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 行動を起こすならば早い方がいい。


 吸血鬼の意見に頷き、風花は早速出店のひとつに足を踏み込んだ。
 そこの店主に、物を買う次いでとして異例子の家族のことを尋ねる。同じことを数件ので店に繰り返すだけで情報が集まるあつまる。異例子とその家族についての情報がたんまり集まるではないか。流石は有名人と言ったところだろうか。
 
 いつぞかジェラールが語っていたように異例子とその家族への差別の意識は高く、教えてくれる聖界人は口々に薄気味悪い家族だと教えてくれた。
 中には家族に対しては好感を持ち、異例子の誕生を同情する聖界人もいたりしたが、大半は家族ひっくるめての差別意識が高かった。鬼夜一族の天使ゆえ、大声では言えないが近所住民は気味悪がって、滅多な事じゃ近付かないらしい。
 
 有名人だったおかげさまで住所は簡単に入手することができた。
 二人はあっという間に手に入った住所を持って街中を進み。商店街から然程遠くない場所に異例子達の住居があるらしい。


「びっくりするくらいの収穫だったねぇ」

 
 もっと手が掛かるかと思っていた、風花は率直に吐露。
 頷く吸血鬼も、「時間が省けて良かった」と綻んでみせる。一分一秒無駄にしたくない自分達にとって、不幸中の幸いと言ったところだろう。彼等が家にいるかどうかは別として、まずは兄姉の住居に移動しなければ。

 速足で移動していた二人は、ふっと背後に違和感を察する。
 どうやらつけられているようだ。背後から殺意にも似たオーラを感じる。アイコンタクトを取って速足から一変、地を蹴って駆け出した。小道から大通り、そしてまた小道に入り、人気のない裏道に飛び込む。
 レンガ造りの建物が陰となってくれるその道に避難したと同時に感じる気配。悪魔と吸血鬼は振り返って相手を迎えた。
 
 そこには小柄な茶髪天使が自分達を睨みつけていた。こいつが犯人だったようだ。ひとりのようで他に聖界人は見受けられない。
 深いブラウンの瞳を此方に向けてくる青年は、「こそこそしやがって」盛大に舌を鳴らして唸り声を上げる。初対面に向かって毒づいてくる青年だが、彼の持っている紙袋のロゴには見覚えがあった。あれは確か、先程入った…、ではあの青年は。
 

 「俺達を調べているようじゃねえか」なんだ、俺達に用か? だったら直接言ってみろよ。
 

 言うや否や、風に乗って駆け出してくる青年は術を解くと同時に己の武器を召喚して二人に襲い掛かる。
 素早く跳躍し後退、燃え盛る槍頭から逃れた風花は相手の顔を見やった。毛先まで見事に染まった黄金髪と、激昂の光を宿すエメラルドグリーンの瞳、その顔立ちと長身の体躯は弟とまったく似付いていない。
 
 「鬼夜螺月」風花が名前を紡ぐと、「知ってくれてるようじゃねえか」てめぇ等、何者だ、螺月は唸り声を上げた。
 螺月は撒いた振りをして自分達の後をつけ返してくれていたらしい。他者に変装しているとは、しかもそれを気付かせないとは高度な技術を持っている。だが向こうから歩んできてくれるなんて好都合も良いところ。

 風花は周囲を見渡して早速相手に旨を伝えようとするのだが、螺月の方が必要以上に警戒心を抱いているせいで喋る間も与えてくれない。微動するだけでギッと此方を睨み、先手攻撃を仕掛けてくる。
 派手な攻撃を仕掛けてこないのは時刻が白昼、場所が街中であるからだろうか?


「ちょ、まずは落ち着けって!」
 

 悪魔の訴えを退け、「狙いは異例子か?」それとも俺達の命か、螺月は殺気立つ。
 どちらにしろ、自分達を調べていると知った以上、このまま野放しにするわけにはいかない。自分の家族を狙っていると知ってしまったのだから。
 「俺の家族に」手ぇ出そうとしてるんじゃねえよ、グッと柄を握り締める螺月はどいつもこいつも俺達のシアワセを奪いやがって、と下唇を噛み締めた。




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