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01-19


 
「郡是隊長。異例子でも診てくれる医師の手配だけ要求するわ。お願いできるかしら?」
「ああ。至急手配する」

「そう、じゃあもう此処に用はないわ。失礼します。これを機にお互い、もう少し良い関係になると良いわね」

 踵返し、一つに結った金の髪を靡かせながら柚蘭は部屋を後にする。
 舌打ちを鳴らし螺月も姉の後を追う。その際立ち止まり、聖保安部隊を睨んだ。

「てめぇ等も俺等の敵だってことはよく分かった。次、こんな騒動を起こしてみろ。俺は容赦しねぇぞ。チッ、てめぇ等のせいで俺も柚蘭もオチオチ仕事にすら出勤できねぇよ。てめぇ等は一切信用ならねぇ。こんなにも失望したことはねぇよ。裏切られた気分だ」

 吐き捨て、螺月は取っ手を掴むとわざと音を立てながら扉を閉めた。
 見送った千羽は柚蘭と螺月の剣幕にただただ息を呑むしかなかった。隣にいた部下も呆気に取られているしか術がなかったようでポカンと口を開けている。

 しかし千羽は呆気と同時に大きなショックを受けた。
 聖保安部隊が、しかも自分の隊がこんな騒動を起こすなんて。チラッと騒動を起こした部下達に目を向ける。
 皆、空気の重さにジッと息を潜めて耐えていることしかできないようだ。
  
 ガンッ―!

 突然転がっている椅子が向こうに飛んだ。
 驚く千羽と部下達に対し、椅子を蹴り飛ばした郡是は青筋を立て握り拳を作る。

 異例子の兄姉に腹を立てたのではない。
 自分と、その部下に郡是は腹を立てていた。

「俺が最も嫌うのは聖保安部隊の名を穢すことだっ。それは貴様等も重々承知している筈っ」

 なのに、あろうことか自分の部下が聖保安部隊の名を穢すような行為を振舞うとは。
 誰が異例子に手を下せと命を下した。自分たちが受けた命はあくまで異例子の監視。それ以上も以下も無い。異例子が何かしたのならば話は別だが、話を聞く限り態度等が気に食わなくてこんな騒動にまで発展。

 しかも今日だけではない、だと?
 
 子供ではないのだ。
 口でどうこう言われようが手を出すなど言語道断。これが誇り高き聖保安部隊がすることか! 柚蘭や螺月から信用を失うのも無理は無いではないか!
 
 騒動を起こした部下達を睨んだ後、郡是は隣に立つ千羽に命を下した。

「千羽! 至急全員此処に集めろ! 大至急だ! 今日は全員帰さん。二週間の監視で自分達のした行為すべてを吐かせるまで、誰一人絶対に帰さん。俺の見ていないところで姑息なことをしていた馬鹿どもを徹底的にシメる。騒動を起こした貴様等は集合するまで俺と隣室で話し合う! 来い!」
 
 鬼隊長の憤怒にその場にいた千羽は顔面蒼白した。
 郡是は一度口にしたことは実行に起こす男だ。自分の中で納得いくまで徹底的にやるだろう。
 この後見る地獄を想像してしまい、サーッと血の気が引いた。

「千羽! 何をしている!」
「はい!」

 一喝され、千羽は急いで部屋を飛び出した。明日の寝不足は逃れられそうに無い。




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