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02-16


 

「ケイ、あんた、折角ヨウさんに見合うような恰好の一歩を踏み出したんだ。ちょっとこうした方がいいぞ」


 折角ピアスしてるのに、ビシッと制服を着こなすなんて、見てるだけで変ダルイし。
 まあ、これでヨウさんに見合うかっつったら、足元にも及ばないけどな! 相変わらず顔も手腕もお粗末だし! ……まあでも、これくらいしても変じゃないと思うぞ。寧ろ、オレはちょい真面目を卒業するケイの方がいいと思う。

「アンタ、今でもオレ達不良に一線引くところあるしな。そういうのはもうヤメちゃえよ、真面目と一緒にバイバイしたら?」 

 不意を突かれて俺は瞠目。
 したり顔で笑うモトは、「馬鹿な悩みは解決したか?」作業の手をそのままに俺を見てくる。


「最近馬鹿っぽい悩みを抱いてたそうじゃないか。べっつ、誰から聞いたわけじゃないぞ。雰囲気で分かったんだ。だってアンタ、分かりやすい。空気ですぐ悩んでるかどうか分かるんだ。解決してないなら仕方ないから、聞いてやってもいいし。あ、でもアンタ、その代わりオレになんか奢れよな」

  
 小生意気口を利くモトは完成だとばかりに腰に手を当てて、俺のダラけた身形を見るなり、よしよしと自己満足。
 おおっ、歓声を上げるキヨタはこれなら変じゃないと指を鳴らした。
 
 どうやらピアスと真面目服装はミスマッチだったらしい。
 俺的には全然慣れない恰好に戸惑うばかりなんだけど、二人にはこっちの方が断然良いと太鼓判をおされた。ンだよ、今まで服装のこと言わなかったじゃん。どんなに地味で真面目にしていても、ダサい恰好していても、「ダサイ」「地味」「恰好悪い」って指摘するくらいだったのに。

 違和感ありありの服装に変な感じと俺はポツリ。
 こんな風に着崩したことないんだけど。シャツをちょい開襟とか…、真面目精神からしたら論外なんだけど。ネクタイ締めないとすっげぇ変な感じだしさ。だけどピアスをしたからには断然こっちの方が良いとモト、キヨタもこっちが良いと言ってくれる。
 
 うーむ、ファッションセンスに少しは目覚めるべきなのかなぁ。しょーがない、二人がそこまで言うなら、「学外ではこれでいってみようかな」と微苦笑。
 
 途端にキヨタが笑顔のまま「……」、モトは「はああ?!」素っ頓狂な声を上げて下さった。


「バッカじゃないか! なんで学内ではしないんだよっ。ゲッ、まさかっ…、あ、あの違和感ありありな恰好を貫くつもりじゃ」

「だって風紀検査で捕まったらメンドイじゃないか。ピアスはホールが出来上がるまで、無理に外したりしない方がいいみたいだから付けておくけど。教師に怒られちまうし、学内では真面目ちゃんを貫こうかと。でもダイジョーブ、学外では勇気を踏み出して着崩しというハイレベルなワルをやってみようかと」

「それのナニがハイレベルだぁああ! ヤメロっつーの! あのミスマッチな恰好をするくらいなら、制服を着崩せ! ヨウさんの舎弟だろっ、地味でも不良になっちまってるだろ! 煙草とか吸えてるくせに、身形を真面目に統一しようとするとかイミフだし! ちとはヨウさんに見合うような恰好しようとか思わないのかよ! ヨウさんと風紀どっちが大事だ?!」

「あー…、その選択肢だと多分俺、風紀ッ…、な、なーんちゃってヨウ兄貴に決まってますですっ! だからっ、馬鹿ッ、それくらいで怒るなって!」


 物凄い形相をしてくるモトが俺に一発かまそうと襲い掛かってきた。
 田山圭太の判断は勿論、モトを迎え撃つ! …わけもなく、全力で戦闘から離脱である。仕方がないじゃないか! まともにモトとやり合って勝てる見込みはゼロだぜゼロ! あ、向こうが不調とかそういった理由があるなら1%の確率で勝てるかもしれないけど。
 
 「その腐れ切った根性叩き直す!」ギャンギャン吠えるモトに、「真面目精神は腐れかよ!」ついついツッコミを入れちまう。
 なぁああんで真面目くん精神が腐れだよっ、おっかしいだろっ、俺、間違った精神は貫いてないと思うんだけど! 腐ってるのは風紀違反をする生徒だと…っ、俺は間違ってねぇええええ! 寧ろ正当を述べてるだろ!

 俺の訴えなんてなんのその、だからアンタは駄目なんだとモトは素早く前に回ってジッリジリ追い詰めてくる。
 

「ケーイー。オレがそれにしろって言ってるんだから、それにしとけよ。分かったか! あんな違和感ありありなダッセェ恰好、オレは認めないし! ヨウさんの舎弟なんだっ、マシな恰好しろぉおおお!」
 

 ヘーイ、モトボーイ! 着崩しは全然マシな恰好じゃないと思うのですが!

 モトの剣幕にすっかり押された俺は、タジタジになりながら避難場に逃げ込む。
 「うぇえ?!」傍観者になっていたキヨタを盾にして、「お前は俺の味方だよな?」ポンッと両肩に手を置きニッコリ。キョドっているキヨタは前方のモトと、後方の俺を見比べて一呼吸。一思案した後、モトの瞳を見据え、うんっと頷き首を捻ってくると俺に親指を立てた。




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