01-29 「…ってことは、その地味っこいパシがっ、…まさか舎弟? 荒川の」 「あー、さっきからそう言ってるんですけど。地元では一応舎弟で通ってます」 谷はまだ俺をガン見。 「こーんなに地味なのかよ…。嘘だろ」 「これいって特徴はないですが、真実です」 「想像以上の…ダサ男」 「それは失礼に値する発言だと思います! 身形? 身形を言ってるんですか?! 取り敢えず、平均並みの身形はしてますから俺!」 「というか、なんでそれを先に言わないんだよ! 騙したな!」 はぁああ?! なんで俺が怒られるんだよ! 世間様じゃ逆切れっつーんだぞそれ! 意味不明っ、てか、好き勝手してくれたのはあんた等だろーよ! 俺は寧ろキレる立場だぞおい! キィキィ地団太を踏んで憤りを見せる谷と、「ひっでぇ!」非難の声を上げる川瀬。ムッスリとしているのは矢島。 三者三様の態度を見せる中、ヨウは笑声を呑み込んでこれまた一変。ド不機嫌な顔を作って相手をギッと睨んだ。一々顔を見なくても分かる。ヨウは文字通り、憤っているんだ。 「笑い話は此処までにして、よくも俺の仲間の名前を騙ったな。ナニが目的だ。なんでケイの名前を使いやがった」 俺はな、どんな形であれ仲間に手を出されることが嫌いなんだ。 地を這うような唸り声を上げるヨウは、片指の関節をパキポキ鳴らして「あ゛ーん?」と威嚇。どうでもいいけどヨウ、母音に濁音は付けちゃなんないんだぜ? 日本語はそういう作りになってない筈だぞ。 的外れなことを思っていると、「ええいっ!」谷が煩い煩いうるさいと声音を張った。 「ちょーっち作戦が脱線したけど、結果はオーライだ! なにせこっちの目的はお前、荒川庸一なんだからな! あんちゃんの不倶戴天の敵め!」 「そうだ! こっちの目的は荒川庸一だ! アンちゃん、チャンスですよ!」 「目的は俺?」ヨウは眉根を寄せた。「そうなんだ」俺は自分の知っている情報を舎兄に提供。 俺をダシにして、ヨウを誘き出そうと目論見を立てていた。 なにやら私怨があるみたいだけど、ヨウに心当たりは…無さそうだ。しきりに首を傾げて、こんな奴等知らないぞと腕を組んでいる。まあ、しょっちゅう喧嘩を売られてる身分だから顔を覚えていないだけかもしれないけどさ。 ボス的存在の矢島はヨウの様子に、「腹立たしい」握り拳を作ってこめかみに青筋を立てた。 あ、やっぱりヨウ、なんかしちまったんだな。あの様子からすると、絶対になんかしてるだろ。うん、纏うオーラが訴えるもん。 「近くでっ、見れば見るほど…、フツーではないか。なんでこいつがイケメンと呼ばれているのか意味が分からん。目立っている意味も分からん。すべてに意味が分からん。っ、腹立たしい! やはり、あんの方が勝っていると思うのだが!」 ……は? 多分、俺とヨウは同じ表情をしているに違いない。 だって、え? なに、この人…、見当違いなことを言ってるんだ? 此処でイケメンという単語が出てくる意味が分からない。全然意味が分からない。アンタのお言葉を借りるなら、すべてに意味が分からん、なんだけど。 「ほんとだよね!」「もっと言っちゃって下さい!」谷と川瀬が同情アンド声援を送る中、矢島はヨウにガンを飛ばした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |