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一生のレッテル


 

「―――…ワリィワリィ。気ィ利かせてそっとしておくんだったな。おりゃあ、そういうことに関しちゃ疎くてな。堪忍してくれ。荒川の舎弟。嬢ちゃん。けど、こっちは単にあっまいイッチャイッチャをしてるんだなーって思っただけだぞ? それ以上のことは思っていないから安心してくれ。なんなら、席を外して裏手で続きをしてくれても」

「浅倉…、こいつ等のやり取りが激甘なのは認めるが、それ以上ケイ達に何も言わないでやってくれ。こいつ等、そういう系の冗談は受け流しきれねぇんだ。」

 
 外出から戻って来たヨウのフォローのおかげで俺とココロは爆死せずに済んだらしい(でも余計な事を付け足された気がするけど!)。

 だけど既に多大な羞恥は噛み締めちまってるもんだから、各々身を小さくして俺達は右端と左端に避難している。
 からかわれないためにお互い、いっちゃん距離を置いている状況だ。こんなことしたら逆効果でからかいの的かもしれないけど、…しょ、しょうがないじゃないか。今、一緒に肩を並べたら俺達、必要以上に意識しちまって話し合いどころじゃなくなるんだから。

 初々しいとからかわれようがなんだろうが、俺達自身のために距離を置いておくのが一番だ。
 余所では響子さんがこめかみに手を当てて溜息をついているけど(響子さん「二人を茶化したら恋愛模様がややこしくなるだろうが」)、知らんぷり。とにもかくにもさっきのことを忘れようと俺は躍起になっていた。ココロも同じ気持ちを抱いているに違いない。
 

 悪い悪いと豪快に笑っている浅倉さんに吐息をついて、「んで?」どうしたんだ、リーダーが早速話題を切り出した。
 副リーダーや舎弟達を連れて此処に来るなんて珍しいじゃないか。まさか、お遊びで来たってこともないだろうし…、何か遭ったのか? 一変して真顔になるヨウにつられて、浅倉さんも真顔になって頷く。

 向こうのリーダーは単刀直入に告げた、「手を貸して欲しい」と。
 曰く、自分達の支配エリア『廃墟の住処』が荒らされ、仲間が奇襲を掛けられ、傷付いている日々を送っているとか。奇襲なんて卑怯だな、真正面から挑んでくればいいのに。
 
 とはいえ、浅倉のチームは俺達荒川チームと手を結んでいる。
 地元の不良で“荒川 庸一”の名前を知らない輩はそう少ない。地元を支配下にしていたあの“五十嵐 竜也”を二度も破った不良のひとりだ。地元の不良達は“荒川 庸一”同等の実力を持つ“日賀野 大和”を敵に回したくない筈。寧ろ味方にしたいチームに名が挙がると思う。

 実際、ヨウの下に何チームか協定の申し出があった。


 だけどヨウは今のところ、浅倉チームとしか手を結んでいない。
 日賀野達と停戦協定は結んでるけど、まあ、結んでるだけで手の貸し借りは五十嵐の事件以降一度たりとも行われていないんだ。

 
 あいつはリーダーとしてレベルが格段に上がっている。
 並行してチームの見る目が養われていた。一年前のヨウだったら、取り敢えず面白そうだからって理由だけでポンポン手を結んでいったと思うけど、今はチームに利害があるかどうかを真面目に考え、俺達チームメートの身に危険がありそうなチームは容赦なく申し出を切り捨てる。

 反発があって喧嘩もちょいちょいあったけど、それでもヨウは容易にチーム協定を結ぶことはなかった。
 いつか、ヨウが俺に教えてくれたことがある。チームやチームメートは自分にとって最大の居場所、安息の居場所だと。
 
 前々から仲間思いだったヨウは“五十嵐の一件”以来、誰よりもチームを大事に想うようになった。人三倍仲間のために突っ走る男になったんだ。
 成長を嬉しく思う反面、俺は懸念している。あいつは元々“過ぎる”面がある。仲間への想いが三倍増しになったってことは、短所である“過ぎる”面も三倍増しになったってこと。
 
 チームやチームメートに何かあった時、いっちゃん最初に崩れそうな気がするんだ。
 表向きじゃリーダーって役目を担っているから、虚勢を張るだろうけど…、あいつも強くはない。弱い面を知ってるからこそ、俺は密かに憂慮を抱いている。あいつの“過ぎる”面に。

 話は戻して、浅倉チームは自分達の縄張りを荒らされて困っているそうだ。
 いや、単に荒らしてくるだけなら自分達だけで事を片付けたに違いない。浅倉チームが俺達に手を貸して欲しいと頼んできたのには理由がある。
  



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