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02-18


  

 そうして待っていると、正門向こう、校舎の昇降口付近で人影がひとつ、ふたつ。


 必死にぺこぺこ頭を下げているのは待ち望んだ彼女。もう一人はなんだか妙に爽やかオーラを発している…、見るからにクラスの中心人物であろう日向男子がそこにはいた。なんで日向男子だと分かるのか、そりゃあ発しているオーラでさ、なんとなーく分かるんだよ。
 俺、これでも地味人生貫いて16年、今年で17年目に突入しようとしているんだから? 匂いでこいつと俺は違う類って把握できちまう。つまりあいつは俺とは違う人種の人間ってことだ。

 わりかし鼻筋が通ってイケた顔をしている男子生徒は、ぺこぺこ謝罪しているココロを可笑しそうに笑い、行動を止めていた。
 だけどその止め方にッ、俺、絶句のカチンコチン。

 な、なして…、あの野郎は彼女の頭に手を置いて、馴れ馴れしくも撫でていやがるんですか?!
 
 いや、待て落ち着け、向こうはスキンシップ好きの人間かもしれない。
 下心があってココロの頭を撫でているとか、即疑念を抱くとか俺、論外! 嫉妬乙だぞ俺っ、…いやでもっ、普通に考えて女の子の頭を撫でるとかないだろっ! それこそ論外だろ! なんでココロも嫌がらないっ、うわぁあああまた問題発生かッ?! も、俺の人生問題だらけじゃねえか畜生! お先真っ暗、悩める人生なんだぜっ。

 しかも向こうの方がカックイイからこれまた、盛大に嫉妬するんだよ!
 へーんだっ、なんだいイケメンなんてっ、チッキショウのバカヤロウだーい! 凡人がいてこそ、イケメンは目立つんだからな! 俺等ジミニャーノに感謝しろよっ、俺等がいてこそお前等は輝けてるんだからな! ……へーんだっ、へーんだい! 負け惜しみだよバーカ!

 機嫌が急降下していく中、二人が正門に向かって歩いて来た。
 和気藹々とした会話が聞こえてくるけど、内容までは聞き取れない。あーくそっ、不機嫌になるな。余裕のない男は嫌われちまうぞ。向こうはただの友達かもしれないだろ。荒むんじゃないぞ。自己暗示を掛けつつも、残念ガキんちょの俺は、ぶすくれてハンドルに肘を置き、頬杖をついていた。

 笑声が鼓膜を振動する。なあに話してあんチクショウと笑ってるんだよ、ココロの奴。
 

「あっ! ケイさん!」


 と、ここでようやく彼女が俺の存在に気付いたらしい。気付くの遅いんだけど、ココロさーん。
 チラッと正門に流し目、そこにはちょこちょこっと俺の下に駆けて来るココロの姿。それはそれは嬉しそうにはにかんできた。これだけで、あ、もういっかな、とか思う現金な俺がいる。
 だって拗ねてるより、彼女と楽しく会話した方がいいじゃんか。他校同士なんだから一緒に過ごす時間は貴重だし。
 
 ココロは迎えに来てくれたことに喜び、次いで俺の身形を見るなり、「えっ?」ケイさんが制服着崩してるっ…、しかもピアスっ、オロオロと挙動不審になって赤面してきた。
 
 あ、そういや制服、このままで来ちまったな。
 それにピアスは無理やりあけられたんだけど…、そう彼女に伝えると、ココロは小さく唸って唇を尖らせる。で、モゴモゴなんか言ってくれるんだけど声が小さい。「ワンモア」俺は耳を近付けてもう一度言ってくれるように頼む。そしたらココロ、「反則です」と小声も小声で申し上げてくれた。
 遠回し褒めてくれてるんだって気付いたもんだから、俺も頬を紅潮させちまう。その言葉こそ反則なんだけどっ、ああもう嫉妬してた俺が馬鹿みてぇ!
 
 素直に受け止められない俺は、誤魔化すように「ほら貸して」彼女から通学鞄を取ってカゴに入れる。
 入れ替わりに「ほい」、レモンティーを手渡し、俺の奢りだと一笑した。
 
「昨日、来れなかったからさ、お詫びのしるし」

 呆けていた彼女は、見る見る笑顔になった。はにかんで、「ケイさんってキザなことしますね」茶化してくる。煩いな、カッコつけたがるのは男の性分だって。
 完全恋人オーラを醸し出していると、「若松って彼氏いたの?」第三者の素っ頓狂な声。人の彼女を馴れ馴れしく触っていた、キャツである。
 

 超爽やかオーラを発してくる野郎の名前は五反田 輝(ごたんだ ひかる)。

 ココロのクラスメートで彼女と同じ風紀委員を担当している日向男子らしく、クラスの人気者だとか。サッカー部に所属してるとか典型的な日向男子ですね、ええもう羨ましいくらいカッコイイ面しやがってっ…、見るからにスポーツ系男子ってカンジがしますよ。
 



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あきゅろす。
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