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03-17


 

 あらかた情報を記入し終わり、胡坐を掻いて広げた地図を眺めていると、「ケイ」仲間に声を掛けられた。香水の匂いからしてハジメだと分かる。
 

 向かい側で胡坐を掻くハジメは、俺が何に対して考え込んでいるのか見越したようだ。
 「どっちが上だい?」問い掛けに、「喧嘩に対しては向こうだ」参ったと肩を竦めて壁に凭れた。「そうか」荒川チームのお得意戦術のひとつが使えないんだね、ハジメの苦笑に俺も苦笑。
  
 間を置いて、俺は地図を畳むとリーダーに報告してくると腰を上げた。
 「ハジメも一緒に来て欲しい」説明できないところをフォローしてくれ、俺の誘いに了解だとハジメ。ゆっくりと腰を上げて、俺について来てくれる。向かうはビリヤード台で副リーダーと話し合っている我等がリーダーの下。


 その際、俺は蓮さん、桔平さんに声を掛けた。

 
 蓮さんとは約束していたし、同じ舎弟の桔平さんにもこの状況は聞いて欲しかった。後は荒川チームの副リーダー、頭脳派に回っている響子さん、ワタルさんにも声掛け。残りのメンバーは後から俺の意見を聞いてもらうことにする。まずは頭脳派やリーダー達に意見を聞いて欲しかったし、何かあれば意見して欲しかったから。
 メンバーを集めた俺はやや緊張しつつ(こういった皆の前で意見を出すって未だに慣れてない)、ビリヤード台で地図を広げて早速語り部に立った。
 
「楠本の出現場所を地図に書き出してみた。あいつ、大抵人気の無い場所ばっかりに出現してるんだけど…、この場所、全部奇襲を仕掛けやすいところなんだ」

「奇襲を仕掛けやすいところ?」
 
 首を傾げるヨウに、「例えばさ」俺は片人差し指を立てて、想像してみて欲しいとリーダーに視線を留める。
 
「俺とヨウが喧嘩を売ろうと奇襲に乗り出した。場所は路地裏にしようってことになったんだけど…、その際、一本道の路地裏と、入り組んだ路地裏、お前ならどっちを選ぶ?」

「そりゃ入り組んだ路地裏じゃね? 奇襲を仕掛けるとしたら、そっちの方が有利だしな。奇襲にも種類はあると思うが、基本奇襲戦法は相手にバレねぇように行動するのが鉄則だ。バレたら奇襲じゃねえし」

「ご名答。楠本もそれを踏んで、奇襲の仕掛けやすい土地を選んでいる」
 
 それだけじゃない。
 奇襲を仕掛けて、仮に失敗してもトンズラできるよう近場に抜け道がある場所を選択している。これってどういうことか分かるか? 奴は並々ならぬ優れた土地勘を持っているってことだ。奇襲戦法しつつ、足取りや情報がなっかなか掴めないってことは、それだけ相手を撒く地形図を頭に叩き込んでいるということ。
 話に聞けば楠本はフリー時代、街を転々としていたらしいから、その時に土地勘を伸ばしていったんだと思う。

「あ、確かに楠本、地元にはめっちゃ詳しかったな。涼、蓮、あいつって知らない場所なんてないってくらい、地元に詳しかったよな?」

 桔平さんが思い出したようにポンッと手を叩く。
 同調する二人は道に関しては大抵のことに答えられたよな、と相槌を打った。なるほどね、頷くヨウだけど、「けどこれ。問題あるのか?」腕を組んで素朴な疑問をぶつけてきた。
  
「土地勘に関して言えば、こっちだって有利じゃねえか。ケイがいるんだし」

「それが不利なんだよ。俺の土地勘と楠本の土地勘は同じようで相反してるんだ」

「違う? どこが?」
 

「ねえヨウ、なんでケイが土地勘が優れてると思う?」


 と、ここで口を挟んできたのはハジメ。
 此処で素朴な疑問返しとしてなんで俺が土地勘が優れているのかを問う。「なんでって」地元の土地に詳しいからじゃねえか、目的地を最短ルートで行ってくれるし、と訝しげに返答。
 
 まったくもってそのとおりだと、ハジメは頷いた。
 
「ケイも楠本同様に土地勘に優れている。おかげで荒川チームの戦術の特徴のひとつに、地を攻めるって戦法があるくらいだ。君と肩を並べるヤマトもこの地を攻める戦術を懸念したし、“エリア戦争”も“五十嵐戦”も地を攻めて勝利を得た面が大きいわけだけど…。今回ばっかりはこの戦術が使えそうにないんだ」

「はあ? なんで」

 意味不明だぞ、もっと噛み砕いて説明しろとのたまうヨウにワタルさんが指を鳴らして頭上に豆電球を明滅させた。
 「俺サマターイム」なんて、あらあら、喧嘩の時に現れるワタルさんが出てきちまった。口調がやや高飛車だ。




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