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09-16


  
 洞窟の足場は悪いが、今のところ一本道が続いている。

 そのため二人は肩を並べ、フル回転に警戒心を抱きながら道を進むほか手は無かった。
 何が起きてもおかしくないミステリーデスゾーンだからこそ、気が抜けない。以前入ったアイスデスゾーン以上に警戒心が必要だ。
 
 一直線上に道を示しているエグザクトコンパスはただひたすら暗黒に光を射している。
 本当にこのまま進んでも良いのか、疑念はあるものの、これしか信じるものが無いため二人は息を殺して前進する。カゲぽんは風花の肩で身震いをしていた。肌に感じる沢山の魔力に怖じているようだ。
 大丈夫だと声を掛け、風花はコンパスを握った。大丈夫、自分達は此処を抜けられる。抜けなければいけないのだ。
 

 と、足元が急に歪んだ。

 
 二人は来たかと身構える。後退したその瞬間、風花の体が地面から浮き弾んだ。

 見事に天井に頭をぶつけるが、天井はまるでゴムのように柔らかい。よって頭を打ちつけてもバウンド。地面に体をぶつけまたバウンド。ぴょんぴょんと跳ねる体に風花もどうなっているのだと大鎌をしっかり握ると、壁に刃を突き刺して動きを強制的に止める。
 同じようにネイリーもサーベルを壁に突き刺し、動きを止めていた。


「はぁーあ。なんでトランポリンのようにここ、跳ねるわけ?」

「ウーム、何が起きてもおかしくない。それがミステリーデスゾーンなんだろうが…、ウム、どう進むかね? 少しでも衝撃を与えれば、僕等の体は飛び跳ねてしまう」

「そりゃもう。ここを抜けるまで伝い歩きじゃない? あ、伝い歩きプラス壁刺し? 単に伝い歩きじゃまたバウンドしちまう! カゲぽん、あんたは影にいな」

 
 ということでカゲぽんは安全な影の中へ。
 
 二人は伝い歩きプラス壁刺しで道を突き進んでいく。これが一時間も続いたのだから堪ったもんじゃない。

 ようやく跳ねない“ただの地面”に辿り着いた二人は地面に座り込み、疲れ果てたと脱力。
 まだまだこれからだというのに、いきなりこの仕打ち。出鼻を挫かれた気分だ。「少し休憩」風花の訴えに、「同感だよ」ネイリーは賛同した。
 しかしミステリーデスゾーンは鬼畜のようだ。二人が休憩していると、ゴゴゴォと地響きが。嫌な予感を抱えながら後ろを振り返る。タラタラと汗を流し、二人は顔を見合わせた。

「ネイリー。あれってさ、お約束じゃない?」

「よく映画で見る光景だな! さてと…、逃げるぞフロイライン!」
 
 素早く腰を上げ、二人はエグザクトコンパスの導く光を頼りつつ悲鳴を上げながら全力疾走。

 背後から追い駆けてくるのは大きな岩石の大玉。
 「ベタだぁあああ!」風花はミステリーデスゾーンに文句を垂れた。何が起きてもおかしくないとは言え、こんなベタ落ちが自分達に襲い掛かってくるなんて! ミステリーデスゾーンは思考が貧相なのかもしれない。
 分かれ道に差し掛かる。風花達は大玉が入って来られない穴を選び、急いでそこへと逃げ込んだ。ドンッ、大玉は穴を塞ぐように体当たり。大きな衝撃は襲ってきたがそれまでのこと。図体の大きい大玉はそこでつっかえてしまった。
 

 助かった。

 壁に背を預け、二人はホッと胸を撫で下ろす。コンパスに目を向ける。光は変わらず道を指し示していた。ふーっと息を吐き、今度こそ休憩しようと二人は腰を下ろす態勢に入ったのだが、またしてもそこで邪魔が入る。
 急に視界が霧がかったのだ。今度は何が来るのだ。生唾を飲んで待ち構えていると、周囲は白い霧で包まれた。そして向こうから声が聞こえてくる。それはとてもとても柔らかな声。比較的高い、優しい懐かしい声。
 
 風花とネイリーは零れんばかりに目を見開いた。
 霧の向こうにいたのはキャロット色の髪を持った女性。長いツインテールを靡かせ、黄色の瞳をこちらに向け、愛らしい笑顔を作っている。死んだと噂されているジェラールだった。なんでこんなところに親友の姿が。ネイリーは息を呑み、風花は言葉を失っていた。

 うっふん、ジェラールはこちらにウィンクすると両手を広げた。

 そんなジェラールを抱き締める人物が霧の中から出てくる。


 あれはー…。

 



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あきゅろす。
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