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12-08



 

「千羽の行方は?」

 
 部下からの一報により、現場に駆けつけた隊の長・郡是忍は副隊長は見つかったか、と開口一番に訊ねる。
 かぶりを横に振る部下は申し訳ございませんと真摯に謝罪。手分けして捜しているのだが、まるで煙のように掻き消えてしまったのだと事情を説明する。「そうか」郡是は目を伏せ、千羽の様子を思い出していた。
 
 明らかに千羽の様子はおかしかった。
 奇襲され負傷してしまう前後、両方とも様子がおかしかった。予感はしていたのだが、まさか病室を抜け出すとは。
 
 巡回していた看護師が事に気付き、早く一報を寄越してくれたは良かったものの、千羽が見つからないでは話にならない。
 彼は何者かに奇襲を掛けられ、今もまだ命を危ぶまれている危機に曝されている。それでなくても呪術によって次第次第に心身衰弱する恐れがあるというのに。これは部下の様子に気付けなかった、そして配慮できなかった上司である自分に責がある。早く部下を見つけ出さなければ。


「郡是隊長。これが病室に」


 郡是が手を差し出すと、手の平にコロンとそれは落とされた。
 手中に落とされたのは天使の翼を模った徽章、これは千羽の物だ。目を細め、郡是はそっと握り締めた。故意的に千羽は徽章を置いて行ったのだろう。自分に徽章を渡し、副隊長の座から下ろして欲しいと懇願していたのだから。
 

(千羽、何が…何があったというのだ)


 何故、奇襲を掛けられた? その輩と接点は? 徽章を手放すほど、追い詰められているその心は?
 すべてが闇の中、千羽の心中にしか真実は無いだろう。

 「次から次に」事件が起こるものだ、聖界も物騒になったものだと苦笑を零した後、一変。険しい顔で路地裏といった人気の無い場所まで隅々に捜すよう指示。自身も部下の居所を突き止めるために動き出す。


(千羽の真実を、もし知る者がいるとしたら…、まだ捜し易いのだが。―――…いるではないか)


 郡是は病室で立ち聞きしてしまったとある会話を思い出す。行方不明になる前に、千羽は異例子の兄姉と接して、なにやら親身に話していた。手紙がどうのこうの言っていた、彼等ならばきっと。


 夜が明けても見つからなかったら彼等の元を訪れてみよう。郡是の気持ちは固まっていた。

 



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