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05-15




「べつに鈴理先輩達と喧嘩しているわけじゃないんですよ。ただなんとなく今はお取り込み中だったから、俺がいると邪魔になるというか。二人とも今、家のことで忙しいらしくて。令息令嬢って大変みたいっすねぇ。いやぁ、庶民の俺には分からないっす」

 
どっかの雑誌で見たけど、人間って後ろめたい気持ちがあればあるほどお喋りになるらしい。
 
まさしく俺もそれで喋りだしたらやめられないとまらない、とにかく誤魔化したい気持ちで胸がいっぱいになった。

 
けれどプリンセスは俺の稚拙な誤魔化しには乗ってくれない。
 
「豊福」少しは気持ちに素直になってもいいんじゃないか、と微苦笑を零して俺の誤魔化しを取っ払ってきた。

必死に虚勢を張ろうとしていたもんだから、その言葉には困ってしまう。

俺は素直になんてなりたくなかった。
なったら、カッコ悪い自分を曝け出すって分かっていたから。

ぽりぽりと頬を掻いて視線を泳がせていた俺だったけど、やっぱり自分に嘘をついて笑顔を作った。
 

「気を遣わせてすみません。でも大丈夫っす。お二人のことは心配ですけど、俺は全然っすよ。うーん、なんか湿気た空気にしてしまいましたね。此処が日陰だからでしょうか? 場所を変えましょう」

 
何処に行きましょうか、考える素振りを見せて足を踏み出す。

刹那、視界が反転した。
 
目を点にしている俺を余所に、「さてとテイクアウトした後はどうするかな」とかなんとか言って御堂先輩が歩き出す。

彼女に担がれているのだと把握するのに数秒時間が掛かっ…、ちょ、なんで俺、担がれてるんっすか!

「センッパイ!」下ろしてくださいよっ、身を捩って懇願する俺に、「駄目だ」僕は今から君をテイクアウトするのだと御堂先輩。
 
テイクアウトって、もしかして俺を御自宅まで連れて帰るつもりっすか?!


「連れて帰ってどーするつもりっすか! 俺を連れて帰っても家事くらいしかできませんよ!」

「豊福。僕はな男の子と女の子、両方欲しいんだ」


「……、いやいやいや! それを俺に相談されましても! 俺にはどうしようもできないというかっ、いや分かるけど分かっちゃいけないといいますか!」


うっわぁああ、お外で女性に担がれている情けない草食男が此処にっ!
 
傍から見たら男同士、宇津木ワールドが展開されているような気もするけれど、彼女は男装していても立派に女性をしているわけで。

俺はそんな彼女に担がれているド阿呆男っ…、な、情けない! この上なく情けない!


「御堂先輩っ!」

お願いだから下ろしてくださいっ、相手に何度も頼み倒す。


暴れて逃げ出したいけど相手が女性だから強くは暴れられない。

怪我させたくないし、向こうも習い事を習っているせいか手腕が強いしっ、ひっ…、な、なんかどさくさにまぎれて直に背中を撫でられたような。


ぎゃぁああ! センッパイっ、やっぱ触ってる!

ちょ、野郎の肌なんて触っても嬉しくないでしょ! 俺は貴方の嫌いな男っすよ!


悲鳴を上げまくっている俺なんぞお構いなしに御堂先輩は、マンション陰を出て大通りに向かう。
 
器用なことに片手でスマホを取り出すと親指で画面をスライドさせ、「迎えを頼む」誰かに連絡を入れていた。


本当にお持ち帰りされるんじゃないかと怖じる俺は、人目も気にしていた。

 
だって日が傾き始めた道端で。大事なことだから二度言うけど日がまだある道端で女性に担がれているんだぞ。

そりゃあもう、人目を気にしない奴はノーテンキにも程がある。


……妙に目立っているし。

世間の目は冷たいっすね。冷ややかな眼を四方八方から感じるっす。

なんか誤解を含んだ視線も感じるような。
それは気にしないよう努めるけど。
 
 
シクシクと涙を流していると、御堂先輩が某Lの付くコンビニの敷地に入った。まさかこの態勢でコンビニにっ…、そんな非常識な!

と思ったんだけど、御堂先輩はコンビニ前で待ち合わせをしていたみたい。

コンビニの小さな駐車場に停まっている一際目立つ高級車を見つけると、それに歩み寄ってコンコンっと窓をノック。


扉が開くと御堂先輩が俺を車内に押し込んだ。


「アイテッ」ぽいっと放られたせいで座席に背中を打ちつけてしまう。

一体なんっすか、本気で俺をお持ち帰りするつも…っ、マジでされるんじゃないか? だって車に乗せられたって、つまりそういうことなんじゃ。



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あきゅろす。
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