14-09
「なあハジメ。これからのことってTLしてるけど、これからの何を話したいんだ?」
最近携帯を替えたモトがスマートフォンを片手にディスプレイ上をスライドさせてながら、ハジメに声を掛けた。
そういえば利二の前のツイートはハジメだったな。視線をインテリ不良に向けると、「ストーキングのこれからだよ」確認しておこうと思ってね。ウィンクしてくるハジメは、今日のストーキングの段取りは分かっているね、と視線を配った。
勿論分かっている。今日のストーキングは矢島の出没情報収集だ。これから三日間、情報収集をしようと思う。極自然な振る舞いでな。
ちなみにどういうやり方っていうと、その謎は放課後に解けることだろう。
つまらない授業を終えた俺達は廊下に出ると、和気藹々と会話を交わしながら昇降口に向かう。途中で他クラス・学年のメンバーと合流し、今日の日程について談笑。
今日は何するっぴ? 僕ちゃーんゲーセンで息抜きしたい。あ、オレも行きたいです。俺はパス、シズと約束あっから。ごめーん私とハジメもパス。デートッスか! あ…、俺っちも今日は先約があって。俺もココロとデートなんだぁ。みーんな付き合い悪いっぴゅーん! いいもんいいもんモトちゃーんとおデートしてやるんだから! モトちゃんをお持ち帰りしてやるぅう! うっわ、オレお持ち帰りは拒絶しますけど!
誰がどの台詞なのかなんて気にもならない。
ただただ何気ない会話を交わし、俺達は正門でひとり、分かれ道で一組、更に大通りで全員が別れて行動する。
携帯を弄りながら歩いていた俺は駅前で待ち合わせしているココロと落ち合い、おてて繋いでぶーらぶらーぶらぶ。出店のアイスクリーム屋を見つけたから、それを買って食べようと赴く。彼女が二段重ねにするかどうか迷っていたから、二人で食べようかと断を下し、カップ入りで二段重ねにしてもらった。味はストロベリーとレモン。フルーツ系で揃えてみる。
そしたら気前の良いお姉さんが、上にマスカット味のアイスをのせてサービスしてくれた。
こうして三段重ねのアイスを駅広場のベンチで食べることになった俺達は、崩れないよう注意を払いながらプラスチックのスプーンで突き合う。
「美味しいですね」「なー?」傍から見たら絶対にクソ甘いカップルにしか見えないであろう俺達。いや正真正銘のカップルなんだけどさ!
スプーンでアイスを掬うココロは、「ケイさんとデートできるようになって嬉しいです」頬を崩してはにかんでくる。
「心配掛けたもんな」微苦笑を零す俺に、「ケイさんのせいじゃないですよ」ケイさんは何も悪いことしてないんですもの。元気になって良かったとココロは一笑した。一笑を返した刹那、何処からともなく嘘でしょ、と頓狂な声音が。
拒絶反応が出てしまうほどの馴染みある声に俺は顔を引き攣らせ、広場側に視線を流す。
おーっとそこには駅構内に赴こうとしている二人の女子高生が。片割れが立ち止まって俺を指差しているんだけど、奴は…、うっげぇええ、出たな毒舌の波子! お前はお呼びでねぇよ!
「マジで彼女いたの?」
ヘボ山ごときに彼女とかありえないんだけど、とかなんとかほざかれるけど俺は何も見なかったことにしてココロとアイスクリームを堪能する。どーしておデートまでお前に会わないといけないんだよ。俺は関わらないからな!
「うっざー!」
シカトする俺に怒号を上げるキャツだけど、俺だってお前に言いたい。
うっぜぇええ! ってな。なーんでそこまで俺を毛嫌いするのかは存じ上げませんが? 俺は今、とつても忙しいの。シッシ、あっちへお行き!
あからさま不機嫌になりながらスプーンでアイスを掬い取る。
んでもってそのまま口元に運ぼうとしたら、別のスプーンが横切って俺の口に。ストロベリーを掬った筈なのに、口内に広がるのは酸味溢れたレモン味。視線を流せば悪戯っぽくはにかむ彼女がそこにはいた。「機嫌直りましたか?」とか可愛いこと言われちゃ、俺もテレのデッレーするよ! どうして俺の彼女ってこんなにも可愛いんでっしゃろう。天使なんて言葉じゃ足りないぞ。
「直った」頬を崩す俺にココロが照れ照れっと笑い、溶け始めているストロベリーアイスを掬ってパクリ。
一方で彼女は空いた手で携帯を取り出し、親指を十字キーにのせて操作する。「ケイさん」携帯を差し出されたために、俺は画面を覗き込む。
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