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13-10




「健太に聞いて路地裏に放置されたって知ったんだけどさ…、俺はてっきり自分が拘束されていた倉庫外に放置されていたと思ったんだ」


 だって初日の夜も外に放置されて野ざらしの刑を受けたわけだし。
 
 だからなんで俺は路地裏に放置されていたんだろうって思って。
 ひとりのニンゲンを運ぶって手間じゃん? 人目だってあるだろうし、自力でその場所に赴いた記憶もない。手間隙掛かるだろうに、どうしてわざわざ移動させたんだろうって不思議に思っていたんだ。
 もしかして倉庫に居させちゃ不味い理由でもあったのかもしれない。そう思うと、なーんか気になって。それに俺、なんか大事なことを皆に教えようと思っていたんだ。それが何だったのか、どうしても思い出せなくって。

「なんだったんだろう…、その、大切なこと。どうしても思い出せないや」

「ってことは、荒療治を図ってみるしかないってことだね? 僕は過去リンチもフルボッコもされた記憶があるから、ケイの気持ちは痛いほど分かるし、ケイ自身を優先したいけど。その話題を出すってことはケイ、それなりに覚悟を決めているってことでしょ?」
 
 ハジメの問い掛けに俺は肯定して、自分の監禁されていた倉庫を探したいのだと意見した。
 
 すると真っ向から反対してくる人物が出てきた。
 それは弥生…、じゃなく俺の舎兄。まさか兄貴から反対意見を頂戴するとは思わなかったために、俺は意表を突かれるしかない。「な。なんで」相手の心意を尋ねると、「なんでもだ」俺は許可しないとヨウは突っぱねてくる。

 えぇええ、で、で、でもさ。
 狼狽する俺は、どうしても思い出したいのだとヨウに直談判。
 絶対駄目だと物申すヨウは、まだ時期じゃないと俺の気持ちを優先する発言をしてきた。そ、そりゃあ思い出すのが怖いって気持ちはあるけど逃げていてもしょうがないじゃんかよ! 早く不良狩りやら里見達のことだって終わらせたいし! 終わらせないと平穏も何も畜生もないし!

「ヨウ。俺はべつにひとりで探そうとは思っちゃないって! なあなあ、リーダー!」

「テメェさ。自分のだいっじなチャリ、失くしてるだろうが。今、徒歩通だろ? チャリはねぇ。怪我はしている。しかも狙われた身の上ときた。少しは状況を見ろ。ついでに手前の体の具合も知っとけ」

 別に倉庫をすぐ探さなくたっていいだろ? 素っ気無いヨウの意見にぐうの音も出ない。
 そりゃ、そうだけどさ。そうなんだけどさ。そんな言い方ないじゃんかよー! 俺、超勇気を振り絞って話題を振ったのにぃいい! 田山は勇気を120パーセントにしてがむばったのにぃいい! ぶう垂れる俺に、この話は仕舞いだとヨウが打ち切ってしまう。

 ちぇーっ、なんだよヨウの奴。
 不機嫌になる俺に苦笑する弥生が、「ヨウの言うとおりにしようよ」まだ療養が必要だと宥めてくる。むくれ面の俺は始終へそを曲げるばかりだった。
 
 こうして途中から機嫌を損ねて昼休みを過ごす俺だったけど昼休み終了後、教室に戻る途中に立ち寄った男子便所でヨウから話を吹っかけられる。「今から抜けて探しに行こうぜ」と。
 「へ?」間の抜けた声を出す俺に、「あそこで行くつったら」全員行くと言い出しそうだったからな、ヨウは微苦笑を零す。
 

「なるべく動きは小さい方がいい。それに俺はテメェの舎兄だぞ。どういう気持ちで話題を振ってきたかくれぇ分かる。五時限目始まったら、早速行動開始だ」

「じゃ、じゃあ、あれはわざとだったんだな。ヨウ、お前、変に芝居なんて打つなよ。マジでへそ曲げちまったじゃないか! 俺超ダッセェ!」

「名演技だろ?」


 一笑するヨウに俺は苦笑いを返す。

 ほんっとお前って俺の気持ちを酌んでくれる相棒だよな。俺の気持ち、ちゃんと理解してくれているなんて…、嗚呼、一本取られた気分。
 不機嫌になった自分を恥らいつつも俺はヨウに礼を言った。こんなにも俺の気持ちを酌んでくれているんだ。ここは変にムキにならずお礼を言っておくのがいいと思う。それにカッコ悪いじゃないか。ムキになって機嫌を損ねるってのも。
 
 ニッと口角をつり上げるヨウはあんま無茶はしないように、と心配してきてくれた。
 大丈夫。もしおぇええグロッキーっす。もう無理っすって具合が悪くなったり、ぎゃあぁああもうヤダ思い出したくないウワァア! になったら、ヨウを頼るから。自分でもそうなりそうだって分かっているからな。自分の弱さに嫌悪はするけど、どうしょうもないからヨウに頼るさ。




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あきゅろす。
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