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11-07


 
 
「田山の残したツウシンセイコウコウは、通信制高校を意味していると思います。なのでシラミ潰しに地元の通信制高校を洗ってみたいと思います」

「その、通信制高校ってのはなんだ? 普通の高校じゃねえのか?」


 素朴な疑問がヨウの口から零れる。それに答えたのはココロだ。

「一般的に私達が通う高校は全日制と言います。いわゆる朝学校に登校し、夕方まで授業を皆で一貫して受ける授業制度のことです」

 対して通信制高校は通信授業のことです。
 基本的に自主学習中心で、レポートと呼ばれる課題を出して学習を進めていきます。毎日学校に行かなくていいんです。決まった授業数を受け、課題を提出し、試験を受けて単位を取得していく。簡単に言えばこんな感じです。
 

 特殊といえば特殊な高校ですね。

 個々人で通う人の事情は違うと思いますが、例えばダンサーや板前さんなど日夜多くの時間を取られてしまうような夢を持つ人はこの制度を使います。手に職つけたい。でも高校は卒業しておかないと…、と思う方々は沢山いますしね。
 あとは金銭的家庭事情で全日制に入れない人。お金が高いですからね、全日制は。通う理由は様々だと思います。

 一貫していえることはなんらかの事情で全日制には通えず、でも高卒の資格が欲しい人達が集っていることです。

 あまり聞きなれないかもしれませんが、そういう高校もあるんです。

 
「と、こんな感じです。実は私、通信制高校に行こうかな? って思っていた時期があるので、ちょっとだけ詳しいんです。私が知る限り5、6校はあると思います」

「ココロ。その学校名、全部洗い出せるか? 五木やタコ沢、弥生に情報を提供して欲しい。名前が分かれば収集もスムーズになる」 

「それは可能ですが…、サトミカズサさんが何処に通っているか把握するのは難しいと思います。なにせ全日制高校は各々制服がありますが、通信制は私服通学です。パッと見じゃ何処の生徒か特徴がつかないんですよ。例えるなら私服で学校に通う大学生が、どの大学に通っているか調べるようなものです」


 名前と通信制高校だけで何処まで絞りだせるか、ココロは眉根を下げる。

 それでもやるしかないとヨウは言い切った。例え粒ほどの情報だろうと可能性がある限り、徹底的に調べ上げる必要性がある。困難なことかもしれないが此処は一つ、仲間達の腕を信じたい。
 リーダーの意見にココロは理解を示し、自分が知る限りの高校名を教えるために携帯を取り出した。高校の名前を打って一斉送信しようという魂胆だろう。


「あ。メアドはどうする? ヨウちゃーん」


 様子を見守っていたワタルが思い出したように視線を流し、率直に意見する。
 ケイの携帯を通じて自分達の連絡先が向こうに知れてしまっている。番号対策は追々考えるとして、メアドは変更するべきなのではないだろうか。また悪用される可能性がある。向こうは陰湿な策士だ。早め早めの対策を求められるだろう。

「テメェ等。全員携帯出せ」

 今すぐメアドを変更すっぞ、ヨウは断を下した。また迷惑メールが送られてくる可能性がある。そうなれば此方が混乱させられるだけだろう。災いの芽は早い内に摘んでおきたい。
 
「それはいいけど…、皆に連絡するのが不便になるよね。メアド変更しても、電話番号でメール送れちゃうし」

 弥生が肩を落とした。
 これから暫くはメールに疑心暗鬼しそうだ。ケイの一件でメールが怖くなってしまった。とても不便になると彼女は唇を尖らせ、頬を掻く。ご尤もな意見にヨウは何か策はないかと、インテリ不良に視線を流す。一思案するハジメは「向こうは携帯を使いこなしているしね」と小さく吐息。

 『Bcc』機能を使った輩なのだ。
 随分携帯には詳しそうである。かといって一々電話で連絡するのも不便だ。

 そうだ、ハジメは閃いたと頭上に豆電球を点した。




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あきゅろす。
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