02-06
「彼の家族の名前は情報で手に入れたのだが、まず菜月のご両親の名前は父が鬼夜灯月。母が鬼夜鈴葉。兄が鬼夜螺月で、姉が鬼夜柚蘭、そして末子の鬼夜菜月。ちなみに祖父の名前は鬼夜琴月。此処まで何か思わないかね?」
「んにゃ、べつに普通。普通だと思うけど」
「では鬼夜一族の名を挙げてみよう。現在の長が鬼夜菊代。幹部に鬼夜湯ノ月(とうのつき)、鬼夜聡月(そうづき)、鬼夜澪月(みおづき)」
「うわっ、全部男の人の名前には月が入ってますね!」
逸早く気付いた雪之介は声音を上げ、書き出された名前を指差す。
そのとおりだとネイリーは頷く。
鬼夜一族の男性の名にはすべて『月』という文字が入っている。これには意味があり、名には夜空に輝く月を指しているらしい。
同じように竜夜には『陽』。これは真昼の空に輝く太陽を指している。虎夜ならば『地』。これは雄大な大地を指している。狐夜なら『海』。これは蒼茫広がる海を指している。
女性も同じく、男性まではないものの名前に統一性を持ち、似たり寄ったりの名を持っているとネイリーは語る。
では何故名前が此処まで統一されているか。
それは四天守護家が“イルマン精神”という精神を唱えているからだ。
イルマンとは“兄弟”という意味を持ち、四天守護家はすべて兄弟であり、一丸となって聖界の先導に立つ義務がある。名にはその意味合いが込められているらしい。
特に男の名前が似たり寄ったりなのは、聖界は軽く男尊女卑の念があるのだという。酷く女を軽視しているわけではないが、聖界は女よりも働ける男を重視することが多いのだという。だから名前がここまで似たり寄ったりなのだ。
名を聞けば四天守護家であるかそうでないか、というのはこういう意味なのだとネイリーは皆に説明する。
風花は腕を組み、「変なの」と名前を見てポツリ。
自己紹介の時はちゃんと誰と誰の繋がりを持つのか紹介しておかないとごっちゃになりそうだ。四天守護家の名前はつくづく面倒だと思う。
しかし過度とも捉えることのできる統一性がある分、こちらには四天守護家であるかそうではないか、と何かと知れる有利な面がある。四天守護家の名前の統一性に感謝するべきところだろう。
尤も、聖界で天使の名前を尋ねられるかどうかは別物だが(名を知る前に魔界人だとバレ、一騒動がおきそうだ)。
「苗字にも統一性ってのがあるんだねぇ。みんな名前に『夜』が付いてる。それに鬼夜ってさ、名前に鬼が付いてる。鬼って魔界の生き物なのに」
「ウム。それぞれ気質を示しているらしいんだ。詳細は分からないが…、四天守護家の中でもそれぞれ特徴がある」
例えば鬼夜一族。
この一族は特に自然武術魔術に優れた一族だと謳われている。火や水、雷などの力を借りた戦闘を尤も得意としているんだ。
つまり自然を使った戦術が巧みと言うわけさ。森など自然豊かなフィールドで戦闘をおっぱじめたら最後、苦戦することは間違いないだろうな。それに関わりのある神官や聖保安部隊も皆、自然武術魔術を得意としているらしい。
次に虎夜一族。
この一族は特に自己武術魔術に優れた一族だと謳われている。自己武術魔術というのは、自分の身体能力を極限まで上げることを言うんだ。この一族は接近戦をとても得意とし、スタミナも他の一族に比べて長けている。
僕やフロイラインは接近戦を得意としている方だから、この一族はとても厄介だと思う。関わりのある神官や聖保安部隊も同じ事が言えるぞ。
次に狐夜一族。
この一族は特に幻影武術魔術に優れた一族だと謳われている。幻術を巧み使ってくるんだ。しかもこの一族は他の一族に比べて頭脳戦を得意としている。幻にプラスして頭脳戦で挑まれるほど厄介なものはない。あまり出くわしたくない一族だな。
二つの族と同じく関わりのある神官や聖保安部隊も同じ事が言える。要注意一族だ。
最後に竜夜一族。
この一族は尤も厄介且つ避けたい一族で呪武術魔術に優れた一族だと謳われている。その名のとおり、呪を得意としている。呪にも種類はあるがこの一族は相手に呪いを掛けることは勿論、呪を跳ね返す術も得意としている。
また聖力(せいりき)という自然界に眠る神秘の力を使う者がこの一族には多い。
何より、四天守護家の中で最も強い一族と謳われているんだ。リーダーシップ性も高く四天守護家のトップを立っている一族だと言える。
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