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14-05


 
 
 さて、賑やかな朝食を取るのは良いのだが天使たちにはあまり時間が無い。


 今日は真面目に出勤するつもりなのだ。
 きっと歪な悪魔が起こした昨日の西大聖堂奇襲事件の後処理が残っていることだろうし、二人は勝手に持ち場を離れたため上司達に弁解もしておかなければならない。そう語る天使達は根が真面目なのだと伺える。

 天使達が出勤している間、風花達はジェラールの情報を求めることにした。カゲっぴの行方を掴む一方で、セントエルフの墓も尋ねる予定である。
 あまり墓参りという表現を使いたくないが、事実上ジェラールは死亡し、墓まで建っている。信じたわけではないが、一応友人として墓地には赴きたいのだ。場所を天使達に教えてもらい、彼等が出勤した後に行動を起こす。

 軽い計画を立てた頃のことだった。
 

 突然、リビング側の窓からガラスを叩く音が聞こえた。


 思わず身構えてしまう魔界人達に対し、「郵便ね」柚蘭が大丈夫だと綻んだ。
 「郵便?」眉根を寄せる風花に、「聖界の郵便は」伝書鳩なの、と天使は教える。窓を開けると、そこには止まり木が備え付けてあった。これが聖界の文化か、感心する風花を余所に柚蘭は伝書鳩を中に招き入れ、銜えていた手紙を受け取る。


「あら…、これ手紙じゃないわ」


 住所は記載されてあるが、これはただの四つ折りにされた紙切れではないか。
 なにやら書類の裏紙のようだが…、不可解な紙の中身を広げる。既に皺の寄っている紙には殴り書きで何やら文章が綴られているよう。なんて書いてあるのか、螺月が尋ねた刹那、「そんな」柚蘭が絶句を露にした。


「幾らなんでも早過ぎる、早過ぎるわ。……螺月、出勤は諦めましょう。もう時間が無いわ! 菜月の儀式執行が明日の正午に決まったの! 今日、菜月は中央区に搬送されるってっ…」
 
「な、なんだって?!」
 

 椅子を倒す螺月は紙をこっちに持ってこいと指示。
 駆け足で戻って来る柚蘭は、全員に見えるよう紙を広げた。その紙には異例子宅の住所の他に儀式執行の日時、移動法、移動時間と差出人のコメントと名前が記されている。

 差出人は“千羽 司”と綴られていた。天使達の言う、聖保安部隊の中で唯一信用を置ける人物。彼等の味方だ。
 


“鬼夜 柚蘭・螺月殿

緊急で儀式執行が決まりました。
どうやら昨日の歪な悪魔が起こした騒動を契機に、儀式執行を族長抜きに決定したようです。

異例子を含む第一儀式執行群は今日、中央区に搬送される予定です。

搬送予定時間は夕刻、テレポーテーション塔使用。
儀式執行は明日の正午、輪廻大神殿。

あまり書くスペースがないため、旨のみお伝えしておきます。
きっと異例子を取り戻そうとするでしょうから。

どうぞお気を付けて。 
真実を知っている輩は遅かれ早かれ必ず、聖界から抹消されます。
そして真実を知る自分も今、聖保安部隊に追われる犯罪者となっています。

早く異例子を連れて遠くへお逃げ下さい。


あなた方の無事を心よりお祈りしております。


千羽 司”






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あきゅろす。
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