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02-17


 

「俺っち、ケイさんは着崩した方がカッケーと思いますっス!」


 ……、それは俺のために言ってくれているのか? それとも向こうの剣幕に負けちまったのか? どっちにしろお前は兄分より親友を取るんだなコノヤロウ。なんだか愛の重さを痛感した気分でい。
 
 「ほらみろ」キヨタもそう言ってるじゃないか、ビシッと指差してくるモトはこれからはそれでいろよっと地団太を踏んだ。こっちの方が断然ヨウの舎弟を名乗るに相応しい恰好だと吠えに吠え、闘争心を燃やしやがった。
 しかも…、もしもまたあのダッサイ恰好をオレの前でしてみろ、今度はオレが直々に右耳にピアスホール作ってやる! なーんて脅してきやがったよ。

 こ、怖ッ…、兄分に対する敬愛っ、マジ怖い恐ろしい凄まじい。もはや俺のためなのかどうかが分からない。
 フンッと鼻を鳴らしているモトをブルブルで観察していると、「モトは」純にケイさんのことを想ってるんっすよ、キヨタがこっそり耳打ちしてきた。いや嘘だろ、あんな脅しを掛けてくるのに。だけどキヨタは失笑交じりに本当だと零す。
 

「ケイさん、悩んでたの気付いて怒ってましたもん。あいつ、よくケイさん見てるっすから」

 
 ちょっち寂しそうに笑うキヨタ。
 俺はちょっと間を置いて「お前もな」ポンッと頭に手を置いて微笑してやる。

 キョトン顔を作るキヨタは軽く俺と視線を合わせてきた。弟分にお前もよく俺を見てくれてるだろ、助けられてる事が多いよ、言葉を手向ける。
 途端に照れ笑いするキヨタは頬を掻いて、「そうっスかね」あどけない顔を作ってみせた。「そうだよ」んでもって俺も意外と弟分を見てるんだからな、意味深に紡いで俺は“いつでも待っているから”と、キヨタの頭をクシャクシャに撫でた。

 間の抜けた声を出すキヨタはどういう意味ですかっと、ぱちぱち瞬きをして俺に意味を教えて欲しいと纏わりついてくる。 
 どういう意味ってそりゃあ、お前が抱えてる悩みを教えてくれることだよ…、その心を見せてくれることだよ…、とは言えない。まだ俺自身も気持ちが固まっていないから、偉そうなことを言えないんだ。ごめんな、キヨタ。俺にヨウくらいの力量があれば、すぐにでも舎弟にしたんだけど、さ。
 

「ハジメの馬鹿―――ッ! トンチンカーン!」

「弥生にそのまま返すからっ、その台詞! この分からず屋女―――ッ!」

 
 ………、俺達は動きを止めてゆっくり首を捻る。

 そこには倉庫の隅で延々口論をしているハジメと弥生の姿が。まーたあいつ等喧嘩してるのかよ。相変わらずラブいねぇ、喧嘩はもはや愛の形だって思うよ俺は。口論している二人にヤレヤレな気持ちを抱いていると、響子さんとシズが倉庫内に入って来た。他校組も学校を終えたみたいだ(ちなみにヨウとワタルさんは煙草を買いに出掛けてるから不在中)。
 
 欠伸を噛み締めているシズから、「ん?」ちょっとイケたな、と俺の服装を指摘。
 しかもピアスあけてる、似合うじゃないかとお褒めのお言葉を頂いてしまった。畜生、そんなこと言うなよ。フツーに嬉しいじゃないか。響子さんからも同じようにお褒めの…、って、あれ?


「響子さん、ココロは?」

「ああ。係りの仕事でちょい学校に残らないといけないんだと。そうだケイ、ココロを迎えに行ってやれよ。昨日、アンタが来なかったからすっげぇ落ち込んでたんだぞアイツ」


 ゲッ、マジで? そりゃ悪いことしちゃったな。

 俺とココロは他校同士の恋愛だから、会う時間も限られている。ココロ、毎日俺に会うの楽しみにしてくれてるもんな。それは俺も同じなんだけどさ。この前、俺を迎えに来てくれたし、今度は俺が彼女を迎えに行く番だな。
 
 俺は皆にココロを迎えに行って来ることを伝え、颯爽と愛チャリを飛ばすことにした。
 向かうは勿論、ココロの通う高校。そう距離はない。チャリで15分の場所にその高校はある。彼女にあったらまず詫びないとな。んでもって、彼女の我が儘いっぱい聞くことにしよう。結構俺、舎弟とか喧嘩とかで時間を割かれることが多いから。もっと彼女を大事にしないとな。あ、そうだ。

 行き途中、俺は自販機でペットボトルのレモンティーを購入する。レモンティーはココロの大好きな飲み物なんだ。べつに物で釣るってわけじゃないけど、でも気持ちとして受け取ってもらいたい。

 ちょい寄り道をした後、無事にココロの高校に通う正門前に到着。
 携帯を取り出して一応メールを打つことにした。擦れ違ったりしたら切ないしな。それから10分くらい手持ち無沙汰、メールの返信も来ないから、適当にネットを開き携帯を弄って彼女が来るのを待つ。




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