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13-15



 はぁあ、ヨウ達って学校の勉強はてんで駄目なこと、すっかり忘れていた。
 なんでこいつ等、受験をパスできたんだろう。不思議でならないや。一応俺の通っている高校は私立だけど、偏差値は55前後。まあまあな偏差値なのに、それをクリアーできたあいつ等って一体。不思議だ。七不思議だぜ、マジで。誰か俺の疑問を解消してくれる探偵はいないだろうか? 
 「先が思いやられる」俺はガックシと肩を落とした。勿論、英文にたむろ場やら倉庫の場所を指し示すヒントもクソもなかったのは言うまでもない。
 
 気を取り直し、俺は自分のいた倉庫の風景を思い出そうと試みる。

 幸いなことに勉強熱心のキヨタがいつも地図を持参しているから、記憶を照らし合わせることは可能だ。俺達は路地裏でジベタリングをして、開いている地図を眺める。キヨタの地図には沢山の印が書き込まれていた。
 これは俺を探す際、目印としてつけたもので、可能性がある場所は徹底的に丸印がついている。
 
 「ケイさんはコンビニ跡地付近にいましたっス」キヨタは丸印の一つを食指でさし、説明を始める。
 

「ワタルさんの仮説を元にすると、監禁されて倉庫って目と鼻の距離だと思いますッス。運んでいる最中に俺っち達と鉢合わせになったら洒落になりませんし。ケイさん、倉庫ってどんな感じでしたか? 駐車場は?」
 

 なにか特徴があれば些少のことでも教えて欲しいとキヨタ。
 移動範囲は限られているんだ。コンビニ跡地付近を中心に倉庫を探していけば、必ずそこに辿り着ける。

 結論を出す舎弟に俺は頭部を掻いて呻く。
 言いたいことは分かるんだけど、特徴って言ってもなぁ。俺が倉庫の外を眺めていた景色はまったく思い出せないし、外に放置プレイされていた時も時間は夜。周りは真っ暗だったし俺の意識も朦朧気味。なにより雨が降っていた。記憶はおぼろげだ。

「だったらシラミ潰しじゃね?」

 ヨウの手っ取り早い提案に、それしかないとワタルさんも同調する。
 だよなぁ、それしかないよな。申し訳ないけど、倉庫って点しかまったく憶えていないもん。


「なあケイ」


 と、モトが俺に声を掛けてきた。
 「何?」キンパ後輩に視線を流すと、「あんま思い出したくないだろうけど」なんであの時、オレ達にヒントをくれることができたんだ? モトが素朴な質問を飛ばしてきた。ヒントというと、ああ、あれか。俺の居場所を伝えるあの時の。

 確かヨウ達に伝えたのは都市交と橋だったな。
 何でも何も俺は俺で必死だったんだよ。里見の目論みは一週間俺を監禁して再起不能にしてしまうことだった。本当に再起不能にするまで、甚振ろうとしていたキャツ達だから俺もどうにか逃げ道を探そうと必死になって。

 「あ。そういや」格子窓から都市交を見たんだっけ、俺は首を捻る。景色は記憶にない、でも見たって記憶が薄っすらぼんやり蘇ってきた。
  
「ちなみに橋ってのは、俺を暴行していた不良達が会話しているのを聞いて伝えたんだ。あいつ等、バイクで橋を通って倉庫まで来たって言っていたから。近くに橋があるんだなぁって」

「ということは都市交が見えそうで、近くに橋がある場所を探せば一発じゃないぽん? しかもコンビニ跡地の近場といえば……、こっからは土地勘のある二人に任せるぽーん」
 
 ワタルさんの意見にキヨタが素早く携帯を取り出し、グーグルで地図を交互に検索する。
 自分の持っていた地図と見比べ、見比べ、みくらべ、「ケイさん」此処じゃないかとキヨタが俺に携帯を見せてくる。俺はディスプレイに映った地図を睨み、キヨタの地図帳と照らし合わせる。
 不意にリーダーに質問した。メールゲーム終了から俺が見つかるまでの時間を。

「ゲームのタイムリミットは六時。てめぇが見つかったのは、約二時間後ってところだ。つまり六時から八時の間に移動されたってことだな」

「それプラス、俺の暴行と自分達の逃げる時間を確保したってところか。里見達は決して表舞台に出ようとするような輩じゃない。あくまで裏方で手ぐすねを引く輩だから。ということは。キヨタ、航空写真は出せるか?」

「はいッス。ちょっち待って下さいね。……はい、これ」

 俺はキヨタの出した電子地図と紙切れの地図を見比べ、すーっと紙切れの方を食指でなぞり、そして腰を上げる。向かう先は。




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あきゅろす。
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