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例えばの話


   

 突然だけど我がチームのリーダーを紹介しよう。
 
 我がチームのリーダーの名前は荒川庸一。性別は男で血液型はA型、現在高2で3月のホワイトデーが誕生日。うお座だ。
 性格は超直球で曲がったことが大嫌い。思いつき行動が激しいものの(俺はそれで何度泣かされたことか)義理と人情を大事にする、なんとも不良にしては憎い性格を持っている。現代の不良には珍しい性格をしているかもしれない。昭和の不良かってツッコまれたら、ああそうかもなって納得するような性格の持ち主だ。

 男からしてみればチョー羨むプラス、嫉妬の過中に放られるようなグッジョブ容姿を持っていて、まさしく奴を四文字で表すと『イケメン』。
 気取ったようにキンパに赤メッシュ入れちゃってっ…、どんだけ女の子にモテたいんだっ! ド派手好きめっ、ええいイケメン爆発しろー! と、俺は何度思ったことだろう。……そう思うのは平凡男子として当然の嫉妬心である。あしからず。

 話は戻し、リーダーは地元で超有名人。
 イケメンだからではなく、持ち前の腕っ節と数々の功績という名の喧嘩を仕切り、勝利し、その名を地元を刻んできたからだ。裏を返せば喧嘩っ早い喧嘩スキーさん。正々堂々と喧嘩をすることが大好きで、飛び火が舎弟に飛んできたり来なかったり。俺は毎度苦労を背負ったり背負わなかったり。

 時にチームを巻き込むこともある、喧嘩好きな我等がリーダー。

 そのリーダーが今、喧嘩に対して溜息をついていた。明日は雨か雪か嵐か台風か、とにもかくにも喧嘩に対して溜息。できることなら喧嘩をしたくないとまで弱音を吐くほど、今度の喧嘩には気鬱を抱いている真っ最中だった。

 リーダーを知る奴等なら、驚き仰天だぞ、この一面。
 

「はぁああ…、どーすりゃいいんだろうな。この喧嘩、できることなら避けたいんだが、無理だろうな」
 

 なーんて言って頭部を掻いているヨウの弱音に、どうしたんだよリーダー! 喧嘩に負けるとでも思ってるのか! なーんて間違ったって思わない。


「無理だと思うよ。避けられるなら、最初から浅倉さんが避けるよう努力してるだろうし」

 
 嗚呼、俺自身も今回の喧嘩は避けたいところだ。
 喧嘩が苦手どうのこうのじゃなくて、勝敗どうのこうのでもなくって、喧嘩の内容がな…、最初から後味の悪いものだって目に見えてるからなぁ。浅倉さん達の願い申し出だから協力に承諾はしたけど、勝っても負けても後味が悪いものだと分かっている。
 
 だからこそ気鬱なんだ。
 
 今回の喧嘩は“エリア戦争”の延長戦だしな…、あの喧嘩もぬめぬめしたような後味の悪い喧嘩だったし。また元浅倉チームと衝突しないといけないなんて、しかも今回は和解の「わ」もなさそうだし。寧ろ向こうはガンガン復讐しようぜモードだし。どーなるんだろうな、延長戦。

 机上に頬杖をつき、俺達は揃って溜息をつく。
 「ヤになっちゃうわね庸一さん」俺のぼやきに、「ほんとね圭太さん」ヨウがノリに乗ってくれる。ほんと、マジで嫌だ。今回の喧嘩…っ、蓮さんのことを想うと尚更「お前等、真面目に反省文考えてないだろ」
 
 
 ………。
 

 シケモードエンド。
 はい、現実に思考チェーンジ。
 
 顔を上げればパイプ椅子に座った俺等の担任が青筋を立てながら、ノート点検をしていた手を止めてこっちを睨んでいた。教卓の上でコツコツと赤ペンの頭を叩いている前橋は、俺等と同じように頬杖をついて今、何行書けたかと質問を飛ばしてくる。
 俺は原稿用紙に目を落として愛想笑い、「三行半です」。
 ヨウも原稿用紙に目を落として仏頂面、「書き出し三文字」。

 ははっ、兄貴最強過ぎっ…、もう30分経ってるのに三文字。俺よりひでぇじゃんかよ。ちなみに三文字って何を…、反省文? これタイトルじゃねえかよ。それ書き出しって言わない。




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あきゅろす。
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