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01-25


   

 ぐわぁああぁああ!


 この男っ、人が大人しくしていればっ…、喧嘩に縺れ込んだら俺が負けるのは分かってるけど、でもっ、ぶっ飛ばしてぇえええ! く、クソ…、お、落ち着け田山圭太。お前は平和主義のジミニャーノだぞ。喧嘩ノットスキーだぞ。誰もが羨む…か、どうか分からないけど、とにもかくにも地味くんだぞ。
 
 ヨウの思いつき発言に比べれば今の発言なんてっ、発言なんてっ、ミジンコだ〜〜〜ッ!
 だけどっ、腹が立つぅうううッ!
 
 第二の俺が地団太を踏んでいる中、表の俺は必死に愛想笑いを浮かべて矢島に話し掛ける。
 これも今後の俺のためだ。今は我慢してパシリくんになれ、俺。


「その…、なんで成り済ますのかなぁって…疑問を抱いて」

「んなの決まってるじゃん! あんちゃんにとって荒川庸一は不倶戴天の敵だからだ! あいつを誘き出すには舎弟が一番の餌になる!」


 不良のクセに、不倶戴天なんてよく知ってるな、谷。
 
 谷は鼻息を荒くして、「あの野郎めっ!」両手で拳を作った。
 思い出しただけでもムカつくっ、しきりに奥歯をギリリと噛み締めている。奥歯の表面が磨り減るんじゃないかってくらい歯軋りしてるけど…、んー、つまり俺の名前を悪用したのはヨウへの私怨ってことか?
 あいつを誘き出すために…、大方、ヨウの喧嘩好きが災いしての私怨だろうけど、なんにしても見過ごせないよな。俺の名前を使っているなら尚更だ。
 
 フーッと毛を逆立てている谷を宥めて、川瀬は「とにかくだ」俺を見据えてきた。
 

「パシは俺達の言うことに従っていればいいんだよ。今日の昼休み、適当に新入生をとっ捕まえて脅す。その間、俺等は田山圭太の下僕という設定で一緒に脅しに掛かる。いいな!」


 全然良くないに決まってるでしょーよ!
 どんだけ俺を悪役に仕立て上げたいんだっ…、俺は善良な市民の一端だぞ!
 
 ……まあ、あいつ等の目論見では俺の噂にヨウが食らいついて、あいつが犯人捜しに単独行動を起こしたところへ、どっかーんと奇襲を掛けるってカンジだろ。
 ヨウの仲間意識の高さは飛び抜けているからな。ヨウなら単独で犯人捜しをするって推測してたんだろう。確かに、あいつならやりかねない。あいつは本当に仲間を大切にする、我等がリーダーだしな。

 悶々と思考を回していると、「コーラ」矢島が命令口調で俺に言ってきた。
 コーラって単語だけ出されても…、あ゛、まさか。
 

「えーっと、もしかして買って来い…みたいな?」

「あ゛?」


「ですよね! 買って来ます! そちらの二人は? 同じものでいいんですかね!」


 ギッと矢島に睨まれ、俺はアタフタと立ち上がって谷と川瀬に質問。「馬鹿、サイダーに決まってるだろ!」阿呆じゃないかと鼻を鳴らす谷、「アクエリな」当然の如く自分の飲みたいものを言う川瀬。三人ともペットボトルご希望らしい。
 お前等の好みなんて知るか、クソッタレ! 心中で盛大に悪態をつきながら、俺は颯爽と自販機に向かった。
 


「ちぇ…、なんで俺が三人分の飲み物を買わないと…、しかも金くれそうにないから自費か? ジョーダン抜かせって」



 ブツクサ文句を唱えて、俺は札を入れた。
 
 あーっと…、まずは矢島のコーラを「あ、やっと見つけた!」ん? この声は。
 俺は首だけ捻って声の方角を見やる。そこには授業中にもかかわらず、俺の方に駆け寄って来る舎兄の姿。わぁお、ヨウ、こんなところで何してるんだよ。瞬きして相手を見つめる。
 

「心配してたんだぞ」


 なんでメール返さないんだよ、立ち止まるや否やヨウは息をつきながら、俺の両肩に手を置いた。




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