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11-02


 

(だから動くなってっ、ケイ! ベッドに戻れよ! っ、キヨタ、ごめん手伝ってくれ!)

(ケイさんっ、失礼しますっス。ベッドに戻りましょう? ね?)


 引き戻される感覚がした。嫌だ、俺は帰るんだ。帰らないといけないんだ。
 冷たいコンクリートの床に這い蹲っている俺はさぞ息絶えそうな芋虫だろうけど、傍から惨めだろうけれど、それでもいい。帰らないと。今がチャンスなんだ、帰らなきゃ。また始まる、屈辱の時間が。リンチは怖い。痛みも怖い。何より心を壊されそうで怖い。俺は壊されるわけにはいかないんだよ。あいつ等の思惑通りになるなんて真っ平ごめんだ。
 
 利用されるくらいなら、どんな虚勢を張っても自我を保ち続ける。
 簡単に人間は壊れないんだよ。トラウマを植えつけようとしても、痛みを与えようとしても、何をしようとしても。それが俺のできる精一杯だから、手遅れにだけはさせない。仲間が傷付いたら誰よりもヨウが傷付く。それを知っているから、俺は帰らないと。

(っ、どっからこんな力が出るんだよ。ケイ! 暴れるなって!)

(ほんっとお願いっスから! そんな体で暴れたら悪化しますっス!)


 帰りたい、仲間の下に。


(ケイさんがっ…、もしかして帰ろうとしているところって。私達の…ところ?)


 帰りたい、仲間の下に。


(ッ…、ケイ! アンタは帰って来たんだぞ! もう、もう大丈夫だから!)

(何も心配いらないっスよ! 貴方は今、チームにいます! …あ、ヨウさん)


 かえりたい、なかまのもとに。
 いまがチャンスなんだ。みんなのもとにかえれる、チャンス。


(ケイ、大丈夫だ。必ず俺達が迎えに行くから、少し休め)


 ―――…迎えに、ああそうか、ヨウ達は気付いてくれたんだ。俺が利用されていることに。
 
 そうか、気付いてくれたんだ。
 じゃあ俺は時期に帰れるんだな。迎えが来る…、ほんっとあいつ等には手を焼かせてしまって申し訳ないけど、もう安心だ。会える、皆にまた会える。舎兄に、舎弟に、彼女に、仲間に。皆に会ったら最初に言わないと。ごめんとありがとうを。

 そして不良狩りに気を付けてくれ、と。


 なんか安心したら超絶にねむくなった―――…。





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