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07-16

 


 ピピピ―。
 
 
 あかりの携帯が声を上げた。メールではない電話のようだ。手早くポケットから携帯を取り出したあかりは相手を確認する。冬斗もしくは手毬からだろうか?
 しかしあかりの予想は見事に外れ、相手はネイリーからだった。画面に『ネイリー・クリユンフ』と表記されている。何かあったのだろうか、あかりが電話に出ると向こうから女性の声が聞こえてきた。風花の声だ。
 

 矢継ぎ早に喋る風花は不味い事態になったとあかりに説明する。

 
 曰く、聖界が刺客を送り込み自分達の命を狙っているという。
 今、必死に撒こうとしているのだがなかなか追っ手を振り切れない。そう説明する悪魔はあかりに頼み事をしてきた。今からネイリー宅に行ってスケルちゃんから自分達の荷物を受け取ってくれないか。そしてそれを今から指定する新幹線改札口前まで運んでくれないか、と。

 今の状況では家に赴けない。スケルちゃんにも危害が及ぶ。

 必ず追っ手を撒いてそっちに行くから、撒いたらまた連絡するから。自分の頼み事を聞いてくれないか。
 

 風花の頼み事にあかりは腰を上げた。
 
 そんなの頼み事でも何でもない。
 自分にできることのならば、最善を尽くす。それが友達のすること、そうではないだろうか? あかりは風花と軽く会話を交わした後、錦一家に事情を説明して車を出してくれるよう頼んだ。
 

 丁度ドアベルが鳴る。

 冬斗と手毬がやって来たのだろう。

 
 二人の訪問を合図に皆、動き始める。「先に車庫に行ってなさい」自分辰之助の指示にあかりと雪之介は頷き、揃って玄関へと飛び出した。扉向こうで待っていた冬斗と手毬は二人の焦る姿にどうしたのだと首を傾げる。
 説明している時間は無い、あかりは手毬の、雪之介は冬斗の手首を掴んで車庫へと駆けた。

 「お、おい」「どうしたの?」素っ頓狂な声を上げる二人を無視し、あかりは祈るような気持ちで駆けていた。


(風花さん達から大切な人達を奪うだけでなく、命まで奪おうだなんて)


 だったらなんのために菜月とジェラールは聖界に帰ったのだ! 二人はこれ以上、大切な人を傷付けてはならないと聖界に帰ったというのに!
 
 煮え滾る感情は冷静を欠かしてしまいそうだ。できるだけ冷静に物事を見据えていきたい。あかりは深呼吸を一つすると、改めて風花とネイリーの無事と聖界にいる菜月とジェラールの無事を祈った。

 また“何でも屋”店員や常連客達と笑い合いたい。だから皆、無事でいて欲しい。




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あきゅろす。
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