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02-04


  

「そっかぁ、解決はしたんだんご。けど噂は消えてないマンボウ。ヨウちゃーんの舎弟って時点で評判は良くなかったけど…。
んー、日が経つに連れて…、周囲に噂が侵食してるってカンジまんじ? 僕ちゃーんの教室でも結構、話題になってるし学年にカツアゲする外見は真面目の中身不良がいるって。陰湿陰険根暗等など、お耳にして」


「もういいだろワタル。矢島の一件は解決してるんだ。ケイがそういう奴じゃねえってこと、分かってるしな。仕舞いだ、この話は」
 

 一々噂を話題に出すな。辛気臭くなるだろうが。ヨウがダブりを輪に投げて言葉を制す。
 見え見えの気遣いに失笑しつつ、「噂はもういいんです」俺は気にしないようにするからと明るく返す。そうだ、気にしちゃ負けだ。一件の事件でますます周囲との距離が開いちまったけど、でも俺が選んだ道だ。
 
 分かってたじゃないか、ヨウの舎弟に正式になるって決めた日から。ヨウ達の仲間になったあの日から。不良達と出逢った日から。
 
 肩身が狭くなった気もするけど、開き直っていかないとやってらんねぇ!
 おうよ、開き直って俺は学校生活を満喫してやる! 周りなんて知らん、知るか、知ったこっちゃねえ! と、強がりを言ってみる。カッコお得意の心の中でカッコ閉じる、まる。

 ダブりの無くなった手札を眺めていると、ワタルさんが頭を鷲掴みしてぐりぐり手の平を押し付けてきた。
 「イタタッ!」突然の行動に悲鳴を上げるんだけど、何処吹く風でワタルさんはシニカルに笑ってくる。


「なにはともあれ、これでケイちゃーんもウェルカム僕ちゃん達ワールドだよねん。ようこそブラザー! 悪評ブラザーとして歓迎してあげるっぴ。ちなみにヨウちんは長男、僕ちん次男、ケイちんは三男坊ねん。これは悪の名が挙がった順だからよろぴく。さあて、次は誰がブラザーになるかなーん」

「ちょい待てワタル。なんでテメェが次男だよ。テメェの方がぜってぇ噂立つの早かったぞ」


 不満を口にするヨウに、いいからいいからと笑い、俺に一緒に悪として学校に名を連ねようと誘ってくるワタルさん。
 彼なりの励ましだってすぐに分かった。ワタルさん、俺を心配してくれてるんだな。ウザ口調は相変わらずだけど、一年も一緒にいたら言動で相手が俺を気遣ってくれるかどうかすぐに分かっちまう。ワタルさん、内面は超仲間思いで情に熱い男だしな。

 分かっちまうからこそ、ワタルさんの気持ちが嬉しくて「宜しくです兄貴」と笑みを零した。
 「へいカムヒア」笑うワタルさんと、「あーあ」肩を竦めるヨウ。舎兄は笑声交じりに言う。


「ケイ、テメェ幾つ兄弟の肩書き持つつもりだ? 俺の知る限り、テメェは三つは持ってるぞ。まず俺との舎兄弟だろ。次にシズと俺を含めた田山三兄弟だろ。あ、こりゃ俺等が初めてケイの家に泊まった時についた兄弟名な。で、このワル三兄弟。肩書き有り過ぎだろ」

「今挙げた兄弟の肩書き、ヨウも全部入ってるじゃんかよ。おあいこだって。それにヨウ、舎兄弟じゃないけど、モトがいるじゃん」


 とはいえ、俺もそうか。

 手札から目を外して俺は“ケモハン”をしている新入生二人組を見つめる。
 ヨウに弟分がいるように、俺にも弟分がいる。おかげさまで俺は四つ目の肩書きを持ってるんだけど…、兄分とか不慣れな称号を持ってるんだけど…、その兄分としてちょい気掛かりがあるんだ。
 
 なんっつーか、最近キヨタの様子がおかしいんだよな。
 
 パッと見変わった様子は無いんだけど、時折纏う空気が変わるというか、愁い帯びるというか。
 いつものハイテンションパワーにふっと陰りが差すんだ。向こうは気付かれないだろうと高を括っているけど、俺には無敵にバッチシ分かってるんだからな。これでも空気を読んで地味に16年生きてきた男、ノットKY圭太なんだから。

 実を言うと最近おかしいと思う少し前から、違和感は感じていたんだ。
 いつ頃だったかな、キヨタの空気が変わったって思うようになったのは。キヨタ達が進学するちょい前から、なんとなく感じていたような気がするようなしないような。最初は気のせいだと思ったんだけど、気のせいじゃないんだって思うようになったのは極最近。
 
 考えている素振りを見掛けるようになった気がする。
 
 例えて言うならば、1年の時のハジメのような、自分ワールドに浸ってしんみりしているところを見掛けるんだ。溜息をついて自分の世界に浸るところがチラチラ。普段は能天気に空気を盛り上げたりする奴なんだけどさ。

 俺を過度に慕ってくる奴だから、尚更心配になっちまうんだよな。キヨタの様子に。
 
 
「あ、もしかして俺っちを呼んでましたか? ケイさん」
 

 視線に気付いたのか、液晶画面から視線を外してキヨタがニッコニコ顔で俺を見てくる。
 ゲッ、そんなにキヨタをジトーッと俺は見ていたのか? 傍から見たら結構きもいだろ。なあにしてるんだか。

 俺は誤魔化すように、「お前に苦労掛けると思ってさ」と話題を切り出す。




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