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08-12



『自信はないけど、カゲぽん、頑張って探したんだじぇ』
 
 弱々しい発言に風花は笑声を漏らす。

「馬鹿、自信持てよ。あんたは“何でも屋”をいつも負かしてきた影鬼だろ?」

 ニッと笑いかければ、カゲぽんもニッと笑顔で返す。スンと鼻を鳴らし、自信を持って此処にあると青小鬼は小さくはにかんだ。


 ガサッ―。

 茂みが小さく揺れる。
 
 
 ハッと周囲を見渡せば、向こうの茂みから天使が。周囲の木の枝や反対側の茂みの向こうにも天使がいる。
 どうやら囲まれたようだ。気配からして12、3いるかいないか。聖斥侯隊と聖保安部隊の両方がいるようだ。花や翼のバッチを付けている天使がチラホラ見受けられる。中には日本で奇襲を掛けてきた八剣隊長率いる聖保安部隊も。

 『あくじょ…』恐い恐いとカゲぽんは風花の足にしがみ付いた。大丈夫だと小鬼を宥めながらも、しつこい追っかけだと風花は舌打ちを鳴らす。
 「ヤなファンだねぇ」おどけ口調で向こうの天使達を鼻で笑う。聖斥侯隊であろう女天使が風花にガンを飛ばした。


「もう逃げられない。その命、大人しく渡してもらう」
 
「はい、そーですか。どーぞ。で、渡す馬鹿なんていやしないよ。あんた、頭が平和ボケしてるだろ」
 

 挑発に女天使の片眉がつり上がる。彼女のソードを持つ手に力が込められた。
 
 今にも飛び掛ってきそうな女天使を制したのは同じく聖斥侯隊の男天使。男も女も麓町で自分達を追い駆け回してくれた奴等だ。男は隊長のようで明星(あかぼし)隊長と呼ばれ、女は副隊長らしく芹(せり)副隊長と呼ばれていた。

 冷静を欠けば向こうの思うつぼだと指摘され、「申し訳ございません」芹は失態だとばかりに頭(こうべ)垂れる。そんな芹を風花は鼻でまた一つ笑うと、余裕綽々にどうしようかと口角をつり上げる。


「このままあんた達をぶっ飛ばしてもいいんだけどねぇ。ちょっち先を急いでたりするんだよねぇ。な、ネイリー」

「ウム。僕等の美を求め、追い駆けてきてくれるのは嬉しいが時間が惜しいのだよ」


「虚勢を張るのは構わないが、それが最後の言葉となるかもしれんぞ?」


 明星がサーベルを構える。

 戯言は聞くつもりも無いらしい。だからって命乞いをしたところで見逃してくれる筈もないだろうに。次ぎ次ぎに武器を構えてくる天使達に風花は口笛を吹き、「ネイリー。カゲぽん。傍から離れるな!」次の瞬間素早く大鎌を構え振り下ろした。

 振り下ろした場所はカゲぽんがとば口があると指した木の根元。
 緩やかなカーブを描いている銀の刃は深く木の根元、ではなく空間に突き刺さる。グッと風花が力を込めると空間は瞬く間に脆くひび割れ、周囲を呑み込むほどの亀裂が走った。

 「何をッ」聖保安第三隊隊部八剣の問い掛けに、風花は答える余裕はない。やばいやばいと連呼し、吸血鬼に救いの目を向ける。
 それは何故か。このままでは自分達は勿論、追っ手である天使達まで空間の向こうに飛んでしまうからだ。しかし何をしても後の祭り。空間は裂け、凄まじい吸引でその場にいた者達全員を呑み込んだ。
 
 悲鳴を上げながら風花はネイリー達と共に空間に落ちた。
 



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