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02-08


  

「ヨウちゃんの家は普通に喫煙できるから良いよねぇ。僕ちーんのところは、親が煩いから、なっかなか部屋じゃ吸えないんだよねぇ」
  

 早速ワタルさんが一服し始めた。
 俺等にもおすそ分けしてくれるんだけど、マイルドセブンか。俺、ヨウの吸ってる銘柄が一番好きなんだよな。マルボロだっけな。アレが一番美味いと思う。なんでも吸えるんだけどさ、ヨウが一番最初に吸わせてくれたアレが一番口に合うんだ。貰ったからには吸うんだけどさ。

 ライターで先端を焼いて一服していると、「ケイも悪くなったよね」外見は変わらないのにさ、とおどけ口調でハジメが指摘してくる。
 ついさっきそれを心中で反省してたんだ。指摘してくるなよハジメ。


「ケイはいつまでも真面目を貫くと思ったんだけど、そうでもなかったみたいだね」

 
 そりゃあ毎日いる環境が環境だからな、不良に感化されるところもあるだろうさ。それが半端者の所以なのかもしれないけどな。
 失笑気味に紫煙を吐き出して、「ほんとにな」俺は生返事をする。他に反応を返せなかった。ちょっと意外だったみたいで、「そこは笑うところだろ?」ハジメも失笑で返してくる。

 あ、ごめん、空気読めてなくて。最近の俺、おセンチ気味だからついつい。
 
 ……だぁああって、ぶっちゃけると俺、学内で噂が立ってるんだぜ! 悪い方でさ! 気にしないつったけど、やーっぱ気にするだろ! 不本意な噂を立てられちまって悲しいだろ、泣きたいだろ、チキショウって叫びたいだろ!
 人からは良く見られたいってのが、人間の性分なんじゃね?! 俺、間違ってますかね?!

 人からはなるべく良く見られたいっ。
 今更だし、超偽善ぶったことかもしれねぇけど、そう思っちまう俺って悪い子か?! 教えておじいさーん! アルプスに住んでいるおじいーさーん!
 

「まあさ、僕ちん的には今のケイちゃーんの方がいいけどねぇ。砕けてる方が、気が楽じゃーん? 真面目とか超カタイ! 初対面のケイちゃーんもおカタカタ人物だったよねねねん! しっかも僕ちゃーんのこと、怖がってくれてたっしょ? 不良だからって理由で」

「え゛? ま、まっさかぁー」


「ブッブー。嘘は駄目だよーん、ケイちゃーん」


 怖がってたの、ちゃーんと分かってたんだから、ワタルさんにニンマリ笑われて俺、「憶えてないです。はははっ」思いっきし誤魔化し笑い。はい、憶えてることモロバレー。ワタルさんがゲッラゲラ笑ってくれるー。

 ……うそん、ばれてた? まじょで?
 そ、そういやヨウにもばれてたよなっ、俺がガチで怖がっていたこと。隠し通せている自信っ、あったんだけど…、やっぱワタルさんにもばれてたんだっ。いやだってっ、不良と全然縁(ゆかり)がなかったんだもの。そりゃあビビる田山になるって!

 だけど冷静に考えてみると…、今、俺も周囲からビビられる立場になったから、なんとなく相手が自分をどう思ってるのか分かるよな。必死に気持ちを隠しても、オーラで伝わっちまったのかも。
 
「あれ、ケイ。ワタルのことは怖がっていたっていうけど、僕のことは怖がってなかったよね? 僕も一応、ナリは不良なんだけど」

 何処となく不満そうにハジメが己を指す。
 うーん、だって初めて会ったのが袋叩きされてたあの事件だし。改めて顔合わせした時だって、雰囲気的に「あ、こいつ弱そう」とか思っちゃったし。そりゃあ不良で嫌だなっとは思ったけど、怖いとはあんま思わなかったかも。少なくとも他の不良よりは。

「わーるかったね、弱そうで。実際弱いですけど何か?」

 眉根をつり上げてくるハジメに、「あ、お口に出してた?」ごめんごめん、本当のこと言っちゃって、俺はかるーく鼻で笑った。 
 「馬鹿にしてるでしょ」ハジメの異議申し立てに、「俺と同じ匂いがしたんで」なんとなく怖くなかった、と当時の心情を吐露して一笑。ハジメって家庭事情で元々優等生だから、俺と根が似てるんだよな。

 だからなのか、怖さはそんなに感じなかったんだ。これまた不思議なことにさ。


 俺はまた一つ紫煙を吐き出して灰皿に灰を落とす。
 




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あきゅろす。
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