01-18
「テメェ馬鹿だろ。やってねぇのに、なーんで自棄起こして俺が犯人です、なんざ言ったんだ? ……まあ、大方読めてるけどな。恐喝イコール、不良がすること。俺等の名前でも出たんだろ?」
う゛…、さすがはリーダー、鋭い。
「だって」ヨウ達カンケーないじゃん、これは俺の問題なのに。
弱々しく反論すると、「だから馬鹿だっつーんだ」巻き込めばいいだろうが、ヨウはぶっきら棒に言い放った。そんなこと言ったって、今度はヨウ達が疑い掛けられちまうじゃん。俺の名前が悪用された、そんだけのことでヨウ達を巻き込むのは申し訳ないっつーかさ。
俯き気味になる俺に、「テメェだって俺に巻き込まれてるだろ」と指摘。
「俺の名前、超有名だから随分とテメェを巻き込んだ記憶があンだけどな?」
「……、あ、そういえば」
ポンッと手を叩いて、俺は過去を振り返ってみる。
思い起こせば荒川の舎弟ってだけで、睨まれるわ、喧嘩を売られるわ、おっかけられるわ。日賀野って不良に出会っちまうしっ、フルボッコにも…っ、ああっ、思い出しただけでも身震い。怖い不良さん達に沢山追い駆けられたこと記憶にもまた身震い。
でもそれはそれだし、思い出したら気にしてはいるけど、普段はそんなに気にしてないし。うん、わりかし気にしてないかも、俺。
頬を掻いて率直に意見すると、「俺だって同じだ」巻き込まれてちょい気にはするけど、結局は些細な事なんざ気にしないんだとヨウは俺に視線を流してきた。
「いっちゃん気にするのは寧ろ、テメェが犯人扱いされてることだ。恐喝なんて行為、テメェみてぇなチキンができる筈ねぇだろ?」
「失礼な、常識人と言えよ」
「へいへーい。地味不良くんには恐喝なんてどえれぇことできる筈ねぇって訂正しておく」
シニカルに笑うイケメン不良は、「だろ?」と俺に同調を求めてくる。
確かにな、恐喝なんてどえれぇこと、俺には無理だよ。所詮は成り行きで地味不良に、舎弟になっちまったジミニャーノだもんな。……変な疑いが掛けられてもさ、俺には無理だって当たり前のように信じてくれる奴がいる。それで十分だ。
前橋は言った。
性格的に大人しいタイプのお前には、お前の合ってる環境に戻った方が自身のためだって。
俺は中途半端にジミニャーノして、中途半端に不良をしてる。
べつに意識はしてなかったけど、傍から見た俺は、各々の環境に迷いがあって不良にもなれず、単なるジミニャーノにも戻れず日々を過ごしているように見える。まさしく中途半端のナリをしている。
でもさ、ジミニャーノも俺なら、こうしてヨウと素行の悪いことをする不良な俺もまた、俺自身なんだよ。
結局はさ、どっちも切り離せないんだ。
「で? どうするんだよ。犯人捕まえないと、テメェ…悪い噂が立つぞ」
「ンー、今回は俺が犯人でいいや。被害者や担任は俺が犯人じゃないって知ってくれてるし。ゴタゴタしてきたら、犯人探してみようと思う。なーんかメンドクサイんだよな、犯人探し」
「それでいいのか?」「ん、いい」俺は頷いた。
どうせ悪い噂は前々から立ってるしな(どっかの族を相手にしただの、他校生徒をリンチにしただの、不良パシリくんだの、いろーんな噂が飛び交ってる)。一々相手にしてたらキリがない。
ヨウやワタルさんだって悪い噂を流されても、よく受け流してるじゃん。だから俺も受け流すことにするよ。
「舎弟が悪く言われたら、舎兄も悪く言われるだろうけど、そりゃ堪忍な」
「それこそ今更だ」
仕方が無さそうに笑うヨウに、俺も一笑した。
こうやって俺自身のことを知ってくれる奴が傍にいてくれる。それだけで今は十分なんだよ、ヨウ。
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