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01-28


 

「こ…これは…、じょ、条件反射…」

「っ、あっははははっ! じょ、条件反射で真面目にパシリっ。名の売れた荒川の舎弟さまがっ、普通にパシリしてるとかっ! サイッコーだぜ、テメェっ」
 
 
 もう駄目だ、俺はケイに殺される。笑い殺される。
 某イケメン不良は腹を抱えたまましゃがみ込んで膝小僧を何度も叩き、大爆笑、文字通り大爆笑をしてくれた。目尻に涙を溜めて、豪快に笑ってくれるもんだから俺はますます羞恥心を煽られる。
 
 だ、だって、状況を説明する間もなく友情ムードになってさぁ。お前が俺のこと心配してきてくれてさぁ。励ましてくれたじゃんかよー。
 素敵に無敵な友情ムードの前じゃ、ヤーんなことも、自分の置かれてる状況も、パッシーのことも忘れちまうだろ? なあ! …っ、だからそんなに笑うなって! 自分でもナニやってるんでっしゃろう? って今更ながら反省、いや猛省してるんだから!
 
 軽く頬を紅潮させる俺と、いつまでも笑ってくれるヨウ、んでもっていつまで経ってもパシに焦れたブルー不良二人組。

 「パシ!」早くしろとこっちに歩み寄って来る。
 谷と川瀬の姿を流し目にしたヨウは、また一つ吹き出し、キャツ等を指差して笑った。立ち止まった二人といえば、なんで此処に荒川が…って顔してるけど、ヨウはお構いナシに大爆笑。もはや笑い過ぎて喋ることも儘ならないらしい。
 

 うっわぁ、羨ましいな畜生、そんなにも笑ったらなぁ、福がたっくさん寄ってくるんだぞバカヤロウ! 幸せになっちまえ阿呆ー!
 

 ヒィヒィのゲッラゲラ笑っているヨウの声が、矢島の耳にも届いたのか、どどーんとででーんと谷と川瀬の間に登場。
 んでもってヨウの姿に眉根を寄せ、羞恥心を抱きながら佇んでいる俺に訝しげな眼を飛ばして、状況を把握しようと努めている。だけど、全然状況が呑み込めてないみたいだ。うん、そうだよな。ワッケ分からないよな。

 でもその反応は普通だから安心しろよ!
  
 「パシと荒川が何故一緒に?」矢島の疑問に、「なんでもクソもあるかよ!」ヨウはまた笑声を上げた。
 ダサい、どいつもこいつもダサ過ぎる。なんでそんなにも笑わせてくれるんだよ。腹が激痛い、なーんて声を上げて大爆笑。体を痙攣させているヨウじゃ相手にならないと思ったんだろう。矢島はギッと俺に視線を投げてきた。高圧的な視線に俺は千行の汗を流す。

 そ、そんな怖い顔で俺を見なくても……、ええい、仕方が無い。後は野となれ山となれ灰となれ。
 開き直った俺はサラッと片手で前髪を靡かせて笑顔を作る。


「そこの方、疑問にお答えしましょう。何故、俺のようなジミニャーノがイケメン不良と荒川一緒にいるのかを」
 

 たまたま荒川庸一と顔を合わせてお喋りしていた? オーイェーイ、違います。
 実は荒川庸一のパッシーだった? ノンノンノン、傍から見たらそう勘違いされてもおかしくないけれど、違います。
 俺と彼がクラスメイトだから話していた? イェース、確かにそれも一理ありますが……、それだけじゃアーリマセン。俺と彼はブラザーなのでーす。ふっ、ある時は普通日陰男子。ある時はジミニャーノ生徒。ある時は矢島さんのパシリ。

 かくしてその正体は?


「田山圭太にされそうになった“パシ”とは仮の姿。パシのこと俺こそ、田山圭太なのです! ちゃーんとお顔、覚えてから俺のお名前、騙ってくんなまし」


 うっふんとぶりっ子口調で、ノリよく俺は不良野郎三人にウィンク。
 
 どーだ、コノヤロウ! 噂どおりの地味くんだろ! 思った以上の地味くんだなって顔してるけど、まったくもってそのとおりだよバカヤロー! 内心で盛大に悪態をつきながら、俺は清々しく自己紹介をしてやった。うっわぁ、マジやってやったぜって気分。
 おれの自己紹介タイムを目の当たりにしたヨウは、一頻り声を出して大爆笑。んでもって、「酸欠になるっ」手の甲で涙を拭いながらどうにか体を起こすと、俺の肩に肘を置いた。まーだ笑ってやがる。いっつまで笑ってくれるんだい、俺の兄貴は。

 流し目で見ている俺を余所に、ヨウは爆笑から、したり顔に一変。
 俺を親指で差してにやりにやり。
 

「まさかケイを知らずにパシリにするなんてな。とんだマヌケだな、てめぇ等。俺の舎弟を利用したいなら、顔くらい知っとくんだな」


 まったくもってそのとおりだよ。ワルイコトして欲しくないけど、するなら顔くらい覚えとけって。
 向こうは目が点、次いで呆けた顔で谷が俺を指差す。 




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