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ミステリーデスゾーンを目指せ



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 中央ヨーロッパに属する国、スイス連邦。

 日本とスイスの時差は約8時間。3月末から10月末のサマータイムの期間は約7時間。スイスは日本よりも時間が遅れている。時差ぼけをある程度覚悟しておかなければならない。
 

 スイスといえば何が有名か。何が脳裏に浮かぶか。
 

 まずは馴染み深いスイスチョコレート。スイス時計。印象深いスイスの国旗、白十字のバックは赤く染まっている。
 
 少し深く掘り下げてみると、スイスの有名観光名所が思い浮かぶことだろう。
 ヴォー州のモントルー近郊のレマン湖畔にあるシオン城という城。バーゼルにあるバーゼル市立美術館。スイスとイタリアの国境に位置するマッターホルン、ヨーロッパアルプスの山。

 どれもこれも有名な観光名所だが風花のスイスのイメージは『アルプスの少女ハイジ』だった。かの有名なスイスの作家ヨハンナ・シュピリの児童文学作品である。とはいえ、あまり本を読まない(というか人間界の書物は読まない)風花の中の少女ハイジは日本アニメの影響を多大に受けている。

 風花のスイスイメージは大自然いっぱいの山と青々と生い茂った放牧地。険しい急斜面の山の中で白ヤギたちに囲まれて山小屋で暮らす少女。気難しいおじいさんやヤギ飼いの少年、その少年のおばあさん等々...。
 

 完全に風花はアニメの影響を受けていたが、本人はスイスの何処かにハイジ達はいるのだと信じていた。


 過酷になるであろう旅路の中、少しでも彼等に会えたらなぁ…なんて思っていたりいなかったり。
 もしも会ったら足の悪かったお嬢さまはその後、ちゃんと歩けるようになったのか、今もまだ友達なのか、何をして遊んでいるのだなど、聞いてみたいものだと思っていた。
 
 偶然でもいいから出逢えないものだろうか。
 
 胸に密かな期待を秘めながら、風花は一足先に宿泊施設から出た。
 目の前に広がるのは金髪や茶髪が主流だと言わんばかりに歩くスイス人達。日本国のように黒が身を持つ人は少なく、通行人も日本語で会話する者はいない。

 スイスは以下ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の四つが話されているのだが、スイスの言語の主流はドイツ語とフランス語らしい。

 ネイリー曰く自分達が訪れている地域はドイツ語を話している地域だとか。会話を交わすとドイツに帰った気分がすると言っていたが、勿論風花はドイツになど言ったことないため彼の気持ちは分からないでいた。自分が日本国に帰った時、彼と同じような気持ちを抱くのかなと疑問に思う程度だった。
 

 だからと言って風花は言語に困らない。

 
 魔聖界人は生まれた時から持つ魔力はその土地に宿る言霊(ことだま)と調和し合い、ある程度聞こえてくる言語を己の中で翻訳できるのだ。最初こそ初めて聞いた言語に戸惑い、口を開けばカタコトになってしまうが慣れれば一時間もしない内に会得することができる。
 さすがに方言までは会得することは出来ないが、標準語の会得は可能になる。他者が自分の会話を耳にしても立派に話せていることだろう。

 人間界にやって来た魔聖界人が言語に困らないのは此処に理由がある。
 
 例えば悪魔や天使がどの人間界の地に降り立っても言語は容易に話せるだろう。
 逆に人間が魔聖界に行った場合、言語はまったく通じないだろう。人間には魔力がなく土地に宿る言霊と調和し合うことができないのだから。魔力とはちょっと違う力を持つ妖怪もまた言霊とは調和し合えないだろう。
 

 魔力は何かと便宜が良い。

 その便宜の良さを読み書きにまで活かして欲しいのだが、残念なことに読み書きは自力で会得する他無い。
 



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あきゅろす。
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