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01-20




 ははっ、まったく、俺、アンチファンに愛され過ぎだろ?


 どっこのどなた様に名前を悪用されているのか存じ上げませんが? 俺や被害者、間接的にヨウ達に迷惑を掛けたそのツケは払ってもらわないとならんでしょーよ。

 
 俺は一息つくとビリバリバリ―、おもむろに手に持っていた反省文を半分に裂いた。
 さよなら、俺の一時間費やした反省文。マジで時間の無駄だったよ。嗚呼無常。近所にいた教師や生徒の眼が突き刺さってくるけど、俺は気にせずグシャグシャに紙切れと化した反省文を丸め込んで近くの屑篭に放り込んだ。

 んで、俺は前橋に言うんだ。

 
「前橋先生。やっぱり前言撤回します。謝罪も撤回します。俺、やってません。勿論ヨウ達もやってませんので。それでは、失礼します」
 

 軽く頭を下げて、俺はさっさと職員室を退散。
 
 「あ、こら田山!」まだ俺は何も言ってないだろうが、前橋の声を総無視して職員室を出た俺は人気の無い廊下まで歩いた。
 「ふーっ」大きく息を吐いた後、十二分に人気が無いことを確認すると、俺は廊下の壁際に寄り掛かって「ありえねぇ!」ついつい頭を抱えてしゃがみ込む。
 
 ナニ、カッコつけて前橋に喧嘩売るような言動をっ…、昨日から前橋に喧嘩売りっぱなしだぞ、俺。
 
 センセイに喧嘩を売りつけたらクソメンドクサイことになるから、表向き良い子ちゃんぶるってのがジミニャーノのお決まりじゃないか!
 嗚呼、表向きYesの良い子ちゃんを貫き通して早16年、あ、もうすぐ17年。次いで、不良達とつるみ始めて1年。たった1年というカタチで、表向きYesの良い子ちゃん法則が崩れちまうなんて。自制が利かなかったとはいえ、自分から面倒事を増やしてどーするんだろ、俺。自己嫌悪だ。

 やっぱ俺、不良に感化されてるのかなぁ。
 

 んでもって、アリエネェっ、俺の名前を悪用する奴等っ…、なんで…、なんで、よりにもよって俺の名前を悪用する!


 他の奴等を巻き込むつもりは無いけどっ、でもでも、名前を悪用してメリットがあるといえばヨウの名前とか、ワタルさんの名前とか、シズの名前とか。地元で有名な不良の名前を使うもんだろフツー! そりゃ確かに俺はヨウの舎弟だから、悪用する価値はあるだろうけど、俺じゃなくたっていいじゃないかー! 地味だからか? 俺が地味で喧嘩できないから悪用するのか!

 重々しく溜息をついて、俺は頭部を掻いて腰を上げた。


 取り敢えず、これからどうしようかゆっくりと考え「ケイさぁああん!」ドン、ガン、ゴンッ―!
 
 
 突如、あまり見慣れぬ廊下の天井が目の前にっ、あっれーナニが起きた? てか、頭と背中が痛いのは何故でしょう? 痛みで目から星が出たんだけど。
 「アイデデっ」こめかみを擦りながら上体を起こせば、ニーッと満面の笑顔がドアップで飛び込んできた。あんまりにもドアップでアングルが合わない。けど、俺にタックルをかましてきた奴はアングルが合わなくても分かる。
 
 子犬のように尾を振って、いっつまでもキラキラと俺を見上げてくる後輩に俺は空笑い。
 ポンッと頭に手を置いて、「よっ」と挨拶。
 

「はよっス! ケイさん!」


 朝から会えてチョー嬉しいっス! ニッコニコと笑顔を振り撒く後輩であり弟分のキヨタの制服は、俺と同じ制服。緋色のブレザーに、カッターシャツ、ネクタイ…、中坊の風格はまるでない。ピッカピカの一年生オーラを振り撒いた新入生だ。
 んー、俺的にはまだ中坊のキヨタが頭にあるから、違和感があるんだけどな。
 
 満遍なくキヨタを見て、思わず一笑。
 早速制服を着崩してるな、こいつ。髪の色だけは俺とオソロにするために黒を貫き通してるけど、耳にはボールピアスが素敵にバッチシ決められちゃって。最初っからそんなことしてると教師に目をつけられるってのに。
 
 パッと見は地味、目を凝らして見ると不良くん、まさしく地味不良くんだよな、キヨタは。
 ブンブンブンブン見えない尾を振ってくるキヨタの構ってモードにやや押されつつ、「なんでこんなところに?」今日もオリエンテーションなんだろ? と質問。移動教室だろうに、こんなところでのんびりしてても良いのか?

 そしたらキヨタ、むーっと脹れ面を作った。
 

「俺っち、職員室に呼び出されたんっスよ。服装のことで……、何処にいっても先公は煩いっスね。服装を正せだの、ピアスは外せだの。お小言に煩いなーって思ってたら、ケイさん見つけて、なんか超カッケーことしてるの見たから追い駆けて来たんっス! 先公の前でプリントっぽいの破ってたケイさんカッケかったス! 担任ぽかったスけど、喧嘩でもしてたんっスか?」


「あー…喧嘩っつーか、うん、まあ、喧嘩を売ったに近いかも。はぁ…参ったな」
 
 
 溜息混じりにポリポリと頭部を掻いた俺だったけど、ふと煩い子犬その1がいないことに気付く。
 大抵キヨタが現れたら、ヨウ信者改めモトがギャンギャンワンワン吠えながら俺に悪態をついてくるんだけど…、いないみたいだな。なんか変な感じ、静か過ぎて君が悪い。「モトは?」一緒じゃないのか? 俺の問い掛けに、「あり?」言ってませんでしたっけ? モトは首を傾げて答を返した。



 

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