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07-12


   

「いきなり遊びに来てくれるなんて水くさいねぇ。連絡でもくれればいいのに。あたし達に何か用でもあるわけぇ? 一応? 聖界人と縁は切ったつもりなんだけど?」

「まったくだ。重傷を負わされたというのに、まだ何か僕等に用でも?」
 

 敢えて聖界人と縁は切ったと二人は口にするが、「異例子と繋がりがあったからな」隊の長は冷然と言葉を返す。
 

「異例子と繋がっていた魔界人はすべて排除。それが我々の受けた命令だ。本来ならば二ヶ月前に落としていたその命。寿命が二ヶ月も延びたことを感謝するんだな」
 
「ちぃーっとも感謝したくないっつーの。菜月もやたらめったら有名人だよねぇ」

「羨ましいほどだな。僕も聖界で是非とも有名になりたいよ。どちらかといえば僕はジェラールと繋がりが深かったのだが、大親友の有名っぷりには恐れ入るよ」

 
 「ジェラール?」隊の長は皮肉ばかり口にしている二人の会話に片眉をつり上げた。
 聞きなれぬ単語だが、しかし何処かで耳にした単語。やや思案した後、隊の長は思い出したように頷いた。


「あのセントエルフの名か。そういえばそっちの吸血鬼はセントエルフと繋がりが深かったと情報を得ている」

「おっとジェラールも有名だな」

「あんたラブだから有名なんじゃないの?」

 
 風花にからかわれ、ネイリーはやや引き攣り笑い。友愛は芽生えていたが、それ以上は芽生えていない。芽生えてはならない。だって自分達は腐っても男なのだから!
 「だったら尚更葬ってやる」それが慈悲と言うものだ。直ぐ奴と会わせてやる。隊の長は意味深な台詞を吐いた。
 途端にネイリーに嫌な胸騒ぎが走る。それは二ヶ月ほど前からずっと感じていた胸騒ぎ。汗ばむ手を握り締め、それはどういう意味だと詰問する。妙に息が詰まる。どうか、自分の予想が外れて欲しい。願わずにはいられない。

 しかし無慈悲な現実が突きつけられた。
 

「知れたこと。あのセントエルフは二ヶ月前に死亡しているからだ」
 
 

 ジェラールが、


 死んだ?

 
 セントエルフだった彼、いや彼女が、オカマエルフになって自分に求愛していたジェラールが死んだ。大親友だった友が死んだ。死んだ。死。何故、彼女が死を迎えるのだ。しかも二ヶ月前に。二ヶ月も前…、つまり自分達と別れてすぐに彼女は死んだというのか。
 ネイリーは悲しみよりも絶望よりも何よりも先に愕然した。混乱した。呼吸を忘れた。

 隣に立っていた風花もまた呼吸を忘れた。
 わななく下唇を噛み締め、持っていた大鎌を握り締める。ジェラールが死んだ。落ち込んでいた時、いつも自分を支えてくれた友が死んでしまった。しなやかで優しく気高い彼女は誰よりも女らしい女だった。


『ジェラールは貴方が悪魔だって気にしないわぁ。だってネイリーのお友達だものん』


 悪魔の自分と躊躇なく握手を交わしてくれた、ジェラールが死んだ。だって?
 
 一歩足を踏み出し、音無く駆け出して斬りかかってくる聖保安部隊の相手をしながら風花は混乱している頭で必死に理解しようとした。
 理解しようとすればするほど怒りに支配されそうだった。滾る怒を噛み締めながら、風花は横目でネイリーに目を向けた。彼もまた必死に理解しようとする手前だった。

 
 嗚呼、一番辛いのはあいつだ。あいつじゃないか。自分が冷静でなくてどうする。




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