03-07
「リーダーを抜かしても榊原は楠本の舎兄だった。舎兄として、兄分として、自分の起こした行動で舎弟や弟分の敗北を背負わせるのってカッコわりぃ。だから榊原は楠本から姿を消した。そんな気がする」
それが幸か不幸かは現状を見りゃ分かるだろうけど。
皮肉を零すヨウは複雑そうにポテトの束を口に入れていた。俺もまた複雑な気持ちだ。仮にヨウがそんなことをしたと仮定し、舎弟視点から立ってしてみれば、「ンな身勝手な話あーりますか!」って罵りたいところ。
だけど、俺が榊原の立場だったら…、兄分視点だと俺はどうするんだろう。
キヨタに視線を流す。ジューっとストローでシェイクを吸っている弟分と視線が合った。
……例えば、俺のせいでキヨタにまで汚名が飛びそうだったら、俺はどうするだろう? キヨタと兄弟分を白紙にしちまうのかな。俺の取った行動でキヨタが汚名を被せられるのはイヤだよな。
でもでもでも、キヨタの性格を考えると…、「俺っち。そんなことされたら泣くっスよ」ははっ、ですよねぇ。むっずかしいなこの問題。
「ンー、そんなことされたら、オレは…、泣くよりも先に迷わず楠本と同じになりそう」
ふっと沈黙を切り裂いたのはモト。
「なんとなく楠本の気持ち、オレ、分かる気がする。だってオレもさ。もしもヨウさんが誰かにヤられて、消えちまうようなことがあれば、楠本と同じことをすると思うから。例えばそれが間違いだとしても、間違いだと分かっていても、オレは復讐に走るよきっと。居場所をくれた人なら尚更だ」
ジューッとシェイクをストローで吸うモトは、「例え兄分が悪いとしても」オレは兄分を追い詰めた相手を怨むと極論を出した。
他のチームに行くなんてさらさら思わないだろうなぁ、独白に近い台詞を零してアップルパイにかぶりつく。
「楠本って奴、問題児でチームを転々としてたんだろ? ようやく居場所を見つけたのに…、舎兄が消えたら、そりゃ絶望するだろうなぁ。オレもヨウさんに居場所を貰った口だからなんとなく気持ちは分かる。あの時、弟分という名のパシリを抜け出せたのはヨウさんのおかげだし」
……、誰が誰のパシリだって?
瞠目する俺に「あれ。話してなかったか?」オレ、元々別の不良の弟分だったんだぞ、っと自分を指差すモト。
まじょで? 初耳なんだけどっ…、だってモトがヨウ以外の弟分だったとか今までの姿から見ても想像できないし。「すべてはヨウさんのおかげなんだ。ヨウさんがいたから」今のオレがいるんだ、恍惚に目を輝かせるモト。
またあの話が始まりそうだとウンザリ顔のキヨタを余所に、若干ヨウは居心地悪そうに引き攣り笑い。
でも俺は初耳だから聞かせてもらった。
モトがなんでヨウを慕い始めたのかを。
曰く、中学に進学したモトは不運にも小学校時代の見知り、一個上の先輩に声を掛けられ、無理やり弟分にさせられたそうな。
チョー嫌だったらしいんだけど、力的にもその先輩には逆らえず、嫌々弟分になったとか。でもそいつ、なっかなかの酷い奴で、モトを弟分という名のパシリにばっか使ってたそうな。ジュースを買って来させたり、コンビニでエッチ本買わされたり、命令されたり、なんだったり。
その内、仲間内の先輩からも顎で使われるようになり、中学の学校生活を半分以上諦め掛けていたそうな。
早く卒業したいなーっと思っていたある日、モトの兄分がとある不良に喧嘩を売った。それがヨウ。
その兄分と同じ学年にいたヨウや日賀野の存在がすこぶる気に食わなかったらしいんだけど、特にヨウの存在が気に食わなかったそうな。
だから喧嘩を売ったらしい。しかもご褒美付きで。
んで、そのご褒美ってのが勝者が敗者の持ち物を取るって簡単なもの。卑怯な手を使ってまでヨウに勝負を挑んだ結果、兄分は情けなく負けてしまい、アッサリと白旗を挙げたとか。一応弟分のモトは内心呆れつつも、兄分に大丈夫かと声を掛け、飲み物でも買って来ようかと介抱。
一方で何を取ろうかなと、ウッキウキのヨウはあれやこれや相手の持ち物を聞いて、何が欲しいだろうと考えた結果。
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