[携帯モード] [URL送信]
13-16


 
 コンビニ跡地付近から五分ほど歩いた俺達は、都市交沿いの貸倉庫に赴いていた。
 如何にもボロそうな貸倉庫は現在【テナント募集】らしい。表の看板に表記されている。都市交沿いにあるだけあって交通の便狙い、つまりビジネス向けの貸倉庫になっているようだけど皮肉なことに売れていないみたい。

 原因はきっと立地にあるんだろう。
 
 此処の貸倉庫は道路沿いにあるのはいいんだけど、車の出し入れがすこぶる出しにくい場所にあるんだ。駐車し難いっていうかなんというか。貸倉庫もトタン板が建物のボディを囲うように貼り付けられているから、見栄えも悪いし錆びているところも目立つ。とても古い貸倉庫のようだ。
 多分此処付近だとキヨタは自信なさ気に告げ、俺をチラ見。舎弟の頭に手を置いて、「お前の読みは的中していると思うよ」もう少し自信を持てと一笑する。

 ニッと満面の笑みを浮かべるキヨタを余所に、俺は周囲の景色を観察した。
 此処なら確かに都市交が見えるし、近くにアスファルトで作られた人工橋もある。この倉庫に監禁されていた可能性は大きい。だって此処なら俺がどんだけ大声を上げようと、声は車のエンジン音に掻き消され、周囲に届かないだろう。だからぁああああああれはあああぁあ!

 俺は大音声を上げた。
 
 どうしたと全員がこっちに視線を流してくるけど、俺は目を輝かせながら倉庫の奥地にBダッシュ。
 トタン壁に寄りかかっている放置自転車に歩み寄り、「こ。これは」見覚えのあるボディにハンドル、そして高校のステッカーが貼られたそれ。名前までしっかり表記されているその自転車を確認した俺は目を潤ませて、「会いたかったよぉおマイチャリ!」自転車に飛びついた。
 
「お前無事だったんだな! てっきりスクラップにされているかとっ…、タイヤはパンクしているけど疵は浅い。良かったぁああ! すぐ修理して乗ってやるからなっ!」

 本当に良かったっ、俺、ここ最近徒歩通で苦労していたんだよな。
 何よりも出費が少なくて済む。マジで良かった。アイラブチャリ! 田山はこれからもチャリを愛し続けるからなっ、それこそカーよりもチャリを愛してやる! 俺は地球を大切にする男。エコカーよりもエコチャリで環境に貢献するのであーる!

 「連れて帰ってやるからな」デレデレと頬を崩し、サドルを擦る俺に良かったなとヨウが声を掛けてくる。
 うんっと頷く俺は大事なチャリが無事で本当に良かったと答えた。チャリがないとしっくりこないんだよな。徒歩通の寂しさと言ったらっ、やっぱ俺にはチャリだよチャリ! タイヤはパンクしているけど、他は全然疵付いていないわけだし。

 でもあの時、俺が監禁される当日にチャリがパンクしなかったら俺は里見達に遭遇しなかったんだろうな。
 俺が寝坊したってことも原因の一つに挙げられるんだけど、チャリがパンクしたってのも里見達に出くわした原因の一つになっている。もしもチャリのタイヤがパンクしなかったらスイスイーッと登校できただろうに。
 
 苦笑いを零すと、「それ偶然ぽん?」ワタルさんが問い掛けてくる。

 偶然にしてはよく出来過ぎていると彼は意味深に意見し、片膝を折って俺のタイヤを調べ始めた。後ろのタイヤにあいた穴を見やり、もしかしたら故意的にあけられたのかもしれないと仮説を立てていく。
 ということはなんだ? 俺は最初から狙われていたってか? あの朝からもうシナリオは、いや、俺に送られてくる迷惑メールの数々からもうシナリオは出来上がっていたと? ……うっへーっ、恐ろしい!

「ケイ。アンタのチャリが此処にあったってことは、此処にいたってことになるよな?」
 
 モトの言葉に俺は多分と首肯する。
 何度も言うようだけど、俺は里見達と遭遇し失神させられた。気付けば見知らぬ倉庫の内部で、ワケの分からないまま暴行が始まったんだ。明確にこの倉庫だとは言えない。外側からはっきりと倉庫を見たわけじゃないからな。内部ならまだ薄っすらぼんやり憶えているけど。

 中に入ってみたら分かるかもしれない。

 結論に達した俺達は、貸倉庫に入ってみることにした。入れるかどうか不安だったけど、貸倉庫の出入り口はシャッター式で、そこは開きっぱなしだった。ずさんな管理体制だなぁ。やっぱ古いからか? 売れないのも無理はない。
 おずおずと足を踏み入れるとだだっ広い敷地が視界に飛び込んできた。流通関係の会社が此処にコンテナやダンボールなんかを積みそうな場所だ。
 「此処か?」遠慮がちに聞いてくるヨウに視線を流し、「いや違う」俺はもっと小さな部屋だったと教える。第一こんなところじゃ俺を手錠で繋ぐなんて不可能だ。俺が見ていた格子窓もないし。
 



[*前へ][次へ#]

16/39ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!