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10-19


 

「ただの迷惑メールですもの。返信したら、きっと有害サイトに飛ばされてしまうに違いないでしょうし。気にしないことにします」

「そうそう。あんま酷かったらメアドを拒絶しちまえばいいよ」


「それは、してるんですけど…、別のメアドで来るんです。パソコンからなんでしょうね」


 パソコンなら複数のメールアドレスが持てますし、ココロは迷惑そうに鼻を鳴らした。

 それよりも彼氏の具合をメールで聞いてみよう。なんてノロケを頂いたため、さっさとヨウは退散する。当てられるのはごめんである。
 また暫く仲間と駄弁っているとモトがスーパーに行こうかな、と立ち上がった。単純に飲み物を買いに行きたいらしいのだが、ヨウはそれについて行くと申し出る。暇だったというのも勿論あるが、真杉の一件が綺麗に解決していないため、何かと憂慮を抱いてしまうのだ。
 
 それに気付いていないモトは、じゃあ一緒に行きましょうと破顔。「おいキヨタ」お前も来いよ、モトは親友に声を掛ける。熱心に地図を眺めていたモトは顔を上げ、行くと元気よく答えて駆け寄って来た。
 
 こうして傘を差してスーパーに赴く。
 飲料売り場でペットボトルを眺めていたヨウは濡れた制服に不快を抱き、雨は嫌いだと心中で愚痴を零してしまう。
 雨は自分から何かを奪ってしまうような気がするから。ハジメの一件がそうだった。ハジメを一時的に失った日も雨で…、嗚呼、思い出したくもない。嫌なことを思い出してしまったとヨウはかぶりを振る。
 もうあんな思いは二度とごめんである。だからもっと自分がしっかりしないと。リーダーなのだ。もっと率先して仲間を守らなければ。
 

「ヨウさん? どうしたんです?」


 炭酸を選んでいたモトに声を掛けられ、ヨウは曖昧に笑みを返した。
 「あ。俺っち、ケイさんにサイダー買ってってあげようかな」見舞い品としてサイダーをプレゼントしたら元気が出るかも、キヨタはそれを手に取って二人に提案した。今から舎兄のところに行かないか? と。

「でもよ、キヨタ。ケイの奴、結構具合悪いんだろ? お前が言っていたじゃないか」

「んー、メールしたらそう言われたんだけど。玄関まで持って行くくらいならいいかなー? って。もしかしたらケイさんが出てくれるかもしれないし!」

 パァッとオーラに花を散らすキヨタに、モトとヨウは「……」である。それは彼女の立ち位置にいるココロの役目ではないだろうか。
 しかし二人のツッコミは聞こえていないらしい。そうと決まれば、早速何本見舞い品として持って行こうか…、うーんっと唸るキヨタは真剣に悩み始める。
 
「ビタミンが足りていないからレモンの炭酸にするべきか。いや、此処は王道にサイダーで貫くか。コーラは胃に負担が掛かりそう、色的に。野菜ジュースもいいけど、ケイさん嫌いだもんなぁ」

「………」

「……、まだか? キヨタ」

「モト! 俺っちは真剣なんだぞ! 選ぶ時間は重要だ!」
 
 もはや何を言っても聞かないだろう。
 だったらせめて彼女は連れてってやれよ、と後で声を掛けておこう。




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あきゅろす。
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