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11-20


  

 やはり此処は率先して自分が動くべきか。 

 だが自分だって最強ではない。キヨタに比べれば手腕も劣るだろう。どうする、どうすればいい。
 ダンマリになっていると、「何を躊躇してるッスか!」話し合いの横から割り込んでキヨタが自分を斬り込み隊として使えば良いじゃないかと意見してきた。このチームで一番手腕があるのは自分なのだ。だったらそれを利用しない手はない。
 
「どーせ自分が率先して動こうと思ってるんでしょ! そうは問屋が卸さないッス! ヨウさん、俺っちより弱いでしょ!」

 弱っ…、やや胸に突き刺さる言葉である。
 頬を引き攣らせるヨウだったが、気持ちを高揚させて自分を見上げてくるキヨタの心情を察し、「分かった」お前が先頭に立て、と命を下した。ただし無茶は厳禁だと付け加えて。舎兄を思うなら尚更、無茶だけはするな。しっかり釘を刺しておく。
 
「ヨウさんには言われたくないッスよ」

 ぶう垂れるキヨタがフンと鼻を鳴らして傍から離れて行った。
 親友から何生意気なことを言っているのだと叱られていたが、スルーしている様子。

「おーおーっ、なんでい。随分おめぇをライバル視しているな。あのチビ」

 浅倉が笑声を漏らす。
 「しかたねぇよ」あいつはケイの舎弟だからな、ヨウは苦笑を漏らした。舎兄を甚振られて怒り心頭しているのだろう。自分が怒りを感じているように。

「おめぇは大丈夫か? 荒川」

 話し合いを中断する、意味深な心配。

 かつて舎弟を失った相手に虚勢を張っても一緒だろう。
 「いつかのてめぇと同じだ」喪失感は拭えないと力なく笑う。ゆえに暴走することもありそうだ。いや、もうなっていると思う。いざ喧嘩になった時、果たして自分は暴走せずにいられるだろうか。自信はない。一点に集中すると周りが見えなくなる自覚はあるのだから。
 けれどそうなったら、誰かが止めてくれるだろう。モトが臆せず自分に意見したように。

「んと、阿呆みてぇに周りが見えなくなる。ケイはそんだけ」

 俺の中で存在がでかいんだ。
 苦言するヨウに、理解を示す浅倉は苦笑いで返す。舎兄弟を組むとそうなってしまうものだとウィンクした。

「な? 蓮」

「……、俺に振られると困るんですけど。和彦さん」

「おーっとおりゃあ桔平も忘れちゃねぇぞ。桔平も俺がやられたら暴走してくれるもんな? なー?」
 
 二代目舎弟の首に腕を絡め、浅倉が笑みを零す。
 苦しいと桔平が舎兄の腕を叩いた。「暴走しませんよ!」和彦さんと違って賢い冷静くんなんですから、と桔平は大主張。「てことは何か?」俺が馬鹿だって言いたいのか?! 浅倉が腕に力を込めると絞殺する気かと桔平が悲鳴をあげ、早々にギブアップを申し出た。
 ヨウはついつい表情を崩してしまう。こうして笑い話にしてくれる理解者がいてくれると有難いものだ。
  
 
 話は戻り、人数の補てんはどうしようもできないとヨウは判断する。

 ということはどうするべきか。簡単だ。手腕のあるものが率先して前に出る。それしか方法はない。ここで小洒落た『B.B.B』はなんとしても潰しておかなければ、追々厄介な存在になるだろう。またサトミカズサとマミヤについて、不良狩りについて、不可解な喧嘩について聞き出さなければ。
 そう、情報を得るためには勝利の二文字しかないのだ。これはチームの名と舎兄のプライドを懸けた喧嘩でもある。


 だから―…。
 
 



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あきゅろす。
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