺に鈴理先輩の彼氏ではないか疑惑を掛けられないのは、彼女の理想男性像がそうなっているからか。

童顔…、女のような可憐さ…、体躯が彼女より小さい…、抱き心地が良い…、癒し草食系男子…、ぽにゃほわ系…、嗚呼、耳が痛い。草食男子以外っ、全部当て嵌まらない彼氏が此処にいるんですけど。
 

てか初耳っすっ、先輩の理想男性像ってそういうカワユイ男の子だったんっすね。

カワユさも畜生もなく、ただのヘーボン男子ですんませんっす。これでも毎日を必死に生きてる男っす。

そんな男に惚れてくれてどーもっすっ。

おかげさんで俺も惚れちまったっすっ。


「ベタ惚れだそうじゃないか。鈴理ともあろう女が、男にゾッコンなんて。君も落ちたな」


フンッと鼻を鳴らして皮肉ってくる御堂先輩、「仕方が無いではないか」すかさず鈴理先輩が反論する。

 
「あたしの彼氏は、ヒッジョウに小悪魔でな。誘いプレイが上手いというかなんというか。笑顔に魅せられてしまったのだよ。抱き心地も良いし、腰の触り具合もバツグン、キスをした時の必死さと言ったら、そりゃあもうそそるもそそる」


………。


「更に言えばな、まったくもって初心(ウブ)なものだから、何をするにしても一々赤面。ああいう奴ほど苛めたくなるというものだ。それでも『先輩、もっと』なんて必死に誘われた時には、まったくもってこいつは小悪魔だと魅せられてしまう」
 

………。


「そうそう、あたしの彼氏なんだが。一番何が魅せられてしまうのかというと、やはり(ピ――“放送禁止用語”――)で(ピ――“放送禁止用語”――)なところなんだ。キス以上のことをすると(ピ――“放送禁止用語”――)を強請って」

「センッパイ、此処は公共の場なんでっ…、彼氏さんのご自慢は控えて下さいねっ?」
 
 
 

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あきゅろす。
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