02-19
内面ではいっら〜としながらも表向きじゃ、「こんにちは」社交辞令として爽やかに、爽やかに、俺なりに爽やかに挨拶をしてやった。ははっ、地味くんなんで爽やかオーラ、ちっとも出せていないかもしれなせんが、これでも俺なりの大人の振る舞いをした方ですよ、はい。
小憎たらしいことに「こんちは」爽やかに挨拶を返してくる五反田は(イケメンのヨユーって奴ですか!)、若松に彼氏がいたのかっとニコニコ笑顔で彼女を見やる。
「若松に彼氏がいたのか。でも可愛いからいてもおかしくはないと思ってたよ」
「五反田さん、からかうのお上手ですね」
全然ココロはお相手にしてない様子。
まあ、口先だけと思っているんだろう。でも五反田、次の瞬間爆弾発言をしてきた。
「残念だな。若松に彼氏がいるなんて。フリーなら狙おうって思ってたのに。若松ってちょこちょこしてるからさ、なんか放っておけないって思ってたんだけど。さっきも自転車を並べ直す時、ドジ踏んで転びそうになっただろ? 俺が助けなかったら若松、怪我してたし? な?」
!!!
絶句する俺にニタリ顔を作る五反田の腹黒さを垣間見た気がする。
おいお前、爽やかオーラに腹黒が交じってるとはどーゆーことだい。女子には見せない、野郎にしか見せる、悪魔な一面を俺に見せ付けやがってっ、ナニ、お前本当にココロ狙ってるカンジ? それともからかってるだけ?
どっちにしろ、お前は今この瞬間を持って俺のブラックリストに載ったんだけど。
「てか若松が不良とお付き合いなんて似合わないな」ニッコニコとあくまで爽やかオーラを出す五反田に、「あははっ、すみません不良で」でもなんちゃって不良なんですけどね俺、こっちもあくまで爽やかに言葉を返してやった。
かち合う視線には青い火花が飛んだり飛ばなかったり。嗚呼ムカつく、お前、超ムカつくんだけど。
「五反田さんって女子の皆さんによくそう言ってますよね。そういうの、好きな人に言わないと…、本気にしてもらえないと思います」
ココロはちょっと強気に発言し、「それにケイさんは不良じゃなくて」私のヒーローなんです、花咲く笑顔でノロケてくれた。
これには五反田呆然、俺赤面、ココロは照れ照れ。この三つ巴図をなんと称せばいいのやら、とにかく三者三様の反応をするしかない。ノロケを口にしてくれたココロは、ちょいと気恥ずかしくなったのか行きましょうっと俺に声を掛けて来る。
ぎこちなく返事をする俺は、ココロをチャリの後ろに乗せて出発進行。
その際、ココロは五反田に「また明日」と手を振っていた。五反田がどういう反応をしていたのかは知らないけど、俺はノロケのせいで始終赤面しっ放しだった。くそう、この勝負、漁夫の利でココロの完全勝利だよ畜生。
「―――…ケイさん、ピアスあけたんですね。制服着崩してましたし、正門で見掛た時、雰囲気が違うなって思ったんですよ。……でもずるいです。同じ地味ちゃんとして嫉妬します。自分だけ、カッコよくなろうとしちゃって。って、どうしたんです? さっきからダンマリですけど」
どこか具合でも悪いんですか?
顔を覗き込んでくる彼女に、「あ。危ないから!」運転中だと俺は注意を促す。むくれる彼女は上体を起こして、しっかりと俺の肩を握りなおした。
チャリの後ろでブーブー文句垂れている彼女だけど、嗚呼、察して下さいココロさん、俺は今、羞恥で死にそうなんです。貴方のノロケ発言で死にそうなんです。
まさかクラスメート相手にあんなことを言ってくれると思わなかったんだよ。五反田って野郎がココロと同じ風紀委員ってのが癪だけどさ、その風紀委員にズバッとノロケてくれるなんて、彼氏としては最高だよ、本当にもう。
「あのさココロ」やっと口を開くことに成功した俺は、赤に変わった信号前でブレーキを掛けて、おずおずと吐露。
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