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08-11



「影小鬼は戦闘力はないものの、逃げ足だけは一級品。身の危険を感じたら直ぐに逃げてしまう種族だ。だから魔力の察知には長けているのだろうな。ということはこの子の言うとおり、聖斥候隊が追い駆けてきているのかもしれない」

「そういやこいつ等。逃げ足はめっちゃ速いもんな。何度あたしと菜月が退治しようとしても逃げちまう」

 『カゲぽん達は強いんだじぇ!』退治なんてされないのだと、胸を張るカゲぽんを横目で見ていた風花はハイハイと聞き流す。ちゃんと聞けとぷんすか怒るカゲぽんにハイハイとまた適当に流し、これからどうするかとネイリーに話を持ち掛けた。

 ウム、ネイリーは一つ頷いて青小鬼に視線を向ける。
 
 
「この中で察知能力に長けているのは青小鬼くんだな。よし青小鬼くんにとば口を見つけてもらおう」

『うぇええ?! カゲぽん、そんなの分かんないんだじぇ?!』
 

 ぷんすかと怒っていたカゲぽんは一変、素っ頓狂な声を上げ、無理だとかぶりを振る。とば口というものが何なのかよく分からないし、大体どうやって見つけるのか見当も付かない。唇を尖らせ無理だと連呼する小鬼に「あんただけが頼りなんだ」と風花は励ましを送る。
 この中で察知能力に長けているのはカゲぽんだ。現に今、天使の魔力を察知したではないか。その長けた能力を活かせばきっととば口は見つかる。悪魔や吸血鬼にはない長けた察知能力を持つ、影小鬼のカゲぽんしか頼れる者がいないのだ。


『で…でもカゲぽん。ちゃんと見つけられるか分かんないんだじぇ』 

「大丈夫だって。あんたはやりゃできる子だろ? 天使はあたし達に任せろ。いざって時は全力であんたを守ってやるから」 


 グッと握り拳を作り、風花は小さな笑顔を見せる。

 恍惚に銀色の悪魔を見つめていたカゲぽんは、こっくりと首を縦に振り、戸惑いや躊躇いを捨てた。ぴょんと風花の肩から飛び降り、少し待ってくれるように言うと木々の影に飛び込んだ。
 影小鬼は影移動を得意としている。外界から探すより、影の中から探した方が時間が削減できると思ったのだろう。
 
 「頼んだよ」風花は祈るような気持ちでカゲぽんが探し出してくれる時を待つ。
 同時に天使達の気配は無いかどうか、最大限に神経を研ぎ澄ませ、警戒心を募らせていた。いざという時のために武器は召喚しておく。
  

 ザワザワ―。


 木の葉の擦れる夜風のざわめきをBGMにしながら風花はネイリーと共に息を殺して、天使達の気配を探す。「ン」ネイリーが反応した。微かにだが天使の魔力を感じたと彼は眉根を寄せる。カゲぽんの言うとおり、天使達は追って来たのだ。

 気配が多数。
 
 町で出会った聖斥侯隊だけではないようだ。聖保安部隊を呼んだのだろう。風花もようやく魔力を感じることができ、最悪だと舌打ちを鳴らした。向こうは軽く10人はいる。こちらの戦闘力を懸念して人数を増やしたのか、それとも今度こそ逃がさぬように人数を増やしたか。
 どちらにせよこちらにとって不利な状況には変わりない。
 
 向こうから微かにだが声が聞こえた。
 「いたか?」「いえ、ここら辺は魔力が入り乱れていて」確実に自分達を探している微かな声。風花とネイリーはカゲぽんに早く見つけてくれ、と心から祈った。なるべくは戦闘を回避したい。
 

『あったじぇ!』


 希望の光とも思える声に二人は表情を明るくした。すぐさまカゲぽんがいる方へと駆け寄る。
 ぴょんぴょんと跳ねながら木の根元に立っているカゲぽんは此処から魔力が漏れていると指差す。二人は目を落とした。すらっとした細い木の根元から魔力が漏れているのか。パッと見では何も分からないがカゲぽんが言うのだ。きっと此処がとば口に違いない。

 ということは此処の空間にちょっと強引にあけてやれば道は切り開ける。
 



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あきゅろす。
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