06-14
「困ったことに僕、カツアゲにあってるんだ。この方達、かの有名な荒川って不良の仲間らしくて。あ、たんまです。まだ殴らないで下さい。ちょっとお時間を要させて下さい。暴力はいけません」
のほほんと不良の相手をしている雪之介は目で訴えてくる。この人たち、凍らしても良いかな、と。
冬斗は小さく首を横に振った。それは流石に不味いだろ。凍らせたら最後、怪奇現象とこの場を混乱に落としかねない。だからと言って雪之介に殴られろと言っているわけではない。冬斗は果敢にも不良達に雪之介から手を離せと声音を張った。
しかし向こうは応じない。
それどころか面子を見て勝てると思ったのだろう。金を出すよう強要した。しかも風花には自分達の相手をするよう命令するものだから、彼女のこめかみに太い青筋が立つ。
「だーれがあんた達の要求を呑むかっ。ちょ、シメたろうか?」
「ふ、風花さん落ち着いて下さい! この人達の相手をしたら、とんでもない事が起きますよ!」
勿論、此方が勝つ前提の“とんでもない事”をあかりは言ったのだが不良四人組は別の意味で捉えたらしい。
「素直に応じたほうが良いぜ」なにせ自分達は荒川の仲間なのだから。鼻高々に言う不良達に風花はピキピキッと更にこめかみに二本の青筋が立つ。三階フロアを陣取っているだけでなく、こうして人様の金を巻き上げようとは許すまじ、荒川率いる不良グループ。
自分の大切な友人をカツアゲしようとした行為、当然罰金だ。
風花は関節を鳴らしながら不良四人にガンを飛ばす。
「雪之介を離しな」完全にやる気モードになっている風花に、あかり達はどうしようと冷汗を垂らした。このまま行けば危ない。不良四人が危ない。そりゃ悪いのは向こうなのだが手を出したら最後、あの馬鹿力を持つ悪魔様に命を奪われるかもしれない! 止めなければ!
「クッダラネェことばっか言いやがって。俺はテメェ等なんざ知らねぇぞ。ケイ、持っとけ!」
「え、わっ、えおっ、おいヨウ?!」
と、突然第三者の声。
同時に慌てる少年の声と不良の一人が蹴り飛ばされる。
瞠目する一同に対し、不良を蹴り飛ばした輩は「うざってぇ」と愚痴りながら関節を鳴らす。染まった金に赤のメッシュが入った髪。彼もまた不良で高校生のようだ。あかり達とは別高校に通っているのだろう。セーラー服、学ランのあかり達に対し、彼はブレザーを身に纏っていた。
「テメェ等みてぇのがいるから評判が悪くなる」
眉根を寄せている不良の背後で、彼の平べったい通学鞄をキャッチしたおとなしめの少年、いやまんま地味少年は「これが無くても評判は悪いと思うけど」と苦笑い。
誰だと警戒心を高める風花を余所に、カツアゲしようとしていた不良達は顔面蒼白。
「荒川!」誰かがそう叫ぶことにより、不良の名が判明する。彼がゲーセン三階フロアを陣取っている噂の不良・荒川庸一らしい。本当にイケメンだ。顔が此処にいる男子群より美が煌いている。
カツアゲ組の様子から見て、あれほど荒川の仲間だと言っていたくせにとんだ空言だったらしい。
別に荒川不良グループに怖じたりはしていなかったが、傍迷惑な空言を述べてくれたものだ。
荒川を見るなり、なんで此処にいるのだと不良の一人が声音を張る。大抵、三階もしくは二階で溜まっているくせにどうして今日に限って一階に。問い掛けに荒川の整った片眉をグイッとつり上げた。
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