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02-14


  
 
「半端とか思ってるわけないだろ。けど、こう見えてもちっちゃなことで気にする性格なんだよ、俺。イジイジクヨクヨしちまう調子ノリだ」

「ははっ、知ってる。だから一肌脱いでやったんだろうが」
 
  
 だって俺はテメェの舎兄なんだぜ。俺ってば激頼もしい兄貴だな、一笑を零すヨウに俺もつられて笑う。
 ほんとにな、お前は舎弟をホトホト困らせてくれる頼もしい俺の舎兄だよ。いっちゃん俺の弱いメンタル面を理解してくれるのはヨウ、お前だな。ハジメに言われたとおり、ヨウは相棒で、こいつがいなくなっちまったら俺、困っちまうや。マジ頼り甲斐のある奴。
 
 ―…俺、いつかお前みたいな舎兄になれるかな。

 
「なあヨウ。舎兄って、どんなカンジ?」

「ン? 突拍子もないこと聞いてくるんだな。なんだ、キヨタを舎弟にしようって決めたのか?」 


 空になった缶を潰すヨウに、「決意まではしてねぇけど」でもキヨタなら舎弟にしても良い気がして、正直に気持ちを零した。
 ただ俺はヨウみたいにそういった器も力量もないから、舎弟にしていいのかどうか迷うところではある。特技はチャリと土地勘と習字くらいだし、一生懸命に背中を追って来てくれるキヨタと俺じゃ釣り合わないんじゃ。
 
 うーん、俺等みたいに舎兄弟をやっていけるかどうか、全然自信がねぇんだけど。
 でも最近のキヨタを見ていると、キャツを舎弟にでもしてその本心に触れたい気も…、難しいな。この問題。
 

 顔を顰める俺に、「俺等は俺等でお前等はお前等じゃね?」比較してもしょーがねぇだろって指摘された。
 

「俺はモトを弟分のままでいさせてる。一時期は舎弟にしようとも思ったが、あいつ自身が望んじゃかなかった。弟分と舎弟は違うってあいつの中で一線引いてるんだ。俺自身も弟分と舎弟には仕切りを作っている。俺の中じゃ舎弟はパートナー、弟分は後継者って言ったところか。テメェはキヨタを後継者にしてぇのか?」

「そういうわけじゃないけど、なんとなく今のままじゃ駄目な気がした。あいつ、なんっつーか結構俺に気遣うところがあってさ。兄弟分じゃお互いっ…、だーけーどっ、俺は喧嘩とかろくすっぽう出来ないし! イケメンでもなきゃ、不良でもないし!」

「安心しろ、おめぇはじゅーぶん不良だっつーの。てか、イケメン関係ねぇだろうが。手腕も、今更な悩みじゃね? 今までチャリでカバーしてきただろうが。立派に俺の舎弟もしてきたんだし、そりゃ自信にしてもいいと思うぜ? 過小評価し過ぎだっつーの。ごちゃごちゃ悩むより、行動に起こしちまえって」


 すったもんだなことを言ってくれるな、ヨウも。

 
「簡単に言ってくれるなよ。お前みたいに行動力がないんだよ、俺は」

「だから、取り敢えず行動に起こして舎弟にしちまうんだって。後はゆっくり舎兄弟になっていけばいいじゃんかよ。俺等だって、最初はノリだけでなっちまったんだし」

 
 最初から舎兄弟じゃなかっただろ、俺等。
 ヨウに言われて、確かにそうだと俺は相槌を打つ。最初こそ俺等の関係はなんちゃって舎兄弟だったっけ。今こそ本当の舎兄弟だったけど、それまではなんちゃって舎兄弟だった。“なんちゃって”のせいで色々傷付くこともあったっけ。
 
 ―――…そうだ、俺達は最初から本物じゃなかった。 
  

「ま、今日はもうごちゃごちゃ悩むのはやめだやめ。パァっと弾けようぜ! テメェのちょい不良デビューに祝して飲も…、ん? もう酒がねぇ。チッ、興ざめするじゃねえか。うっし買いに行くか!」

「はあ? まだ飲むのかよヨウ! 随分飲んでただろう!」

「なあに言ってるんだ。全然飲んだ内にも入ってねぇぞ。ほら、行くぜ」

 
 ブランコから下りるヨウはご機嫌に歩き出した。
 
 「え、おい!」マジで買いに行くのかよ、慌てて散らかったゴミを拾い(俺。超偉い!)、それを抱えてヨウの後を追う。「付き合えよ舎弟」首に腕を絡めてくるヨウは、潰れたらお持ち帰りしてくれていいぞ、と悪ノリをかましてくる。
 ジョーダンだろ、なんで俺が潰れた兄貴を家に持って帰って介抱してやらなきゃいけねぇんだよ。母さんになんて言い訳すりゃいいんだっつーの。

 でもきっとヨウが俺の家に来ることは確定なんだろうな。
 あーあ、酒臭い言い訳、考えておかないと。
 
 ガックシ肩を落とす俺を余所に、「ははっ。なあに落ち込んでるんだよ」まあだ何か悩みでもあるのか、しょーがないから聞いてやるぞ。兄貴面してくる軽い酔っ払い一匹。
 
 良くも悪くも俺の一番の悩みの種はやっぱ、こいつかもしんねぇ。不良難の元凶を一瞥して、俺はまた深い深い溜息をついたのだった。




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あきゅろす。
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