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08-20




「お・ま・えほど勧誘ド下手くそな奴はいねぇ。いっぺん死ぬか? 地獄に行くか? アアン?」

「あ…あははは…不味いこと言っちゃいました? ッ、イッダイ!」


 二度も同じ場所に拳骨を食らい、鉄陽は頭を押さえその場に蹲る。
 「お前にだけは勧誘任せられるか」舌打ちを鳴らす雅陽は、改めて風花とネイリーに目をやる。彼のいるような眼差しに二人は少しならず警戒心を抱いた。なんとなく視線を勝ち合わせるだけでも嫌な予感がする。それだけパライゾ軍元帥の威圧は凄いのだ。

 目を細め、満遍なく自分達を観察する雅陽は再度風花に勧誘をした。パライゾ軍に入らないか、と。

 当然お断りだった。風花はベッと舌を出し、フンと鼻を鳴らしてそっぽ向く。
 
  
「誰がいばらを欲しがってるヘンチクリンチームになんか入るか」

「入れば代わりにお前の望みを叶えてやる。例えば…そうだな、異例子奪還に手を貸してやってもいい」
 
 
 ドキリ―。
 
 思わず鼓動が鳴った。なんでパライゾ軍がそんなことを…、大きな動揺を見せる風花に雅陽はしてやったりとばかりにニヤリ、と口角をつり上げる。

 雅陽には一目で風花と異例子が四天守護家の手によって引き離されたのだと理解した。
 風花と異例子は恋仲だった。噂では片時も離れぬ関係だった聞いている。なのに今、この場には異例子がいない。それは四天守護家が二人の仲を引き裂いたということだ。

 先程現れた聖保安部隊や聖斥侯隊は魔界人と繋がっていたという証拠を抹消するためだろう。
 そして風花の動揺に雅陽は確証を得た。風花は何らかの手で異例子を奪還しようと考えているのだと。

 まだ北風の悪魔は異例子を心の底から想い焦がれている。これを利用しない手はないと雅陽は考えた。

 
「近くにデスゾーンがある。おおかた、そこから聖界に行くなんざ思ってるだろうが…、時間の無駄だと思うがなぁ。それより移動魔法で聖界まで連れてってやる。無論、仲間に入ればの話だがな」


 移動魔法は天使達の得意術だ。目前の男もまた天使、移動魔法は当然扱えるだろう。
 わざわざ遠回りするよりも、移動魔法を使った方が時間の短縮にもなると雅陽は言う。便乗し、鉄陽もヘラヘラと笑いながら説明を加える。


「移動魔法を使えば聖界まで数十秒ですよ。数十秒。早く会いたいでしょう? 異例子くんに。なんたって恋人ですもんね。再会して、ひゃん、あれん、ほれん! みたいなこともしたいでしょ?」

「……。あんた、表現力なくない? ひゃん、あれん、ほれんって…、パライゾ軍は馬鹿ばっかなわけ? いやそれともそいつが馬鹿?」


 そう言われると雅陽も何も言えなくなる。ジロッとヤンヤンキャンキャン言っている鉄陽を睨んだ。


「鉄陽。お前は黙ってろ」

「え…えぇー…、僕は協力してるだけなのに。勧誘しようと頑張ってるだけなのに」


 シクシク酷い。雅陽が酷い。北風さんも酷い。二人して僕に冷たいんですから…でもお仲間になりましょう。お互いに利得はあると思いますから。
 グスングスンと嘘泣きする鉄陽に風花は遠目を作る。

 確かに心に迷いは出た。数十秒で聖界に行ける、それはとても魅力的だ。正直、早く菜月にも会いたい。
 仲間に入れば菜月やジェラールに少しでも早く…と迷い思ったが、鉄陽の嘘泣きを見ているとどうにもこうにも。




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