[携帯モード] [URL送信]
イケメンなんて畜生だ!


 

 ◇ ◇ ◇
 

 時刻:翌日の放課後。
 場所:いつものたむろ場(倉庫側)

 只今の状況:田山圭太は弟分にブンブン尾を振られている。ちなみに現在進行形である。まる。
  

「―――…うわぁあああケイさんっ、穴あけたんっスか! 昨日ワルデビューするって言ってたむろ場に来なかったから、どんなことするんだろうって思ってったんっスけど、まさかピアスをあけちまうなんて! 地味にすっげぇっス! なんか地味に雰囲気違うと思ったらっ、地味にピアスしてるっス!」 
 

 「地味にすげぇっスよ!」目をキッラキラさせて見上げてくる興奮気味のキヨタに、俺は引き攣り笑いを漏らしている真っ最中だった。
 キヨタ、お前って超正直者だな。何度も地味を連発しやがって…、そりゃあ地味ですが、地味なんですが、一回の台詞に三回も四回も地味を連呼しなくてもいいじゃないか。本当に俺を尊敬してくれているのか? お前。
 
 ワンワンキャンキャン尾を振って構ってくるキヨタの頭部を小突く。
 
 その隣で、「結構変わったと思うけどな」モトが率直な感想を述べてきた。
 頭の後ろで腕を組んで、「ケイって超真面目だったから」ピアス一つで空気が超ちげぇよっとぶっきら棒に肩を竦めてくる。
 

 それもまた誇大な表現だと思うけど…、んー…、利二達にも言われたな、同じこと。
 
  
 なんでもピアスひとつで、取り巻く空気が変わったとか。
 ピアスをしていない側から見ればいつもの田山圭太なんだけど、ピアスしている側から見ればなんか突っ張っているツンツン田山圭太のように見えるらしい。謂わば空気に茨が巻いたカンジだと指摘された。俺を知らぬ地味達からすりゃ近付きがたい空気になったんだと。


 まさしく不良に近い空気だと言われちまって俺は「嬉しいんだぜ!」と、思うわけもなく、ちょいと心中で落ち込んだ。
 

 嘘だろおい、ピアス一個で空気が変わるなんてっ…、ジョーダンだって思いたい。
 だってだってだーってっ、たかがちょいと耳に穴をあけてピアスをぶっ刺しただけだぜ? 正しくはぶっ刺されたんだけどさ! ピアスをした、それだけで空気が一変も二変も変わるもんか?! 皆、大袈裟なんじゃね?!
 ああくそっ、耳朶にほくろでもできたって思ってくれればいいのにな!
 
 どんなに飲酒しようが喫煙しようがピアスしようが、俺は田山圭太そのものでい! 不良なんてベラボウチクショウと思ってるジミニャーノだって自負している! ……ま、まだ俺はジミニャーノだぞっ、ちょっと悪になっちまったけど、ジミニャーノ不良とまだ名乗れるよなっ、なあ? 愛すべき地味友達よ。

 「でもなんかおかしいぞ」ふとモトが眉根を寄せて腕を組んだ。


「違和感っつーか、そういうの感じね? キヨタ」

「え? そーかな。……あ、でも言われてみればそーかも。なんだろう。ピアスはいいのに…、んー、何処が違和感なんだろう?」

 
 え゛? おかしい? ピアスをしたせいでなんかおかしくなったか? ピアス以外はいつもの俺なんだけど。
 
 もし…、おかしいと言うのならば、それはヨウに責がある。間接的にハジメとワタルさんにも責がある。
 だってヨウは無理やり俺にピアスホール作っちまうしっ、二人は助けてくれなかったし! 変と言うなら、俺は三人に責任を取ってもらわないと!
 
 困惑してモトとキヨタを見やれば、「あ、分かった。これだ!」モトが手を叩いて颯爽と俺に歩んできた。
 な、なんだよ、激警戒心抱くんだけど。ヨウが無理やりピアスをあけちまった手前、警戒心は多大なんだぞ、俺。バッチリ身構える俺を無視し、おもむろにモトがしっかり締めている俺のネクタイを取っ払っちまう。焦る間もなく、ネクタイを捨てたモトは次いで、その手でシャツのボタン上二つを外し始めた。

 無言になる俺は眉を寄せるしかない。
 見る見る制服が着崩されていくんだけど、ちょ、何してくれるわけ、お前。あーあ…、折角の制服がダラしくなくなっちゃって…、見るも残念な恰好になっていくんだけどおい。


 けど構わずモトはボタンを外しつつ、言葉を重ねる。





[*前へ][次へ#]

15/31ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!