02-06
「そうだよケイ。染めちゃえばいいじゃんか! どうせ悪くなってるんだろ? オレ、ケイの不良姿見てみたい。ウケると思うしな!」
なるほどモトくん、ウケてくれるわけね。大いに笑ってくれるわけね。
敢えて笑ってくれるなんてお前、むっちゃイイ性格してるぞ。ウケられた日には、多分ショックで泣くぞ俺。お家に引き篭もるぞ。すぐ髪の色、元に戻すぞ。
即答で無理だと言う俺に、「ワルじゃんか」何を今更尻込みしてるんだよ、と呆れられた。
そうは言っても、風紀検査で捕まるとメンドクサイじゃないか。さっきも言ったけど、染めれば両親も教師も煩いし。
……これが半端者って言われる原因なのは分かってるけどさ、外見ジミニャーノを貫き通して何が悪い! 俺が髪染めしてもあんま似合わないと思うしな! 染めるとしたら、まあ健太のようにダークブラウンか? だったら大して変わんないと思うけど。文字通り地味不良に成り下がるだけだろうな。
「ケイさんが染めるなら俺っちも染め直さなきゃいけないっスね。赤でも黄でもピンクでも俺っち、ついていきますんで安心して下さいっス!」
毛先を抓みながらキヨタはどこまでもお供すると胸を張った。
当然俺は空笑い。お前はとことん俺の真似をしてくれるのね。愛してくれてどーもだよ。
「ははっ、ケイはンなことしねぇだろうよ。根っからの生真面目不良くんだからな」
ダブり抜きを終えたヨウが確信を持って言う。
「えー」そんなのツマンなくない? ワタルさんはぶう垂れた。ちょっとワタルさん、異議ありです。ツマンナイってナンですか? 俺のワルデビューを面白おかし話にしようとしてるんですか! てか、デビューなんてしない、しないんだからな!
それにこう言ってくれるヨウだって俺の性格、十二分に分かってる筈だ。
だから髪染めなんてしないとか言ってくれるんだよな? いやぁ、お前も成長してくれたよな。一年程前はちっとも俺の気持ち、察してくれなかったお馬鹿ちんで「髪染めなしでワルデビューさせる」兄貴、ワッツ? 今、なんっつった?
絶句する俺に、キャツはイケメンスマイルを向けてきた。
「前にも言ったよな。外貌そのままで、テメェをちょいワルにさせる手があるって。まかせろケイ、ちゃーんと考えてるんだ俺」
せ、せ、成長してねぇっ!
俺の気持ちっ、全然察してくれてねぇよ、こいつ。やっぱお前はお前だっ、思いつき行動大好きな我等がリーダーだよ!
青褪める俺だけど、「見返してやろうぜ」ヨウが意味深に言葉を吐いてきた。俺は目を点。見返すって誰に見返すんだよ。このナリでダッサイ言う奴、ゴマンといるんだけど。
一方で舎兄はちょいと腹立たしそうに自分の手札を扇子代わりにして、自分側に風を生み出す。
「テメェに目ぇ付けてる前橋を見返してやるんだよ。中途半端っつったあいつをな」
テメェが少しでもワルになればもう、口出すこともねぇだろ?
「だから任せろ」ヨウのいつにない真剣な眼に、「え。お、おう」俺の方が意表を突かれたのだった。
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