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08-09


 
 彼等は情報収集のプロ。聖界の下した命を忠実に守り、要求以上に事細かな情報を仕入れてくる。
 
 情報は非常に重要だ。
 仮に魔界と戦争を起こした時、情報は現時点の状況を確実に把握するのに必要であり、敵陣地の位置や部隊配置、敵戦力の規模、聖界各地域の守備、魔界各地域の攻撃態勢を左右するなど重要な活動なのだから。 
 
 どのような情報でも必ず仕入れてくる。それが聖斥侯隊。
 つまり彼等は僕等が滞在しているであろう些細な情報を仕入れて追って来たんだ。
 
「不味いぞ。このままでは」

 息を呑むネイリーに対し風花は余裕綽々で握り拳を作った。

「んじゃ戦おう! 相手は二人だし!」

 しかしネイリーは駄目だと首を振り、風花の手を取って駆け出した。なんで戦わないのかと不満気の風花にネイリーは説明を加える。
 あくまで聖斥侯隊は情報収集を主としている。戦闘も勿論出来るし、四天守護家の下で働いているだけ戦闘力も高いのだが、情報収集を主にして動いている彼等はより戦闘力の高い聖保安部隊を応援に呼ぶのだ。
 
 基本的に聖斥侯隊は小部隊で動く。戦闘隊向けではないため、戦闘不足だと分かれば躊躇いなく仲間を呼ぶ。


「特に敵が魔界人の場合、見つけるのは聖斥侯隊。始末は聖保安部隊と型が決まっている。つまり安易に戦いに乗り出せば」

「聖保安部隊がやって来るってこと?」


 恐る恐る風花が自分の中の嫌な予想をネイリーにぶつける。
 彼はにこっと笑顔。しかし目がちっとも笑っていなかった。


「しかも二、三部隊でやって来るだろうさ。僕等を抹消するために」

「にっ、二、三部隊?!」

 
 冗談じゃない! そんなのと相手をしていたらタダでは済まないではないか!
 
 素っ頓狂な声を上げる風花に、だから逃げるしか術はないのだとネイリーは失笑した。
 目を動かせば、鐘楼から民家の屋根に飛び移る聖斥侯隊。男女のペアなのだが女の方が指を銜え、ピーッと甲高い音を鳴らしていた。指笛に二人はビクリと肩を竦める。
 まさか仲間を呼んだのではないだろうか。ああ、そんなことされれば厄介なこと極まりない!
 
 風花は鞄から魔具を取り出した。それは日本でも使ったフラッシュボムというスティック状の魔具。風花は戦闘回避のために使えるだろうと幾つか持参していたのだ。
 
 「とりゃ!」風花は頭上にフラッシュボムを投げる。

 スティック状の棒から目の眩むような強い閃光が放たれた。地上にいた通行人は勿論、自分達を追い駆けていた聖斥候隊は不意打ちに足を止めている。更に大きな爆音が付近に轟き、噴出された煙が視界を奪ったため、地上にいた人間達はパニックになり悲鳴や怒号、驚愕に泣声が暮れた空いっぱい響き渡った。

 逃げるならば今しかない。
 二人は混乱する人間達に心中で詫びながら、身を低くし、聖斥侯隊に見つからぬようその場から逃げ出した。




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