14-02
「と、説明はこんなもんだが質問は?」
はい、俺は無実!
ストーカーの“ス”も関係ねぇじゃんかよー! んでもって、ヨウ。その思いつきを話す前提はいらなかったんじゃね?! 俺、仲間から不要な疑心を向けられちまったじゃあーりませんか! 疑われた俺、めっちゃカワイソー!
ゲンナリする俺の隣で、「なるほどねぇ」ヨウにしちゃ頭が回ってるぜ、響子さんが納得している。
俺も納得したいところだけど、なんとも気分的に味が悪い。
だってまるで俺のせいでヨウがストーカー行為を思いついたみたいな流れになってんだもん。俺がナニしたよ。単にゲームをしていた。それだけなのに。
「異議がねぇなら」これを試したいんだが、得意げな顔を作っているヨウに異論はない。が、なにぶん俺達は単なる高校生でして。ストーカーのやり方なんててんで分からないんですよ。はい。
てか作戦名変えないか? ストーカーっての、なんかネーミング的に響きが悪い。
矢島を付け回すというより、やることは尾行なんだからビバ探偵ごっこで行こうぜ! 名探偵荒川チーム、ぜってぇこっちのがカッケー! 響き的にも二重丸だろ!
モヤっとしている俺の余所で弥生が本当に尾行なんてできるのかとしかめっ面を作った。
もっちろん素人だっていうのもあるけれど、自分達の存在は目立ち過ぎているんじゃ。弥生のご尤もな意見に俺は納得する。特にヨウやワタルさんは身なり的にも存在的にも目立つ。髪の色でアウトだろ。喧嘩スキーゆえに噂立っている悪評でアウト。ヨウにいたってはイケメンだからアウト。はいイケメンアウトー!(え、関係ない?)。
どんなに人ごみにまぎれようと、ヨウのキンパに赤メッシュ。ワタルさんのオレンジ長髪。シズの青空水色髪等など、我がチームメートは奇抜な髪の色が多すぎる。だったら此処はナチュラルブラックの髪を持つ俺やココロ、髪を染め直したキヨタが妥当なんだろうけど。弥生も茶髪だからギリセーフだと思うけど。
でもでも俺やキヨタはともかく、女子たちに尾行させるなんて俺には出来ない。女子たちがするくらいなら俺とキヨタで買って出るぞ!
が。
「無理は駄目だよ」俺の意見に弥生が首を横に振った。
全治二ヶ月半の怪我でしょ? と言われたら、確かにそうなんだけど、と返すことしかできず。
「しかも肋骨にヒビが入っていますよね?」なのに無理しようとしているなら怒りますよ、ココロにジトーッと睨まれてしまい、俺は言葉を詰まらすことしかできなかった。
そうです、田山は全治二ヵ月半の怪我なんです。一応普通に生活できるレベルまでは回復しているんだけど、完治までには至っていないんだ。そりゃあ二日間も始終ボカスカと殴られたり、リンチされたりしたら、俺の体だって悲鳴をあげらぁ! 骨だってヒビ入るっつーの! 俺は無敵じゃない、どっちかっていうと引きこもり体質になりがちなただの高校生なんでい!
だけど大袈裟なものでもないんだ、真面目な話。
レントゲンで見えるか見えないか、判断に難しいヒビ程度だったんだよ。医者からは大したことないって言われているし、俺自身も脇腹辺りの打撲に痛みを感じるだけで終わっている。だから全然動けないわけじゃない。チャリを漕ぐは可能なんだ。まあ、フルスピードで漕ぐのは無理だけどさ。医者からも激しい運動は控えるよう止められているし、無理をするつもりはないよ。無理をするつもりは。
でも女子が尾行をするってなると、いやいやいや、そこは野郎に任せんしゃいと言いたくなるんだって。分かる? この男心?!
……俺的に、もしも矢島を本当に尾行するつもりなら。
「キヨタを中心にさせたいところなんだけど。ヨウ。女子だけで尾行をさせるのは危険だし、矢島は剣道の級所持者だ。あいつはヨウの懐に易々入って拳を食らわした男だった。間合いも速かったし喧嘩も強い。いざって時一番に対抗できるのは、キヨタだと思う」
過去に一度だけ矢島とヨウはやりあっている。
あの時は成り行きで矢島が負けちまったけど、真剣にやりあったら一体どうなっていたことか。
苦戦していたヨウを思い出し、俺は声を窄める。ヨウが弱いってわけじゃない。だけどヨウ独自の喧嘩法と剣道の基礎を固めている矢島じゃ明確な差が出てくる。剣道をして一番ナニが高められるかって、俺的には洞察力だと思っている。
あいつは相手の動きを捉え、読むことが長けている。それはきっとヨウ以上。
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