06-13
あかり達に連れられて来たのは駅中にある一軒のハンバーガーショップ。
そこで腹ごしらえをすることになった風花は何を食べようかと迷う。久しくハンバーガーなんて食べていなかったため、あれやらこれやら迷ってしまう。四人の奢りだからなるべくは量を控えよう。
すると四人に今回は多めにお金を持って来ているため、遠慮なく食べて欲しい。
そう言われたため風花は「あたし、食う方だよ」おずおず聞き返す。それは知っている。だから多めに持ってきたのだ。大切なことなので二度言うが多めにお金を持ってきたのだ。強調されたため、やや量を抑えながらも遠慮なく昼飯を奢ってもらった。
食べ終わる頃には四人が四人とも胸焼けがするとゲンナリ。
金額よりも食べる量に四人は悲鳴を上げていた。どれだけ風花がハンバーガーその他等々を平らげたのかはご想像にお任せしよう。
その後は四人に引き連れられ、ゲームセンターにやって来た。
風花自身ゲームセンターというものに殆ど来た事が無かったため(興味はあったのだが行く機会が無かった)、店内に入って仰天。あまりのBGMの煩さに耳を塞ぎたくなった。しかも妙に暑いような。空気が悪い気もする。
なんて煩さだと目を削ぐ風花の背を押し、あかりは何かしてみたいものはないかと悪魔に尋ねる。
このゲームセンターは三階建で普通のゲームセンターよりも大きなゲームセンター。UFOキャッチャーの種類も豊富だし、コインゲームもあるし、ポップンやカーゲーム、プリクラ、何でも揃っているのだと説明してくれる。
ただし三階は上がりたくない、そう付け足して。「なんで?」風花が理由を尋ねると、「不良が溜まってるんですよ」あかりは微苦笑した。
「地元で凄く有名な不良達が溜まってるんです。確かリーダーの名前が荒川 庸一(あらかわ よういち)って高校生不良なんですけど。目を付けられたら最後、お仲間と一緒にフルボッコにされるとか。でも顔はイケてるらしいんです」
いつも三階フロアを陣取っている傍迷惑な不良達なのだと説明を聞き、風花はふーんと相槌を打って二階へ続くエスカレータに目を向けた。
「んじゃ、いっちょあたしがシメてこようか? そいつ等人間なんだろ? あたしなら勝てる!」
「ふ、風花さん。トレーニングで手腕が上がったんでしょ? 勝てるどころか、あの世行きにさせそうで恐いんですけど! 不良とは言え、相手は高校生なんですから!」
ブンブン首を横に振り、あかりはおとなしく三階には上がらないでおこうと制す。
冬斗と手毬もあかりの意見に賛同。風花が手を出した最後、向こうは再起不能どころか一瞬で冥界に行ってしまうだろう。
残念だと風花は肩を落とす。ちょっと、ほんのちょっとだけ不良をシメたかった。自分の相手をしてもらいたかった。
悪魔のぼやきに三人は引き攣り笑い。真面目に勘弁して欲しい。彼女のパンチは壁をも打ち砕くのだから。
「って。あれ?」風花は雪之介の姿が見えないことに気付いた。
彼は何処に行ったのだ? 三人に質問すると、「札崩しに行ったぜ」冬斗が両替機のある方向を親指で指した。
自分が楽しむは勿論、風花のために逸早く小銭を作りに行ったのだろう。
こういう時、一番気が利くのは雪之介だ。人をよく見ているし、よく気遣っている。それは彼自身が妖怪だからだろう。周囲を常に観察し、自分の正体がばれぬよう気を遣っている。それが性格に出ているのだ。
風花は両替をしに行った雪之介のもとに行くことにした。彼を交えて、ゲーセンで何をしようか決めたい。
両替気は何処にあるのだと冬斗に尋ねる。
入り口から一番近い両替機に向かった筈、彼はそう説明しながら誘導するように先頭を歩いた。と、彼の足が止まる。どうしたのだと風花が視線を上げれば、そこには両替機の前で高校生不良らしき四人組に絡まれている雪之介の姿。
妖怪は弱ったなと眉をハの字に下げ、ズレ落ちる眼鏡を押し上げていた。
「あのー。僕、持ち合わせ少ないんで勘弁して下さりません? お金を出せと言われても困るんですよ」
不良の片方に胸倉を掴まれている雪之介はカツアゲにあっているようだ。
の、わり、落ち着いているのは彼自身が妖怪だからだろう。その気になれば相手を一瞬で凍らせてしまえるのだから。
しかし雪之介が公衆の場でそれをするとは思えない。彼は妖怪の能力をしっかりと理解している上に身分を弁えている。
人間には優しい性格だから、最悪黙って殴られる可能性も。
「雪之介!」冬斗が焦りながら親友の名を呼べば、「あ、ふーちゃん」雪之介は能天気に此方に向かって手をあげた。
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