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08-05


 
 さて腹ごしらえが済むと二人と一匹はこれからの旅路を確認する。
 これから電車に乗り、アルプス山脈に向かう。これだけで風花はハイジ達に会えるんじゃないかと期待したが、ネイリー曰く山脈には登らないとのこと。アルプス山脈の麓を目指すと言うのだ。
 
「辰之助がくれた情報によると、麓付近は魔力が入り乱れている。僕等は乱れているとば口を探し出さなければならない」

『うーんっと…てことはだじぇ、とば口から入るのか?』


「そのとおりだよ、小鬼くん。とば口に飛び込み、更に向こうの空間の何処かにあるミステリーデスゾーンを探す出す。普段とば口は小さな隙間しかあいていないのだが、辰之助の依頼主殿はそこをあけて入ったらしい。どうあけるかというと…実力行使だな」


 グッと握り拳を作るネイリーに風花は俄然やる気を出した。力技ほど得意分野はない。腕力には自信があるのだから!

    

 ある程度の日程を確認した一同はオープンカフェを出て電車へと乗り込んだ。
  
 そこで何時間か揺られるのだが、こうしたのんびり速度だと風花自身、観光旅行にでも行った気分になる。
 勿論観光なんて悠長なこと言ってる場合ではないのだが移動間は暇で仕方が無い。まさか車内でトレーニングをするわけにもいかず、電車に揺られている間、風花とカゲぽんはもう来ないかもしれないスイスの街並みや景色を楽しみ、ネイリーはノートパソコンを弄くっていた。

 カタカタと手早くキーを打つネイリーの表情は険しく、何度も画面と睨めっこする状態になっていた。

 何をそこまで真剣にやっているのか。仕事の依頼でも飛び込んでいるのだろうか。
 風花は思わずパソコンを覗き込む。そこには教会のような画像ばかりがアップされていた。決め細やかな壁細工、大きなドーム、大きな鐘楼、見事な建物の造りに風花は立派だと感嘆の声を上げる。
 
 しかしネイリーの表情は変わらない。
 ふーっと息をつくと、微苦笑を浮かべて一つの教会を画面に出した。
 

「これは大聖堂と呼ばれている建物さ。今、君に見せているのは西大聖堂。鬼夜が集っている聖堂さ」

「…じゃあこれ、聖界の?」


「ああ。裏情報屋に頼んで聖界の画像をいくつか送ってもらったんだ。非常に大きな聖堂だな。此処に1000もの鬼夜族が集うらしい。他にも東大聖堂、南大聖堂、北大聖堂…そしてこれが中央大聖堂」

 
 次々に見せてくれる画像の中で一際大きく立派で厳格な風格をみせてくる大聖堂。
 これが聖界や四天守護家の中心核となっている地、中央大聖堂だとネイリーは語る。画像で見た程度なため、風花には何とも言えないが実物は大層立派なのだろう。そして自分達にとっては脅威となる場でもある。
 ネイリーはなるべく中央区を避けたいと話す。以前も説明したが、此処は四天守護家でもトップや幹部の集う場。実力も並大抵の物ではない。

 だがしかし、可能性的には此処を訪れなければらないかもしれない。
 
 何故か。
 中央大聖堂には輪廻大神殿があるからだ。此処で“聖の罰”が行われる。仮に菜月やジェラールが罰を受けるのならば、大神殿に向かわなければならないだろう。

 
「以前フロイラインが言っていた『菜月が大聖堂で“聖の罰”を受けた』という発言。
あれから僕なりに調べてみたのだが、どうも菜月が七つの時に引き起こした儀式の無効化事件を契機に輪廻大神殿で“聖の罰”が行われるようになったらしい。無効化による事件で何か不都合でもあったのだろうな」

  
 パチッパチッとキーを叩き画面を切り替えていると、新着メールの知らせが画面に出る。
 
 「失敬」ネイリーは画像を眺めている風花に断りを入れてメール画面を開く。
 それは魔聖語で書かれたメール。よって風花にも読めるものだった。自分がメールを覗き込んでもネイリーは咎めの声を上げないので、内容に少し目を通させてもらった。
 



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