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02-05


  

「俺、超悪い噂が立っちまったから、弟分のキヨタに何かと苦労掛けちまいそうで。クラスの奴は知ってるのか? お前が俺の弟分だってこと」

「もちっすよ! なんたって自己紹介タイムで、ケイさんの名前を出しましたもん! 俺っちはケイさんの弟分っす! って」


 ……わぁお、お前、自分から周囲と壁を作りそうな発言を。高校生活が楽しくなるかどうかは始めの1ヶ月で決まるってのに! ちなみにお前、どういう風に俺の名前を出してくれたんだ? お前が話す俺はすこぶる美化圭太にしてそうで怖いぞ。
 「モトも出したんだよな、ヨウさんの名前」得意気に話題を親友に振るキヨタ。モトも液晶画面から視線を逸らして、あたぼうだと指を鳴らす。


「ヨウさんの名前を学年に轟かせるためにも、弟分として自己紹介タイムで話すのは当然だろ。ヨウさんの容姿・性格・リーダーシップ、何を取っても男前でイケメン。男女のハートを射止めてしまうヨウさん。そんな、そんな、ヨウさんの弟分になれたのはオレの誇り。だからオレは、弟分として! 弟分として!」

「……、ははっ、俺も、テメェを弟分にして良かったと思う今日この頃だぜ」

 
 ヨウ、台詞に無感なのはなしてでしょうか?
 いや、なんとなくヨウの気持ちは分かるけどさ。
 
 失笑を零していると、「あの…ケイさん」畏まった声音でキヨタが俺を見つめてくる。瞬きをする俺が軽く驚いたのはこの直後。だってキヨタの奴、超真顔で皆に弟分って言っても良かったですか? って、俺に聞いてくるんだぜ。そりゃあ驚く。
 ぱちぱち。ぱちぱち。何度も瞬きをする俺はジッと見据えてくるキヨタに「馬鹿だな」微苦笑を向けて、返答。


「お前らしくない質問だな。聞くまでもないだろ? 俺の弟分はキヨタなんだ。言うことに良いも悪いも何も無いよ。ただ、俺がこのとおり悪評だからな。お前が周りに敬遠されないかどうか心配だけど。キヨタはお前は俺の弟分だって」


 パァっと目が輝くキヨタは、「ケイさぁあん!」俺の背中に飛びついて、「あ。ジョーカーがあるっすね」手札をおおっぴろげに公言。
 「バッカ!」これはババ抜きだぞ、素っ頓狂な声を出す俺にキヨタは慌てて両手で口を押さえる。すんませんっと目で訴えてくるキヨタだけどっ、ったく、お前って奴はっ…、かるーく青筋を立てる俺はキヨタの首に腕を回して思いっきり締め上げる。これも兄分の友愛だ、受け取りやがれ!
 
 ギャーッと悲鳴を上げるキヨタはギブですからっと苦しそうに、でも可笑しそうに笑って俺の膝を叩いた。
 
 こういうところは普段通りなんだけどな…、複雑な気分だ。

 なんか悩みがあるなら気軽に声を掛けてくれてもいいのに。
 そりゃ親友さんのモトの方が言いやすいだろうけど、俺だってカタチ兄分なんだし。特別兄分だからって、キヨタに何かできているわけじゃないけどさ。寧ろ助けてもらってばっかだから何かと頼りないんだけどさ。

 うーん、キヨタは俺を慕ってくれてるのにな。
 
 ちょいと美化し過ぎるところがあるけど…、全力で舎弟になりたいって言ってくれてるのに。
 ああああっ、なんで最近の俺って悩みが尽きないんだっ。悩める普通少年田山圭太! 不良の思いつきで舎弟になっちまった不幸少年! 高校に進学してから何かと不良関連で悩まされてる! 不良難は今も尚、現在進行形で続いてるんだな!


「あ、そうだ。ワル三男坊。この機に染めちゃえば? せーっかく悪くなり始めたんだしさぁ」
 
 
 教師達をビビらせればいいじゃんか、突拍子もないワタルさんの助言に俺はギョッと目を削ぐ。
 
 髪染め? 俺が? キンパにしろって? キンパ田山イェーイ?
 ……ジョーダンっ! そんなことした日には教師達に目を付けられること間違いないっ。その前に両親に説教されちまうよ。お前、ナニ粋がって髪染めしてるんだとか鬼角生やして説教されるに違いないっ、あばばっ、小遣いだって貰えなくなる可能性も!


 か…、金のアテがなくなったら利二のところでバイトできるか掛け合ってみようかな。





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