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02-03




 ゲンナリしながら俺は食事を進める。

 ドンマイ俺、座る位置が悪かったんだよな。

 
 なんとなーく嫌な予感はしてたんだよな、この二人の醸し出す雰囲気からして。
 体育館に来るや否や、お互いに不機嫌、無言、無口で俺の両隣に座ってくるんだぜ? なんかあったって思うのが筋だろ? ハジメと弥生、恋人になった途端喧嘩が多くなってさ、またクダラナイことで喧嘩したのかなぁって思ったら…これだもんな。勘弁してくれよ。

 嗚呼、最近の俺、ほんとついてないよな。マージついてない。
 肩を落としてコロッケを口に放る俺の向かい側で、これまたゲンナリとした顔で痴話喧嘩を聞いている不良数名。可哀想な俺を見捨ててくれるヨウとワタルさんは、勝手にやってろとばかりにトランプしながら飯を食べてるし。体育館裏の新入りと言ってもいいキヨタとモトは、能天気に持参しているゲーム機で遊んでるし。

 へいへいへーい、どっちでもいいから俺もまぜてくれよ! 此処のポジション、ガチ嫌なんだけど!
 思った矢先、「ケイ!」両隣から二つの声が飛んできて俺は身を竦める。ヤーな予感。
 

「どっちが悪いと思う! やっぱりこのドヘタレだよね?! 私は悪くないよね!」

「ケイ! 被害妄想してる弥生が悪いと思わないかい?! 悪いよね!」

 
 ほら来たよ、俺へのとばっちり。
 勝手にやってくれよ、俺はカンケーないだろーよ!
 
 「そうだなー」生返事を繰り返す俺は、両隣に視線を送って愛想笑い。
 物凄い剣幕で睨まれて、俺は笑顔のまま冷汗をタラタラと流した。此処は男として男のアッツーイ友情を選ぶか、それともレディを気遣って女の友情を選ぶか、ははっ…どっちを選んでも地獄だろ。
 
 喧嘩両成敗じゃ駄目か、取り敢えず二人に質問してみるとギッと強い眼光で睨まれた。
 な…、なんだよぉ。俺、何もワルイコトして無いのに。してないのにっ! 寧ろ妥当な意見を言ったのに! 喧嘩両成敗だろっ、喧嘩した両方が悪いんだろドチクショウ! どーせこの後、すぐに仲直りしてイチャラブモードに入るんだろ! 分かってるんだからな!
 
 心中で嘆いていると、哀れみ半分、愉快半分で見ていた傍観者のひとりがついに動いてくれた。
 
 「ケイちゃーん」一緒にやらない? トランプの輪に招いてくれるワタルさんがおいでおいでをしてくる。
 「喜んでいっきますー!」俺は弁当を持ったまま腰を上げて、さっさと戦闘から逃げ出した。二人が怒声を上げてくるけど、知らね、知らね、俺は知らねぇええ!

 そそくさとワタルさんの隣に腰を下ろして、ホッと胸を撫で下ろす。
 ケラケラと笑うワタルさんは、災難だったねとバシバシ背中を叩いてきた。助けてくれてなんだけど、もう少し早く誘ってくれても良かったんじゃ…ワタルさん。

 って、ヨウ!
 お前は俺の兄貴だろ! なーんで呑気にトランプを繰ってるんだよ! 助けてくれたっていいじゃないかっ、ド阿呆!
 

 ……って、言えれば、俺はどんだけ清々しい気分になるんだろうな。
 

 小さくと息をついて俺は喧嘩してるカップルに目を向ける。
 俺の意見を頂戴できなかった二人は、また口論開始。聞いてるだけでくだらないから、敢えてどんな悪口(あっこう)をついているかは伏せておく。


「二人とも、よーくやるよねんねん。まあ、愛ゆえの口喧嘩だろうけど? 痴話喧嘩はわんこも食えないって言うし、放っといてもダイジョーブだろうけどんぶり」

「てか、関わるだけ無駄な労力を使うっつーの。うっし、王道にババ抜きでもするか」
 
 
 シャッシャッシャとトランプを繰るヨウは、手馴れた手つきでトランプを配り始める。
 ババ抜きならモトやキヨタも誘えば…、ああ駄目だ。あの二人、ゲームに夢中だ。獣を狩るゲーム“ケモハン”をしてるっぽい。武器の装備だの、アイテムの補充だの言ってる。弥生とハジメは論外だから、三人で仲良くババ抜き開始。まあ二人よりかは三人の方が楽しめるしな。

 俺は弁当を食べながら手札を拝見。
 ……わぁお、俺がジョーカー持ちか。早速俺がババ持ちになっちまったよ。取り敢えず、顔に出さずまずは手札のダブりを抜いていこうっと。


「そういえばさ、ケイちゃーん。噂が立ってるけど、解決したんだよねんりき?」
 
 
 ワタルさんがダブりを輪の中央に放る。
 
 噂…、嗚呼、俺が新入生をカツアゲしたってあれだな。
 
 矢島達のせいでえらく俺、悪者扱いにされちまったけど、一応無事に解決した。
 肯定の返事をして俺もダブりを中央に放る。「チッ。矢島の野郎!」思い出したのか、ヨウは盛大な舌打ちをしてダブりを中央の山に叩きつけた。ははっ、ヨウにとって矢島はある意味、二度と会いたくない男だろうしな。
 イケメンのヨウにブサイクなんて暴言…、矢島が美形だから言えることだよな。

 俺が言ったら、それこそ世界中のイケメンを敵にするって。自分の身の程を知れって怒鳴られちまう!




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